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#2

 その後、実動部隊TWELVEの四人は参謀たちの会議に呼ばれていた。

 初陣の結果についてだ。


 会議室と呼ばれるその部屋はSFチックな施設の中にあるとは思えぬほど古風な部屋であり蝋燭やシャンデリア、そしてオルガンなどが置かれ壁には沢山の絵画が飾られている。

 まるで教会のような内装だった。


 その部屋の中央に机が置かれ囲むように三人の参謀たちが座っている。

 だと言うのにTWELVEは端の方で立たされていた。


「予定を早めた初陣にしてはよくやったと言えよう。しかしまだ個々の力量に問題はあるな」


 まるで彼らを認めていないかのような言い方をする参謀の一人。

 その見た目だがその参謀は宣教師のような服装をしており他の者とは違った。


「特に早川竜司。一人で先行するなど君の器に相応しくない、神に与えられた自らの役割を自覚したまえ」


 この話はいつも聞かされているため竜司は適当に受け流す。


「へーい」


 しかしその軽い返事を参謀たちは気に食わなかったようだ。


「もっと真面目に聞きたまえ、神の御心の話をしているのだぞ?」


 参謀は熱心に神の事を語り始める。


「一人に出来る事は限られている、自分の範疇を超えた野心は身を滅ぼすだけだ」


「分かってますよ……」


 TWELVE隊員たちはこの参謀にはウンザリしていた。

 口を開けば神の話ばかりであるためだ。


「罪人の君たちに神は慈愛の心を持ち役割を与えて下さったのだ、従わない理由がどこにある?」


 更に詰め寄る参謀たち。


「お前たちには信仰心というものが足りない……」


 いい加減竜司は苛立ちが募って来た。


「あのっ……!!」


 とうとう我慢できなくなり反抗をしようと口を開いた時、それを察した参謀の中のある一人がそれを止めた。


「まぁまぁ、何度も言ってる事ですし彼らも分かっている事でしょう!」


 参謀の中でも明るい男性が竜司を助けるように発言する。

 彼は研究者のような白衣を見に纏っていた。


「確かに今はそのような話をしている場合ではありませんね」


 もう一人の軍服を着た参謀も同意した。

 それにより参謀たちはTWELVEを咎めるのを止めた。


「ありがとう時止さんっ」


「あいよ」


 竜司はその"時止/トキトメ"という違い白衣を身に纏った男に感謝を述べる。

 するとその時止はウインクをして応えた。


「む……」


 するとそこで会議室の扉が開く。


「遅れて申し訳ないねみんな」


 そこから現れた男の姿を見て参謀たちは一斉に立ち上がった。


「新生長官!」


 そして頭を下げる。

 その長官と呼ばれた男を見たTWELVE達もそれぞれ反応を見せた。


「やっと来た……!」


 少し安心したような表情を浮かべる陽。

 そして竜司も同様に頬が緩む。

 一番大きなリアクションをしたのは蘭子だった。


「新生さん〜!」


 先程までのツンツンした雰囲気から一気に崩れて乙女のような表情を見せる。


「やぁお疲れ、元気そうで良かったよ」


 TWELVE隊員たちにも挨拶をしたその長官は蘭子の頭を撫でてから中央に立った。


「では報告を頼むよ、雄介」


 名倉隊長に現場の報告をお願いする。

 その長官と呼ばれた男、"新生継一/シンジョウツギイチ"は怪しげだが優しい雰囲気を出して彼らを纏める神父のような存在なのだ。


 ______________________________________________


 新生長官に報告を頼まれた名倉隊長は喋る事に緊張しながらも一歩前へ出て現場で見たものを伝える。


「えー現場ではゼノメサイアとルシフェルが交戦中で我々が割って入りました、どうやらゼノメサイアが劣勢だったようです……」


 喋るのが苦手な名倉隊長は必死に頭を回転させながら言葉を選ぶ。

 その様子を新生長官は微笑ましそうに見ていた。


「その調子だよ」


 時折優しく声を掛けてあげる。


「我々の攻撃は通用しました、それでダメージを負ったのか突如逃げるように消えた……といった感じです」


 個人的にはこの説明で満足しているが参謀たちはまだ聞きたい事があるようだ。


「ヤツはどのように消えた?走って逃げたのかそれとも瞬時に姿を消したようだったか?」


 その詰め寄るような質問に慌ててしまう。


「えっと、消えました……」


 それしか言葉が出てこない。


「どのようにだと聞いている」


「っ……」


 上手く話せない事を咎められ更に詰め寄られてしまう。

 名倉隊長は必死に頭を回転させるが思考が止まってしまった。

 そこへ竜司が助け舟を出すように乱入する。


「何か赤黒い闇っぽいのに包まれて消えましたよー?」


