「レクトたちってさ、『いとこ同士で一度は一緒に住もう!』って話で、一緒に住み始めたんだってさ。マジ凄くない?」
何本目かのビールを開けて、顔を赤くさせたハルキが言った。「へー、凄い!」と相槌を打つミツキの頬も赤く染まっている。
「やっぱさ、親たちも仲良いわけ? いや、仲が良いからお前たちもそんな風に仲が良いんだろうけどさ」
ハルキは笑顔でそう言うと、空になったレクトのグラスにビールを注いだ。
「いや……俺たちさ、実はみんな親いないんだよね。柊って名字も、施設で貰った名字でさ。そこで育ったやつは、みんないとこ同士ってことになってるんだよ。リオだけは、同じ施設に兄貴がいたけどね」
レクトが言うと、ハルキとミツキは瞬きを忘れたかのようにレクトを見つめた。
「そっ、そうか……何か悪いこと聞いちまったな……申し訳ない……」
ハルキは気まずい空気に耐えられなかったのか、グイッと水を飲んだ。
私たちに親がいないのは本当だ。17年前、ヴェルミラでは実に3世紀ぶりに大きな戦争が起こった。近い将来、ヴェルミラが消滅するというニュースが流れた後の事だという。そして、その時の戦争孤児が私たちだ。
親がいないということに関しては、本当の事をいうかどうか迷っていた。だが、ボロが出るくらいなら本当のことを言おうと決めていたのだ。
「――なんか似てるね、私たち。実は、兄と私も幼い頃に両親を亡くしてるの。もしね……もし、私たちで力になれるなら、いつでも何でも言ってちょうだい。私はともかく、ハルキはこう見えて頼りになるとこあるから」
ミツキのセリフに、ハルキはうんうんと頷いている。その目にウルウルと涙を浮かべながら。
「あっ、ありがとうございます……うっ、ううっ、こんな見ず知らずの僕たちが、こんなに親切にされるなんて……思いもしなかったよねぇ……ねぇ、レクトくん……」
顔を真赤にしたリオは、涙を流しながらそう言った。
――あ。もしかして、これは酒に酔っているという状態なのか。
私とレクトは普段と変わらないが、リオだけは明らかに様子がおかしかった。きっと、ビールという飲み物のせいだ。
「リオ、そしてレクトとサリアちゃん……これからは俺を兄と思って頼ってくれ。今日から俺たちは兄弟だ……」
そう言ったハルキも、おうおうと泣き出した。
「はいっ、わかりましたっ……!! どんな事があっても、絶対に僕が地球侵略を――」
隣に座っていたレクトが、素早くリオの口を塞いだ。
「酔うと、すぐ空想の世界に入っちゃうんですよコイツ。外ではやめろって言ってるのに。ハハハ……」
ナイスプレイだ、レクト。