目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

#1

 修学旅行も無事終わりいつもの生活が戻って来たと思っている快たち。

 そんな一方でConnect ONE本部ではある計画が動き出そうとしていた。


「なるほど、そろそろ計画を第二段階へ進めて良いんだね?」


 長官である新生継一が何者かと電話をしている。

 その手には何かの書類が数枚握られていた。


「まずは"仔羊"の完成だね、最後のピースをはめる時が来たよ」


 そう言って書類の中の一枚を選んで見る。

 それはとある人物の資料だった。

 見出しに書かれている名前は……


『瀬川抗矢/セガワコウヤ』


 快の親友である瀬川の名前が書かれていたのだった。


「哀れな仔羊たち、ようやく役目を果たせる時が来るよ」


 ニヤリと笑った新生長官の背後ではモニターに様々なデータが映されていた。

 これまで活躍して来たウィング・クロウ、ライド・スネーク、タンク・タイタン、キャリー・マザーの他にもう一機新たな機体、"マッハ・ピジョン"と書かれた飛行機体があった。


 そしてそれらの次のページには更に新たな機体の姿が。

 巨大な人型のロボットのようなその姿。

 名は"OVIS"とだけ書かれていた。


 ___________________________________________






『XenoMessiaN-ゼノメサイアN-』

 第13界 オレバカリ






 ___________________________________________


 一方で快は修学旅行の後に振替休日があったため瀬川と家でゲームをしながら過ごしていた。


「良いのか?せっかく与方さんと付き合ったのに俺なんかと遊んでよ」


 某人気アクションゲームをプレイしながら瀬川がその様子を見ている快に問う。


「与方さんとは明日遊ぶ約束してる。それぞれの友達との関係も大切にしようって話になったんだ」


 わざわざ恋人より親友と遊ぶ理由を語る。


「向こうも友達と遊んでんだっけ?」


「そうそう、修学旅行で仲直り出来た人達でカラオケ行くんだって」


 しかしある事を思い出して快の顔は曇る。


「でも河島さんとはまだ仲直り出来てないみたい……」


 その二人が喧嘩をする様子は快と瀬川も見ていた。


「ったく河島も意地っ張りだよな、さっさと謝っちまえば良いのに」


「でも分からなくもないな、自分を正しいって思いたくなる気持ち……」


 快は少し前の自分と愛里と喧嘩をしていた時の河島咲希を重ねてしまっていた。


「誰も肯定してくれないと"せめて自分だけは"ってなっちゃうんだよな……」


 その意見に瀬川も納得する。


「確かにお前もそーやって意地張ってた所あったよな」


「うん、でも俺の事はお前や与方さんが肯定してくれた。そのお陰で俺はしっかり大切なものを大切だと思えるようになったよ」


 そう言うと瀬川が少し変な目で快の事を見ていた。


「お前よく恥ずかしげもなくそんなこと言えるよなぁ……?」


「え、だって本当の事だし……っ」


 指摘されて少し焦る快。


「ま、確かに言ってる事は間違ってねーけどな!実際俺はお前に賭けてんだぜ?」


「あぁ、夢の話……」


「そそ。俺やっぱり自分の夢とか分かんねぇからさ、お前が夢を叶えるのが夢だと思う事にした」


「うん、聞いたよ」


 以前釣り堀でバーベキューをした際にも瀬川は美宇に同じ事を話していた。

 快は何度も聞かされているため内容は把握している。


「本当に少しずつだけどお前は確実に成長してるよ、その調子でヒーローになる夢を叶えてくれよな」


 快の方へ顔を近づけて肩を軽くパンチした。


「お前一人だけの夢じゃないんだ」


 少し責任を感じた快は何とか叶える事を誓う。


「うん、頑張るよ」


 そんなやり取りをしている最中。

 プルルルル……

 瀬川のスマホに着信が入った。


「誰だ……?」


 着信画面を確認すると瀬川はあからさまに嫌な顔をする。


「げ、親父だ……」


 不満そうに瀬川は出るかどうか迷っている。


「出なくて良いの……?」


「大体ロクな話しねーからな……」


 快も瀬川が父親と仲が悪い話は聞いているため少し心配そうに尋ねるが瀬川は当然嫌がっていた。


「あ……」


 すると一度着信音は途切れてしまうがまたすぐに鳴り出した。

 プルルルル……

 このままでは永久に鳴り続けるだろう、そう感じ余計な面倒を避けるために瀬川は電話に出る事にした。


「はぁ……もしもし?」


 嫌々応答すると当然だが瀬川の父が出る。

 快からも少し声が聞こえていた。


『抗矢、電話はすぐ出るものだぞ?』


「トイレ行ってたんだよ……」


 一度出なかった事に嘘の理由を付けて応じる。


『まぁいい、今回電話したのには理由があってなぁ』


「言っとくけど教会なら行かねーぞ?神の事ばっかでたまには親らしい事もしてくれってんだ……」


『何を言う、いつも私からお前に話かけてるだろう。そちらが拒否してるだけで』


「……母さんの事、まだ許してないからな」


 快の目の前でギスギスしたやり取りが繰り広げられている。


『まぁいい、今どこに居るんだ?』


「快の家に来てるけど……」