 実際に見たものを伝える。


「ふむ、やはりバベルか」


「ルシフェルも堕ちたものですね」


 すると参謀たちは意味不明な会話を始めたがそれはいつもの事のためTWELVE隊員たちは聞き逃した。

 しかし一人だけ違った。


「あの!」


 声を上げたのは蘭子。


「いい加減その訳わかんない話の内容教えてくれません?大事なことなら現場に出てるあたし達にこそ教えて欲しいんですけど!!」


 少し怒った様子で言う蘭子に参謀たちは答える。


「言葉を慎みたまえ、君たちは何も知らず神に与えられた役割を全うすればいい」


 しかし投げ出すような答えだったため一同は納得いかない。


「分からない事だらけだ……」


 不安感がより高まる陽。

 高い身長と濃い顔に合わず常に萎縮している。

 そんな陽を見て軍服を着た参謀は言葉を投げかけた。


「我々も君たちのような"外部からの寄せ集め集団"に運命を託さねばならない現状が不安なのですよ、一般職員も同様です」


 自らの不安を主張してくる。


「ゼノメサイアにも失望したしな、神の御心だと信じたいが肝心の中身がアレでは……」


「……!!」


 ゼノメサイアの話題が出て名倉隊長は反応する。


「(ゼノメサイア、我々と同じ罪獣と戦う者……)」


 雰囲気が明らかに暗くなっていると新生長官が場を明るくしようとした。


「みんな暗いよ?神の御前だ、もっと先に進むための話をしなければ」


 そしてTWELVEを慰めるように言う。


「それにTWELVEはまだメンバーも揃っていないしゼノメサイアも慣れていないんだろう、これからに期待するとしようじゃないか」


 その発言を軍服を着た参謀は少し疑問に思う。


「お言葉ですが長官、少々TWELVEに甘いのでは?」


 そして新生長官は答える。


「彼らは大切な仔羊だからね」


 意味深にそう呟いた。


「いいかい?これからのTWELVEはゼノメサイアと共に戦う事を命ずる!」


「了解……」


 力なく返事をした事をまた参謀が咎めようとするが新生が静止した。

 そしてまとめに入る。


「では会議を終わろう、最後に一言」


 そして両手を上げて大声で言った。


「神の御心のままに!」


 呼応するかのように参謀たちも言う。


「「神の御心のままに!!」」


 その言葉をTWELVE隊員たちが言う事はなかった。

 ・

 ・

 ・

 会議が終わった後、TWELVE隊員たちは休憩室にいた。


「ったくよぉ、居心地最悪だぜぇ!」


「うん、何か嫌だったな……」


 竜司と陽は自販機のコーヒーを片手に愚痴を言っていた。


「ってかこのコーヒー不味っ、蘭子ちゃーん!」


 そして蘭子を呼び出して一口だけ飲んだコーヒーを渡す。


「コーヒー好きだったよね、いる?」


「不味いならいらない、あたしは美食家なの」


 そう言って自分で淹れたコーヒーの入った保温の水筒に口を付けた。


「ちぇ〜」


 そんなリアクションをする竜司だったがある事を口に出す。


「ってかここも居心地最悪だな」


 その言葉の意味とは。

 辺りにいる同じように休憩をしていた一般の職員たちだ。


「……ちっ」


 睨むような視線を感じる。


「仕方ないよ、僕らはイレギュラーなんだから……」


 肩を落としながら言う陽に竜司は更に言う。


「だからって戦えるのは俺たちだけだぜ?だからここに居るんだろ、文句あるなら自分で戦えってんだ」


 すると職員の一人が竜司の所にやって来て詰め寄る。


「戦えるなら戦ってるさ!機体の適性がないんだ、仕方ないだろ!!」


 しかし怒りをぶつける理由はそこではない。


「それを適合できるからって理由だけで素人同然のお前らに立場奪われて、気分最悪だ!」


 それだけ言って彼は背中を見せて去っていく。


「俺たちならもっと上手く戦えた……!!」


 悔しそうに嘆いている。

 それを見たTWELVE隊員たちは各々が複雑な感情を抱いていた。


「はぁ……」


 ため息を吐く竜司。

 このような嫌な視線で見られるのはここに来た時からずっとなので流石に飽きたのだ。


「…………」


 一方で名倉隊長が考えていた事とは。


「(ゼノメサイア。我々と同じように期待されたと思いきや失望される、一体何者だ?君は何故戦う……?)」


 ゼノメサイアの正体について一人考えていた。

 資料のページをめくりながら調べていた。


「隊長はゼノメサイアっすか、何でそんなに気になるんです?」


 竜司に質問をされて不器用ながらも答える。


「あ、あぁ……何故か気になってしまうんだ」


 何が気になるのか、正直まだ分からない。

 だからこそ資料を調べ続けるのだ。






 つづく



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