目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

お洒落

「おーいサリア、まだか!!」


「まっ、待って!! もう少しで降りるから!」


 ゴミ屋敷掃除ではヴェルミラ製の服を着ていたが、お出かけということでミツキから貰った服に着替えてみた。


 今着ているのは5着目。鏡の前でクルクルと回ってみる。


 これは私に合っているのだろうか。着替えれば着替えるほど、分からなくなってくる。


 でも――


 初めて着る、地球の服。


 とても素敵だ――



「ごっ、ごめん、待たせてしまって! こ、この服おかしくないかな?」


 玄関の引き戸を勢いよく開けると、レクトとリオ、そしてハルキが立っていた。


「お、いいじゃん。似合ってるよサリア」


「ホントに! 全然違和感無いですよサリアさん!」


 違和感無いって何だよ。リオはきっとモテないタイプだ。


 ――それよりもハルキだ。初めて会ったときと同様、何故かまた硬直している。


「どう、ハルキ? ミツキの服だけど、おかしくない?」


 ある意味、地球人のハルキの意見が一番重要だ。「おかしい」と言われれば、また着替え直さないといけない。


「ぜ……ぜんぜん、おかしくない。――ミツキより……似合ってる」


「あー、そんなこと言っていいのかなー? 後でミツキさんに言ってやろー」


「や、やめろレクト! アイツ、俺には異常に厳しいんだから絶対に言うなよ!」


 レクトとハルキは、まるで昔からの友人のようだ。


 遅れて来るというミツキ。彼女は一体、どんな反応をしてくれるだろうか。



***



「レ、レクト……? あんまり口に合わないか……?」


 我先にと、牛タンを一口食べたレクトは、下を向いて口を押さえてしまった。カレーは私たちに刺さったが、焼肉は合わないのだろうか……


「いっ、いや……美味すぎて言葉を失ってる……ハルキさん、美味いものってこんなに感動出来るものなのか……?」


「おっ、大げさだな、心配させんなよ! でも良かった良かった! さあ、リオとサリアちゃんも食べて食べて!」


 私とリオもレクトに続いて牛タンとやらを食べた。カレーに勝るとも劣らない程の衝撃が脳天を直撃する。普段は小声のリオが「美味しいですっ!」と大声を上げた。


「ここは地元でも有名店でな、平日でも予約が取れないときがあるくらいなんだ。しかしまあ、カレーの時といい、ホント面白いリアクションするよなあ、お前たち。ミツキにも見せてあげ――あ、来た来た! ミツキ、こっちだ!」


「ごめんね、遅くなっちゃって―― わ! もう着てくれてるのね、プレゼントした服! サリアちゃん、めっちゃ可愛い!!」


 ミツキはそう言って、私の前の席ににストンと座った。


「私は全然似合わなかったの、この服! でも、サリアちゃんなら絶対似合うと思ってた! 凄くいい!」


「そういや、ハルキさんも同じような事言ってたよ、ミツキさん」


「こっ、こら! それは言うなって言っただろ! ――っていうかミツキ! お前、俺のお気に入りの服までプレゼントすることないだろ!」


 ハルキはレクトのトップスを指さして言った。


「あ……それお気に入りなんだっけ? 仕舞ってあったから、着てないのかなって……ハハハ、ごめんごめん」


 どうやら、レクトにあげた服はハルキ一番のお気に入りだったらしい。初めて会った時、ハルキがレクトの服を見て驚いていた理由がやっと分かった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?