『このまま電話で話すのも難だ、迎えに行こう』


「は?いや今快と約束したから会ってたんだって……!」


 勝手に事を進めようとする父親に腹が立って来る。

 しかし向こうは全く聞く耳を持たない。


『申し訳ないが急を要する、もう近い所まで来ているんだ』


 すると快の暮らすアパートに近づいて来る車の音が聞こえる。

 本当にすぐ側まで来ていたようだ。


『これからある場所へ向かう、その道中で詳しく説明しよう』


 その言葉を残し電話は切れた。


「おいっ、もしもし⁈……何なんだよ」


 そしてしばらくすると快の家のチャイムが鳴った。


「マジかよ……」


 本当に来てしまったと心臓の鼓動が脈打つのを強く感じる。


「はい……」


 あくまで普通を装い瀬川は玄関の扉を開ける。

 するとそこにはやはり予想通りの人物が立っていた。


「抗矢、早く車に乗るんだ」


 瀬川の父が急かすように息子を親友の家から遠ざけようとした。


「……快、俺はどうするべきだと思う?」


 背後に立つ親友に問う。

 快は少し考えた後こう答えた。


「俺は歩み寄る事で色々分かった事がある、お前も今回歩み寄れば何か違ったものが見えるんじゃないかな……?」


 それは明らかに成長している答えだった。

 瀬川の父はその快の言葉に感銘を受けていた。


「素晴らしいね快くん、以前会った時と見違えたよ」


「はぁ……」


「さぁ抗矢、快くんの言う通りだ。歩み寄ってくれないかな?」


 そう言われた息子はもう後には退けない。


「……分かったよ、行くから」


「素晴らしい回答だ」


 そう言って瀬川は父親に着いて行くのだった。


 ___________________________________________


 移動中の車。

 瀬川の父が運転する中で息子は後部座席に座りながら不貞腐れた表情をしていた。


「……で、何だよ話って」


 既に話すらしたくなかったが車の中で話す事があると言われてしまったので仕方なく内容を聞いてみる。

 しかしその内容は予想以上に嫌なものだった。


「来たるべき時が近づいている、インディゴ濃度の濃い者が必要なんだ」


 訳の分からない事を言い出す父親。

 当然息子は呆れてしまう。


「何だよそれ、結局訳わかんねぇ話じゃんか……」


 せっかく少しは歩み寄る気になれたと言うのにこれは酷いと思うしかなかった。

 早速着いて来た事を後悔する。


「教会にでも行くのか……?」


「いつもの教会ではないが神を祀る施設だよ」


 そして父は話の続きをするのだった。


「インディゴ濃度の話は以前したな、聖典にも載っている事だ」


 復習がてら解説に入る。


「新世界創造という人類の最終目的、そのために人類を導く存在。つまりは人類を愛に目覚めさせるために選ばれし伝導者」


 もはや息子は殆ど聞き流していた。

 それでも父は語り続ける。


「選ばれし者たちはその生命を形造るライフ・シュトローム内のインディゴ濃度が"高く濃い"。つまりは何か特殊な力に長けているのだよ」


 とりあえず聞いている雰囲気を出さなくてはならないと思った息子はその先に父が言おうとしているであろう以前学んだ事を先に言った。


「それが世に言う"サヴァン症候群"ってやつなんだろ?障害として色々苦手な事はあるけど何かずば抜けて得意な事があるっていうやつ……」


 早く話を終わらせたいがために言った事だが逆に父の感心を得てしまった。


「その通りだ素晴らしい、よく学んで来たな」


「はぁ……」


 言ってしまったと後悔する息子。


「お前もADHDと診断され苦手な事はあるが別格に運動能力に長けている。もしやと思いお前のライフ・シュトロームを調べてみたのだがな……」


「だからライフ・シュトロームがよく分かんねぇって……」


 小声で呟く息子の声は聞こえず父は続けた。


「見事にお前は選ばれし者だった、インディゴ濃度が高く濃い。我々の仔羊の最後の一ピースだ」


 最後まで父の言う事は訳が分からなかった。

 そこで思う事は一つ。


「(母さんが出て行った理由がよく分かる……)」


 ただ父への複雑な思いが強まって行くだけだった。

 そう思っている内に窓から見える景色が変わって行く。


「……なぁ、本当に何処向かってるんだ?」


「もうすぐ着く」


 そしてやって来たのは謎のダム。

 一体何をしようと言うのだろうか。


「なっ……⁈」


 そして目を疑う光景が。

 何とダムの水が流れる所が大きく開き新たな通路が生まれたのだ。

 そこを二人を乗せた車は進んで行く。


「なぁ、本当にここ何なんだよ……っ⁈」


 流石に焦りが強まる息子。

 次に父に言われた言葉は想像を絶するものだった。


「着いたぞ」


 車を駐車場のような所に停める。

 周囲には近未来的な軍用車両が多数停められていた。

 二人はそのまま車を降りる。



「ようこそ、Connect ONE本部へ」



 そう言った父。

 一瞬訳が分からなかった。


「…………は?」


 Connect ONE本部。

 自分や父が一体どのような用事があるのだろうか。






 つづく

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?