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第24話


「え? 何を、言ってるん」


 ですか、とようやく回復してきたミキさんが言う前に、ドスっと鈍い音が聞こえた。地面に棒が突き立っている。随分と荒々しい棒だ。見慣れた弓矢とは天と地の差があるほどの雑な作り。

 けれど、どう言う理屈なのか数十メートル離れた場所から放っても地面に突き刺さる程度には殺傷能力がある。


 いや、本当にどうなってんだろう。


 基礎体力が一般の人間とは違うとはいえ、こんな装備でよくもまぁ狙い通りに射ることができるもんだ。何度見ても生物ってのは不思議なもんだと感心するしかなかった。


「え、え、え、え、ええ…?」


「伏せてっ!」


 判断が早い。

 さすがアオイさんである。突然の悪意にも瞬時に反応し、指示を出した。荷物の入った鞄兼リュック(通学にも使える特別性)を頭に被ったまま地面に突っ伏している。

 物陰に隠れなかったことは評価したい。周囲の木々に飛び込んでしまえばそれこそやつらに狩られるだけだ。

 突然のことに硬直していたシズクさんとミキさんはそのまま地面に伏せた。アオイさんと同じように頭部を守っている。

 うん、判断の結果も行動の速さを悪いくない。


 ただ最善ではないのは明らかだ。


「ちょっと、何してんの!」


 怒号はおれに対して。

 アオイさんは必死の表情で伏せるように警告してきた。けれど、興味深いのは訴え続けながら視線を周囲に巡らせてどこから矢が飛んでくるかを警戒していたる。

 その挙動で察した。

 多分、彼女は矢がどこから飛んできているか必死に探っているのだ。やっぱりセンスがいい。


「アオイちゃん、判断が早いところは素晴らしいと思う。地面に伏せたのも飛んできた矢が刺ささる方向から射手の位置を探ってるのも闘争心がある」


「はぁっ? 今、そんな話してる場合じゃないでしょっ!」


「ただ、一つ。君とはじめて会った時のことを思い出さなきゃいけない」



使



 かきん、と金属音。

 まるで小石が当たった衝撃だけ感じた。

 地面には折れた矢が落ちている。


「…え?」


 一部始終を見ていたアオイさんは呆然としている。

 何が起きたのかは単純な話。


 


「まぁ、DTUVEだとこれくらいじゃ防げないヤバい攻撃をしてくるモンスターが相手だからね。あんまりわからないかもしれないけど、これが出来ないと探索者としては生き残ることもできないからしっかり覚えよう。これが、今日超えるべき挑戦ってやつさ」



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