「おーいサリア、まだか!!」
「まっ、待って!! もう少しで降りるから!」
ゴミ屋敷掃除ではヴェルミラ製の服を着ていたが、お出かけということでミツキから貰った服に着替えてみた。
今着ているのは5着目。鏡の前でクルクルと回ってみる。
これは私に合っているのだろうか。着替えれば着替えるほど、分からなくなってくる。
でも――
初めて着る、地球の服。
とても素敵だ――
「ごっ、ごめん、待たせてしまって! こ、この服おかしくないかな?」
玄関の引き戸を勢いよく開けると、レクトとリオ、そしてハルキが立っていた。
「お、いいじゃん。似合ってるよサリア」
「ホントに! 全然違和感無いですよサリアさん!」
違和感無いって何だよ。リオはきっとモテないタイプだ。
――それよりもハルキだ。初めて会ったときと同様、何故かまた硬直している。
「どう、ハルキ? ミツキの服だけど、おかしくない?」
ある意味、地球人のハルキの意見が一番重要だ。「おかしい」と言われれば、また着替え直さないといけない。
「ぜ……ぜんぜん、おかしくない。――ミツキより……似合ってる」
「あー、そんなこと言っていいのかなー? 後でミツキさんに言ってやろー」
「や、やめろレクト! アイツ、俺には異常に厳しいんだから絶対に言うなよ!」
レクトとハルキは、まるで昔からの友人のようだ。
遅れて来るというミツキ。彼女は一体、どんな反応をしてくれるだろうか。
***
「レ、レクト……? あんまり口に合わないか……?」
我先にと、牛タンを一口食べたレクトは、下を向いて口を押さえてしまった。カレーは私たちに刺さったが、焼肉は合わないのだろうか……
「いっ、いや……美味すぎて言葉を失ってる……ハルキさん、美味いものってこんなに感動出来るものなのか……?」
「おっ、大げさだな、心配させんなよ! でも良かった良かった! さあ、リオとサリアちゃんも食べて食べて!」
私とリオもレクトに続いて牛タンとやらを食べた。カレーに勝るとも劣らない程の衝撃が脳天を直撃する。普段は小声のリオが「美味しいですっ!」と大声を上げた。
「ここは地元でも有名店でな、平日でも予約が取れないときがあるくらいなんだ。しかしまあ、カレーの時といい、ホント面白いリアクションするよなあ、お前たち。ミツキにも見せてあげ――あ、来た来た! ミツキ、こっちだ!」
「ごめんね、遅くなっちゃって―― わ! もう着てくれてるのね、プレゼントした服! サリアちゃん、めっちゃ可愛い!!」
ミツキはそう言って、私の前の席ににストンと座った。
「私は全然似合わなかったの、この服! でも、サリアちゃんなら絶対似合うと思ってた! 凄くいい!」
「そういや、ハルキさんも同じような事言ってたよ、ミツキさん」
「こっ、こら! それは言うなって言っただろ! ――っていうかミツキ! お前、俺のお気に入りの服までプレゼントすることないだろ!」
ハルキはレクトのトップスを指さして言った。
「あ……それお気に入りなんだっけ? 仕舞ってあったから、着てないのかなって……ハハハ、ごめんごめん」
どうやら、レクトにあげた服はハルキ一番のお気に入りだったらしい。初めて会った時、ハルキがレクトの服を見て驚いていた理由がやっと分かった。