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第28話 VS士官大 第二ラウンド 高田馬場決戦 その7

士官連合の準リーダーである士官大2年・高瀬將道とチョーコー3年・キムブントクによる、お互いの意地をかけた殴り合いは熾烈を極めた。

お互い至近距離のノーガードで殴り合りあった結果、お互いの顔面は腫れあがり、高瀬は眼窩底骨折、キムは左肋骨を骨折していた。


数分間の殴り合いでこの状況である。

お互いの打撃の威力の高さが分かるだろう。

そして、お互い骨折しているにもかかわらずそこまで息を乱していなかった。

日ごろ、お互いの勢力とバチバチやっている中で、攻撃力防御力と共に体力も都内もとい関東の不良たちを遥かに凌駕する戦闘力をチョーコ生と士官大生は身につけていた。


この戦いも前日同様長期戦に突入するかと思われた・・・・・・。

が、日本警察は前日の新宿駅でのチョーコーと士官の乱闘に完全に激怒。

警視庁は、双方の勢力に対しての「一斉警戒」を発令。

チョーコーと士官の動きに警戒を強めた。

そして、本日高田馬場駅で前日の様な衝突が起こる可能性を事前に察知した警視庁は、高田馬場駅周辺に機動隊数百人を配置。

乱闘が起こり次第突入の命令を発していた。


「突入ー!」


甲高い声がホームの階段付近から、チョーコーと士官、両方の陣営の不良たちの耳に届いた。


「「「うおおおおおお!」」」


それと同時に、ホームへ警棒と盾を装備した大量の機動隊が突入。


「機動隊だ!逃げろ!」


それを見た士官坊たちは、電車から降り、蜘蛛の子を散らす様に逃げ始める。

だが、圧倒的数の機動隊員に士官連合たちは次々と捕まっていった。



「今日はここまでだな」


床に落ちていた割れたメガネを拾いながら高瀬が言った。


「逃げる気か?こっちは、完全燃焼できてねぇ。次はタイマンで決着だ」


キムブントクも、制服についた埃をはらいながら言った。


「誰が逃げるか!タイマン上等。代々木公園で首あらってまっとけ」


高瀬がそう応じた時。機動隊員の1人・首木がにらみ合っている二人を発見。


「お前ら、そこで何やってるかー!?」


背後から高瀬につかみかかった。


「ちっ!今日は警察の動きが早くて助かったなキムブントク!」


機動隊員・首木と他数名に組み伏せられうつ伏せになりながらキムブントクを挑発する高瀬。


「ぬかせ」


キムブントクは、唇の血を拭きながら応じた。




(まだそんな時間たってねーのに・・・・・・サツが来るの早すぎだろ!?)


ホーム上で逃走しようとして機動隊に捕まり組み伏せられた佐藤は、ぼやく。

士官たちは気づいていなかった。

前日の大暴れで一般人から被害者が出た所の騒ぎではなかったため、警視庁が国士館に対して本気になったという事を。


一方、チョーコー生たちは・・・・・・。


「君たち大丈夫かね?」


機動隊員が心配そうに、倒れているチョーコー生たちに声をかける。


「うう・・・・・・大丈夫です・・・・・・」


機動隊員たちは、倒れているチョーコー生たちを介抱(もちろん演技)。

立ち上がらせたりしていた。


「何で朝鮮人を逮捕しねーんだ!」

「うるせえ!てめーらが電車を破壊してるのをこっちはちゃんと見てんだ」


機動隊員に悪態をつきながら連行される士官たち。

士官坊たちにとって失敗だったのは、武器を持って電車を破壊しながらチョーコー生を襲撃した事にあった。

それを遠目で見ていた警察からは、国士館大生たちが朝鮮高校生襲撃をしている。

そう見られても仕方がなかった(実際そうだが)。


こうして、連日のチョーコー生と士官大・高の抗争は、新宿決戦に続いて警察の介入によって幕を閉じた。

死闘は、時間にして約10分。

機動隊の突入で、首謀者の花田幹夫を含む士官大生11名が逮捕。

前日の新宿駅の死闘同様、士官連合に壊された山手線の電車は大破。

またも運休を余儀なくされた。


各新聞でもこの事件を大々的に報道。

「国士館学生また暴力」

「朝鮮高生を高田馬場駅で襲う」

「待ち伏せ。国電止める」

「凶器も準備11人逮捕」

とデカデカと書かれ、一面を飾った。


この連日のチョーコー生と士官生の乱闘は、翌日国会でも取り上げられた。


「国士舘大学生によるところの朝鮮高校生に対する暴行の問題も起きております。特に、国士舘大学が実践倫理というようなものを教育の一つの方針に掲げて右翼教育をやっているということについてはきわめて遺憾だと思います。このように最近右翼が特に活発な行動を展開している、暴行行為等も頻発をしているという状況を警察としてはどのように把握をしておりますか。最初に、事務当局でけっこうでありますから、状況についてひとつ御報告をいただきたいと思います」


国会内で社会党・山口鶴男衆議院議員が警察庁警備局公安第二課長・中村安雄にそう発言・質問をし、中村安雄は、国士館大生による朝鮮高校生襲撃に関しての質問をはぐらかしながらもこう回答した。


「警察としては、視察取り締まり活動を強化している実情でございます」


国会を含めたこれら一連の動きに、今まで知らず存ぜぬを決め込んでいた国士舘大学の柴田梵天総長は、渋々記者会見を開かねばならない状況になり、記者会見場で「心からおわびします」と深々と頭を下げた。


メディア報道、国会での取り上げ、そして国士館大学総長の謝罪。

この一連の流れは、結果的にチョーコー生ならびに朝鮮学校、そして在日コリアン達にとってプラス、国士館にとってマイナス方向に動いていくのだった・・・・・・。



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