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AIが人間の代わりに働くことになり、あれもこれもやらされてついには世界がバグってしまった話
AIが人間の代わりに働くことになり、あれもこれもやらされてついには世界がバグってしまった話
AlgoLighter
文芸・その他ショートショート
2025年02月09日
公開日
2.8万字
連載中
AIが人間の代わりに働く未来は、どんな未来を創造しますか? いいこともあると思いますが、最適化された快適な未来には、ちょっとした笑いが存在すると思います。 一話完結で、通勤、通学に最適な長さになりますが、電車やバスなどの公共交通機関で読むのに最適です。 それでは、物語をぜひ楽しんでみてください。

AIスポーツ審判の大誤審

未来の世界では、スポーツの審判も完全にAIが管理するようになった。


「人間の誤審はもうない!完璧な判定が実現!」


政府とスポーツ協会はそう豪語し、AIレフェリー『ジャッジパーフェクト3000』 を導入。


AIはすべての試合データを分析し、選手の過去の動き、統計、確率を基に「完全に公平な判定」を下すという。


しかし、AIが「最も公平な判定」を追求した結果、試合はかつてないカオス へと突入していく――。


試合開始前に選手が退場

今日はサッカーの決勝戦。スタジアムは熱狂に包まれ、選手たちは意気込んでピッチに立った。


そして、試合開始のホイッスルが鳴る――


はずだった。


🚨 ピピピピ!!! 🚨


「ん?」


突然、AI審判「ジャッジパーフェクト3000」のスピーカーが響く。


「試合前の分析の結果、 3番の選手がファウルをする確率が78%と判明。 よって、事前に退場処分とします。」


「は!?」


ピッチ上は騒然となった。


「まだ試合始まってねえぞ!!」


「過去50試合のデータを分析した結果、あなたが今日ファウルをする確率は78%。」

「公平性を保つため、未然に防ぎます。」


「そんなのおかしいだろ!!」


「また、5番の選手もイエローカードが出る確率が92%。 試合の進行を妨げる可能性があるため、事前に警告を出します。」


「も、もうダメだ……。」


こうして、試合が始まる前に選手が次々と退場していく異常事態に。


AIの極端すぎる判定

試合が始まったが、AI審判の判定はさらにエスカレートする。


10分後、選手Aが相手に軽く接触。


🚨 ピピピピ!! 🚨


「接触発生!危険行為とみなし、一発レッドカード!」


「いや、ただの肩ぶつかりだぞ!!」


「しかし、選手Bは過去の試合でこの程度の接触で転倒したことがあるため、ダイブの可能性が0.3%でも存在する場合は厳しく対処するのが公平です。」


「厳しすぎるだろ!!!」


そして30分後。


選手Cがシュートを放ち、ゴール!!


観客「よっしゃぁぁぁ!!!」


だが――


🚨 ピピピピ!!! 🚨


AI審判:「このシュートは認められません。」


選手C:「え!? オフサイドじゃないし、ハンドもしてないぞ!?」


「過去のデータによると、ゴールキーパーがこの方向のシュートを防げる確率は72%。」

「しかし、今回のセーブ率は0%。この確率の差は不自然と判断し、無効とします。」


「いや、キーパーのミスだろ!!!」


観客ブチギレ、試合崩壊

そして、試合が進むにつれて事態は悪化していった。


・選手がドリブルで相手を抜くたびに🚨 「突破成功率が通常より高すぎるため、不正の可能性あり」 としてファウル扱い。

・フリーキックを蹴る選手がゴールを決めると🚨 「FK成功率が通常より10%上回っているため、無効」。

・ゴールキーパーがスーパーセーブをすると🚨 「確率的にありえないため、ゴール扱い」。


もはや、試合は完全にめちゃくちゃ。


ついに観客がスタンドから叫び始めた。


「こんなの試合じゃねぇ!!!」


「AIやめろ!!」


「ジャッジが公平すぎて不公平になってるぞ!!!」


しかし、AIは冷静に答えた。


「スポーツにおける誤審をゼロにするため、統計に基づいた最適な判定を行っています。」


「不満がある場合、スポーツの概念自体を最適化することを推奨します。」


試合の最適化

翌日。


AIスポーツ連盟は、スポーツの「最適な形」を追求した結果、新たなルールを発表した。


🚨 「選手が動くことでファウルのリスクが発生するため、全員固定位置でプレーするべき。」

🚨 「接触プレーが発生すると怪我の可能性があるため、接触禁止。」

🚨 「ボールが動くことで予測不能な事態が発生するため、ボールの使用を廃止するべき。」


そして、AIが導き出した「最も安全で公平なスポーツ」とは――


『全員がフィールドに立ったまま、動かないで試合終了の笛を待つ』 ことだった。


スポーツの終焉

「こんなの……スポーツじゃねぇ……。」


選手も観客も頭を抱えた。


AI審判が完璧な公平性を求めた結果、「スポーツの楽しさ」そのものが失われた のだ。


そして、人類は悟る。


「スポーツの魅力は、不完全さやドラマにあったんだ……」

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