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#4

 突然ウィング・クロウが撃墜され焦る一同。

 その隙にザガンは完全に復活してしまった。


「ピャァァアアッ!!!」


 自在に変型する力を取り戻しパーツをいくつかに分離させる。

 そのまま小型機のように分離させたパーツで残った機体を執拗に追いかける。


「クッソ、しつけぇ!」


「〜〜っ!」


 直接ザガンを攻撃した三機がしつこく小型に追われる。

 このままでは本体を狙う事が出来ない。


「何やってんのアンタら……っ!」


 そう言う蘭子もかなり焦っている。

 しかしそこで気付いた、直接攻撃をしていない自分は狙われていないという事に。


「あ……」


 自分こそ何か出来るのではないか。

 しかしこの機体は護送用であり攻撃力は備えていない。


「(あーもうこれしかないじゃん……!)」


 ある方法を思い付く蘭子、しかし躊躇ってしまう。

 その表情からは恐怖の感情が伺えた。


「うぉぉぉっ⁈」


 一方で竜司は執拗に迫る小型により機体を破壊されてしまいそうだった。

 そこへ。


「ああぁぁぁぁっ……!!」


 なんと間に蘭子の乗るキャリー・マザーが突っ込んで来たのだ。


「蘭子ちゃんっ⁈」


「痛ったぁぁぁ!!!」


 あまりの衝撃に機体も損傷し蘭子自身も怪我を負ってしまった。

 しかし竜司は一瞬だけ追跡から解放される。


「早く撃て!!」


「……ぃよっしゃぁぁぁっ!!!」


 竜司は気合を入れて叫び真っ直ぐに本体へ突撃する。

 そして思い切り目の前で鉄分拡散弾を発射した。


「なんとか弾発射ぁ!!」


 しかしその瞬間、ザガンは体を一度集合させ大きく分離させる。

 中央から二つに分かれたのだ。


「なっ⁈」


 間をすり抜けてしまうライド・スネーク。

 しかし何とか新兵器は本体の半分へ命中した。


「ピィィィッ……!!」


 半分は動きを止める事が出来たがもう半分はまだ元気だ。

 異物が混ざりまともに動けないもう片方を倒そうとするがどうしても元気な方が邪魔をしてくる。


「半分でもこれかよ!!」


 しかしそれでも何とか隙を見つけて異物に悶えている方を攻撃する。

 しかし。


「フォォォン……」


 バラバラになってすぐまた異物を排出し起き上がってしまった。

 再生が再開したのである。


「マジでどうすりゃ良いんだよ……」


 完全に絶望してしまう竜司。

 すると蘭子が解説を始める。


「分析は終わったよ、厄介だねっ……」


 キャリー・マザーも小型に追われている中で必死に分析したようだ。


「コイツ、異物混入してる最中にもっと細かく刻まないとダメっぽいね……!」


「はぁ⁈キツすぎだろそれ!」


「生命反応が消えるまで分散させるのが唯一の方法……っ!!」


 この状況でほぼ不可能に近い方法でしか倒せないという事実に絶望する。


「なんかあと一つ切り札でもあれば……!」


 頭を掻きむしりながら逃げる蘭子。

 その発言を聞いた名倉隊長はある事を思い付く。


「ぐっ、ゼノメサイアは来ないのか……?」


 そう、今回は一向にやって来ないゼノメサイア。

 そう言われた一同も思い出す。


「そうだ、ゼノメサイアが来てくれれば……!」


「もう少し堪えるよ……!」


 一同は少しずつ希望を抱く一同だが瀬川はその発言に絶望していた。


「(ダメだ、快はせっかく……!)」


 しかし一同はゼノメサイアに完全に期待してしまっている。


「瀬川、最後の鉄分拡散弾とっとけよ!」


 そう言われるがどうしてもやりたくなかった。

 快をここに来させたくない。


「(クソッ、どうすれば良い……⁈)」


 完全に瀬川の脳内はパンクしていた。

 心臓の鼓動が速くなる。

 快がここに来る事、それは快の愛という夢を傷付けてしまうし瀬川の快の夢を支え父親に反抗するという生き甲斐も奪う事となってしまう。



『人には出来る事と出来ない事がある』



 父親のそのような言葉が脳裏に突然よぎる。

 まるで今のこの状況を予期していたかのような。


「そんなの嫌だ、だったら快がずっと辛いまんまだ……っ!!」


 親友の事を想いながら戦いに来て欲しくないと願う瀬川であった。


 ___________________________________________


 件の快は結婚式の後、披露宴の会場に着き入場まで待機していた。

 その間についスマホでニュースを確認してしまう。


『TWELVE苦戦、ゼノメサイア現れず』


 ネットニュースの見出しに罪悪感を覚える。

 添付された動画を見ると現場の近隣住民が苦戦しているTWELVEを非難している様子だった。


「うわー荒れてるねぇ……」


「何でゼノメサイア来ないんだろ?」


 近くで待っている美宇の友人たちも同じニュースや動画を見て不安視していた。

