大きなスーパーマーケットの中を、一組の親子が歩いていた。
その親子は父親と小さな娘で、父親はカートに娘を乗せながら歩いている。
この年頃の子どもはよく動く。
目を離すと、あっという間にどこかへ行ってしまう。
とはいっても、この娘は分かりやすい子で、父親から離れても行く先はお菓子売り場しかない。
だから、父親、マイケルは気を抜いていた。
レジに並びながら、財布を出すために娘のジェシカから目を離してしまったのだ。
財布を取り出してカートに乗せたジェシカの方を見ると、そこにいたハズのジェシカは忽然と姿を消していた。
「ジェシカ?」
マイケルはジェシカがカートから飛び降りたのかと思い、周囲を見回し、カートを押しながらお菓子売り場へと向かう。
大袋のチップスが並ぶ売り場を歩き、ジェシカを探したが、どこにもジェシカはいなかった。
(もしかして、車に戻ったのか?)
そう思ったマイケルは、商品の入ったカートを店員に預け、駐車場へと駆け出す。
自分の車へと向かったが、そこにもジェシカはいなかった。
体温が下がっていくような、血の気が引く感覚を抱いたマイケルは、必死にジェシカの名を叫ぶ。
「ジェシカー! ジェシカァ!」
周囲の人々の視線を集めながら、駐車場の真ん中でマイケルは叫んだ。
「ジェシカァァァァ!!」
しかし、ジェシカが姿を現すことは無かった。