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ep13:お洒落

「おーいサリア、まだか!!」


「まっ、待って!! もう少しで降りるから!」


 ゴミ屋敷掃除ではヴェルミラ製の服を着ていたが、お出かけということでミツキから貰った服に着替えてみた。


 今着ているのは、既に五着目。鏡の前でクルクルと回ってみる。


 これは私に合っているのだろうか。着替えれば着替えるほど、分からなくなってくる。


 でも――


 初めて着る、地球の服。


 とても素敵だ――



「ごっ、ごめん、待たせてしまって! こ、この服おかしくないかな?」


 玄関の引き戸を勢いよく開けると、レクトとリオ、そしてハルキが立っていた。


「お、いいじゃん。似合ってるよサリア」


「ホントに! 全然違和感無いですよサリアさん!」


 違和感無いって何だよ。リオはきっとモテないタイプだ。


 ――それよりもハルキだ。初めて会ったときと同様、何故かまた硬直している。


「どう、ハルキ? ミツキの服だけど、おかしくない?」


 ある意味、地球人のハルキの意見が一番重要だ。「おかしい」と言われれば、また着替え直さないといけない。


「ぜ……ぜんぜん、おかしくない。――ミツキより……似合ってる」


「あー、そんなこと言っていいのかなー? 後でミツキさんに言ってやろー」


「や、やめろレクト! アイツ、俺には異常に厳しいんだから絶対に言うなよ!」


 レクトとハルキは、まるで昔からの友人のようだ。


 遅れて来るというミツキ。彼女は一体、どんな反応をしてくれるだろうか。



***



「レ、レクト……? あんまり口に合わないか……?」


 我先にと、牛タンを一口食べたレクトは、下を向いて口を押さえてしまった。カレーは私たちに刺さったが、焼肉は合わないのだろうか……


「いっ、いや……美味すぎて言葉を失ってる……ハルキさん、美味いものってこんなに感動出来るものなのか……?」


「おっ、大げさだな、心配させんなよ! でも良かった良かった! さあ、リオとサリアちゃんも食べて食べて!」


 私とリオもレクトに続いて牛タンとやらを食べた。カレーに勝るとも劣らない程の衝撃が脳天を直撃する。普段は小声のリオが「美味しいですっ!」と大声を上げた。


「ここは地元でも有名店でな、平日でも予約が取れないときがあるくらいなんだ。しかしまあ、カレーの時といい、ホント面白いリアクションするよなあ、お前たち。ミツキにも見せてあげ――あ、来た来た! ミツキ、こっちだ!」


「ごめんね、遅くなっちゃって―― わ! もう着てくれてるのね、プレゼントした服! サリアちゃん、めっちゃ可愛い!!」


 ミツキはそう言って、私の前の席にストンと座った。


「私は全然似合わなかったの、この服! でも、サリアちゃんなら絶対似合うと思ってた! 凄くいい!」


「そういや、ハルキさんも同じような事言ってたよ、ミツキさん」


「こっ、こら! それは言うなって言っただろ! ――っていうかミツキ! お前、俺のお気に入りの服までプレゼントすることないだろ!」


 ハルキはレクトのトップスを指さして言った。


「あ……それお気に入りなんだっけ? 仕舞ってあったから、着てないのかなって……ハハハ、ごめんごめん」


 どうやら、レクトにあげた服はハルキ一番のお気に入りだったらしい。ハルキがレクトの服を見て驚いていた理由は、そういうことだったのか。

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