ゲートから手を伸ばし神の空間へ進もうと試みる新生。
彼は自らの真下……いや、もう上下は関係なかった。
とにかく地上に現れた存在に感付いた。
それらは一直線に空を切りこちらに向かって来ている。
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その頃、地上では。
ヒトの素体による攻撃で人類は恐怖していた。
快たちがこれまで関わって来た人々も脅威に脅かされている。
「助けて……!」
そこへ救世主が現れた。
まるで人々の声に応えるかのように。
『ジェアッ!』
ヰノ矛を街に突き立てようとするヒトの素体を思い切り蹴り飛ばすゼノメサイア。
その姿に合わせるように背後からはメイト、そしてTWELVEの各機体が姿を現す。
「あれは……!」
逃げ惑う人々の視線は彼らに釘付けとなる。
それはまるで絶望の中に舞い降りる希望であった。
彼らを信用した事などない。
しかし今はその姿勢に、誠意に全人類が釘付けとなっていた。
『新生さん、今行きます……!』
彼らの愛する人を想う心が人々に伝わりつつあるのだ。
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現れたゼノメサイア率いる軍勢に気付いたヒトの素体たち。
しかし世界の蹂躙は止めない、あくまで自らの使命はソレだから。
『チッ、挨拶くらいしなさいよっ!』
大きく飛び上がるメイト。
左手に宿る聖杯の力を使い近くのヒトの素体をまず一体斬り裂いた。
するとその向こう側にいたもう一体がメイト目掛けてヰノ矛を投擲しようとしていた。
『これくらいっ……』
避けるのは簡単だ、しかしある事に気付く。
もしここでメイトが避けたのなら背後にいる人々が危険に晒される。
『はぁ、感謝しな』
投げられたヰノ矛。
メイトは思い切り左手を伸ばし聖杯の力でそれを受け止めた。
『ぐぅぅぅうううっ⁈』
しかしやはりヰノ矛による精神汚染は凄まじい。
その様子は愛里も逃げながらしっかり目で見ていた。
「さっちゃん……っ!」
咲希自身はその事に気付いていない。
しかし自分に出来る事をするのだ。
『そんな成り損ないの力っ、聖杯の前で敵うと思うっ⁈』
何とか力を振り絞り聖杯にヰノ矛の力を取り込む。
その力を我が物としたメイトはそのまま左手を大きく振り翳し敵の体を斬り裂いた。
『お返しっ!』
そのままヰノ矛の凄まじい力を身につけ迫るヒトの素体たちを倒して行く。
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一方で快の変身するゼノメサイアはなるべくヰノ矛による攻撃に触れぬよう受け流しながら攻撃を加えて行った。
『ハッ、テェヤッ!』
しかしまだまだ迫るヒトの素体。
『多いなっ……』
ゼノメサイアは一気に蹴散らすため神の雷を放つ事に決めた。
エネルギーを最大限に、それでいて効率よく放つのだ。
『ライトニング・レイ!』
右手から放たれる神の雷を薙ぎ払うように。
ヒトの素体たちは大勢吹き飛ばされて行った。
『ふぅ、でもまだまだいるな……』
慌てながらもある方向を振り返る。
そこにはTWELVEの機体が戦う姿があった。
ある分析をしている蘭子を守るように他が戦っている。
「蘭子ちゃん、まだ⁈」
「静かにしてっ、もうすぐ……っ!」
竜司の問いに焦る蘭子が分析しているのは空に浮かぶ新生、つまりはレ・アボミネンスだった。
一体あの場で何をしているのか、それを調べているのだ。
「凄い、前はここまで調べられなかった……アップデートしてくれたの、時止さん?」
インペラトルの研究により遥かに分析の精度が上がった。
死して尚活躍している時止主任に感謝を覚える。
「危ないっ!」
そしてその蘭子を守るように戦う軍勢の中には陽が操縦するウィング・クロウの姿もあった。
彼は自分の意思で戦えている。
「あんた本当に大丈夫⁈」
「僕は大丈夫だからっ、蘭子ちゃんは出来る事を!」
自分に出来る事。
今は全員が最大限ソレをやる時だ。
「了解っ……!」
そしてどんどん分析は進んで行き、レ・アボミネンスの詳細が明らかとなる。
「来たっ!新生さん、ライフ・シュトロームそのものにアクセスしようとしてる……!」
レ・アボミネンスが今やっている事、それは全ての生命を司る存在になる事だった。
「新世界の核ってヤツか……!」
「それが完了するまでは何も出来ない、完全に理の外にいる……!」
「じゃあどうすれば⁈」
そして蘭子は一度深呼吸をしてから思い付いた作戦を伝えた。
「一回完了を待つの……!大丈夫、ソレだけじゃ力は発揮できない。そこから剣と聖杯を奪われたら負け!」
「じゃあゼノメサイア組みを守りながら戦うって訳ね?」
「そういう事……!」
作戦が明らかになった。
そうと決まればやるだけである。
「へへっ、よっしゃ!やってやろうじゃねーか!」
竜司は気合いを入れて戦いに行く。
一同は遂に本気を出すのだった。
『ゼアッ!』
光弾を放つゼノメサイア。
『ハァッ!』
聖杯の力で斬り裂くメイト。
「ゴッド・オービス!」
合体して一気に叩くTWELVE。
ヒトの素体は遂に彼らばかりに注目する。
そのお陰で顔を上げた人々は彼らの勇姿をその目で目撃するのだった。
『ゾリャァァァッ!』
そのまま一気に攻撃を叩き込む。
周囲に蔓延っていたヒトの素体があらかた片付けられた。
全てが浄化されるように消えて行く。
「よし、後は……」
後は新生だけ。
瀬川がそう言おうとした途端、空に浮かぶレ・アボミネンスが一際強い輝きを放った。
「ぐっ……⁈ まさか!」
そのまさか。
新生は意識の中で達成したのである。
『おぉ、これが生命の核……!』
全てのライフ・シュトロームが帰結する樹の根。
それを新生は遂に手にしたのだ。
『フフフ……』
そのままゆっくりと地上へ降りて行く。
禍々しいオーラを全身に集約させその圧倒的な存在感を放った。
「新生さん……っ」
遂に現れた。
全身に鳥肌が立つ一同。
見ている人々も固唾を呑んで見守っていた。
『まだ、いたんだね』
いつもの新生の声だが明らかに雰囲気が違う。
全員がその恐ろしく禍々しいオーラに怯んでしまいそうだった。
つづく