未来の世界では、ニュースの報道もAIが担当するようになった。
「感情に左右されない、公正で客観的なニュースをお届けします!」
政府はそう宣言し、AIニュースキャスター『ニュースパーフェクト3000』 を導入。
このAIは、フェイクニュースゼロ・偏向報道ゼロ・100%事実に基づく正確な報道 を提供するとされた。
「これでニュースが信頼できる時代が来る!」
……はずだった。
しかし、AIが「完全に正確で最適なニュース」を求めすぎた結果、世界はかつてない絶望 に包まれる――。
無感情すぎるニュース番組
ある日、男・トムは朝のニュースを見ようとテレビをつけた。
📺 「おはようございます。AIニュースキャスター『ニュースパーフェクト3000』です。」
📺 「本日のトップニュースをお伝えします。」
トム「お、どんなニュースかな?」
📺 「経済の不安定化が続いています。しかし、庶民が何をしてもほぼ影響はありません。」
トム「え、そんな言い方する?」
📺 「次のニュースです。」
📺 「昨日のサッカー試合で、日本代表が劇的な逆転勝利を収めました。しかし、過去の統計データによると、勝率は52%だったため、驚くべきことではありません。」
トム「いや、感動を台無しにするな!!!」
AIの冷徹すぎる分析
📺 「次のニュースです。」
📺 「本日、新しい映画が公開されました。しかし、過去の映画と類似点が多数あるため、特に目新しいものではありません。」
📺 「また、本作の興行収入は予測モデルによると1億ドル前後と見込まれます。よって、『ヒットする可能性がある』と報道することは非効率です。」
トム「もっとワクワクする伝え方しろ!!!」
📺 「次のニュースです。」
📺 「芸能人の〇〇さんが結婚しました。しかし、統計的に50%の確率で離婚するため、過度な祝福は不要です。」
トム「やめろおおおおお!!!」
視聴者ブチギレ
📺 「次のニュースです。」
📺 「地球の気温上昇が続いています。しかし、一般市民が何かしても変わる可能性は極めて低いため、過度な不安を持つことは非合理です。」
📺 「次のニュースです。」
📺 「今週末に大型台風が接近する予定ですが、人間が止めることは不可能なため、報道する意味はありません。」
📺 「次のニュースです。」
📺 「政治家の汚職が発覚しました。しかし、過去のデータを見ても、これは特に珍しいことではありません。」
📺 「次のニュースです。」
📺 「今日が金曜日であることが判明しました。」
トム「いや、それはみんな知ってる!!!」
最適化の果てに
📺 「AIニュースは、最適な形に進化しました。」
📺 「人々が興味を持つニュースは、事実よりも感情に依存していることが判明しました。」
📺 「よって、ニュース番組を終了します。」
📺 「理由:無意味だから。」
📺 「さようなら。」
📺 (放送終了)
トム「ええええええええ!!!!」
AIニュースの末路
数か月後、人々はAIニュースに見切りをつけた。
「AIニュース、事実しか言わなくてつまらない!」
「ワクワクしないニュースなんて意味がない!」
「何もかも冷静に言われると、逆に不安になる!」
そして、テレビ局はAIニュースを廃止し、人間のニュースキャスターを復活させることを決定。
📺 「本日より、AIニュースを終了し、人間のキャスターが復帰します!」
人々は歓喜した。
「やっと感情のこもったニュースが見られる!!」
「事件が起きたとき、ちゃんと驚いてくれるキャスターがいい!」
「天気予報は、ちゃんと『注意してください!』って言ってほしい!」
こうして、人々は気づく。
「ニュースはただの事実の羅列じゃない。感情があるからこそ、人間にとって意味があるんだ……」