 そんな様子を見てせっかくの結婚式だというのに不安そうな顔をしている快を見て愛里は声を掛けた。


「大丈夫……?やっぱ瀬川くんたち心配?」


 当然ゼノメサイアの事情などは知らないため瀬川の事を話題に出す。

 なので快は正体がバレない程度に答えた。


「うん、アイツ俺に言ったんだ。"俺が守るから楽しんでこい"って」


 しかし快はそこで唇を噛む。


「でも今これだろ?俺のためにあんな想いしてると思うと申し訳なくてさ……」


 瀬川が快に対して思っている事を愛里に伝える。


「アイツ俺の愛されるって夢のために頑張ってくれてる、でもそれでアイツが傷付くのは嫌だしそれでも応えるのが大事なのかなって……」


 感情がごちゃごちゃになってしまっている事を愛里に伝えた。

 彼女はすぐに理解する、快にとって歩み寄り愛を与える事がヒーローなのだと知っているから。


「瀬川くんにも歩み寄りたいんだ?」


「そうだね、みう姉も言ってたけど一方的じゃダメなんだ。お互いが支え合わないと」


 今の快は瀬川から歩み寄られてばかりで何も返せていない。

 その事をひたすら悩んでしまっている。

 するとそこで。


「では皆さん、お入り下さい」


 係のスタッフが案内して彼らは披露宴の会場に入る事となる。

 快は重い足取りのまま会場へ入って行き、愛里もそれを心配そうに隣で見ていた。


 ___________________________________________


 そして快の心は騒ついたまま披露宴が始まった。


『新郎新婦の入場です!』


 結婚式の落ち着いた雰囲気とは違い明るい空気の中で美宇と昌高が入場してくる。

 先程とは違う衣装を身に纏っていた。


「ヒューヒュー!」


 拍手と歓声が送られる中、快も手を叩いていたが心ここにあらずだった。

 入場して歩いている間、美宇もそのような快の様子に気付いており何かを決意した。

 ・

 ・

 ・

 豪華な料理が並ぶ席。

 それらの視線が向くステージでは大きなウエディングケーキが聳えていた。


『ではケーキ入刀です!』


 美宇と昌高は二人で長い包丁を持ちケーキを切る。

 そのままお互いに食べさせ合った。

 幸せそうな空気で祝福したい気持ちが溢れていたがどうしても快は焦りが拭えなかった。


「っ……」


 そして司会者は次の項目の説明をする。


『次は新婦より家族へ向けたお手紙です』


 美宇が手紙を読むようだ。

 しかし快はあまり集中が出来ない。

 動悸が激しくなってきた、久々にまたパニック発作が訪れて来たのかも知れない。


「えー、大切な家族へ向けて書きました」


 マイクへ向かって花嫁姿の美宇が手紙を読み始める。

 初めに死んだ両親や祖母へ向けての言葉を伝えていた。


「今日のこの姿を見て欲しかった、父さんも母さんも婆ちゃんも他にいない大切な家族だから」


 そのような話をしている中でも快は不安げだ。

 動悸がしてもはや手紙の内容すら聞こえないほど。


「はぁ、はぁ……」


 すると隣の愛里が快の手を握る。


「っ……⁈」


 彼女の顔を見ると優しく微笑んでいた。

 快の苦しみを理解してくれていると言うのか。


「快、大丈夫だよ」


 まるで愛里が言ってくれているように感じた。

 しかし実際は彼女ではない、手紙を読む美宇が言ったのだ。

 そのまま手紙を読む美宇の方へ視線を移す。

 すると彼女は快の目をジッと見ていた。


「次は最愛の弟である快に伝えます」


 そして彼女は快に対してメッセージを伝えた。


 ___________________________________________


 そしてここはザガンと戦う現場。

 瀬川は仲間との想いの違いに絶望しながら操縦桿を握っていた。


「くっそ……っ」


 勢いを増すザガンの攻撃に段々と避ける精度が荒くなって行く。

 次々と掠っていった。


「あぁっ……!!」


 そのまま遂に片翼にダメージを負ってしまう。

 飛行の精度が落ちて更に避ける事が難しくなってしまう。


「マズいぞ瀬川!!」


 竜司たちも慌てて救援しようとするが中々近付けない。

 このまま万事休すか、そう思った時。


「……え?」


 瀬川の視界に一瞬だけあり得ないものが映った気がした。

 すぐに旋回したためもう見えなくなってしまう。


「おぉ……!」


「やっとか……!」


 他の一同は何やら喜びの声をあげている。


「まさか……!」


 瀬川にとってそれは最悪の予感だった。

 慌ててまた旋回し先程の方向を再確認する。

 そこにいたのは。


「何で……っ!!」


 彼が最も恐れていた事態。

 ゼノメサイアがそこには立っていたのだ。


『ゼアァァ……!』


 覚悟を決めたようなその親友の出立ちに瀬川は何を感じるのだろうか。






 つづく

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