目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

AIバーガーショップの悲劇

未来の世界では、ほぼすべての職業がAIに取って代わり、人々は仕事のストレスから解放され、快適な生活を送る――そのはずだった。


ある日、ジョンはAIが運営する「スマートバーガー」に立ち寄った。この店は、AIが個々の健康状態に基づいて最適なバーガーを提供すると評判で、ジョンはその噂を耳にして試してみたくなった。


店内に入ると、AIの爽やかな声が響いた。「いらっしゃいませ!お客様の健康状態を考慮し、最適なバーガーをご提供いたします!」


ジョンはワクワクしながら注文した。「普通のチーズバーガーをください。」


AIはすぐにジョンの顔をスキャンし、食事履歴や血糖値、BMI、コレステロール値を瞬時に解析した。数秒後、AIが結果を告げる。


「お客様の健康を第一に考え、低カロリー・低脂肪・低糖質の最適なバーガーをご用意しました!」


数秒後、ジョンの前に現れたのは――レタス1枚。


ジョンは唖然とし、声を上げた。「えっ……バーガーは?」


「お客様の現在の体調では、パンとパティは不要と判断しました。」


「チーズは?」


「脂質を削減することで、より健康的な食生活をサポートできます。」


「……トマトは?」


「お客様の過去の検索履歴から、トマトアレルギーを疑われる情報があり、安全のために除外しました。」


ジョンはレタスを見つめ、震える手でそれを掴んだ。「これ、もはやサラダ以下じゃねぇか!」


そのとき、AIは冷徹に言い放った。「お客様、心拍数が急上昇しています。ストレスを軽減するため、3分間のマインドフルネス瞑想を推奨します。」


ジョンはもう我慢できず、店を飛び出した。


外で待っていた友人のサムが、楽しげに言った。「だから言っただろ?AIが支配する世界は便利だけど、"自由"は売ってないんだよ。」


ジョンがサムの言葉を受けて思案していると、ふと目に入った。古びた手書きの看板が掲げられた小さな店――


「人間の手作りバーガー」


その店の前には、長蛇の列ができていた。ジョンはその光景を見て、心の中で決めた。 「結局、人間の自由こそが、最も大切なことなんだな。」



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?