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第3話:出会い

 その女性に会えたのは、奇跡だった。

 毎朝乗る有楽町線。新木場駅から銀座一丁目まで15分弱。座れるということがメリットのその電車の時間が、晃宏の貴重な睡眠時間になったのは、春もすぎて少し日差しが強くなり始めた頃だった。


「隣だとよく眠れる?」

「いえ、気づいたのは最近なんですけどね」

 先輩の末広に昼ごはんがてら健康チェックを受けながら、最近顔色がいいな、と言われたのに答えると、末広は訳がわからない、という顔をした。通勤電車である女性の隣に座るとよく眠れるんです。自分でもよくわからない返答だと思う。

「その女性の隣だと、いつの間にか眠ってるんですよ。起きたあとはすごくすっきりしてるんです。熟睡できると、人間てあんなに幸せな気分になるんですね。忘れていました」

 晃宏が慢性疲労症候群だと診察されてから、半年たつ。3日に1度はくる急激な倦怠感。寝ても熟睡感がない、不眠症の一つである熟眠障害。平熱よりもつねに少し高い微熱の体。いろんなものを合わせた結果の診断だ。

 働けているだけ、マシだと思う。この病気は症状が深刻だと、立ち上がることさえできない。

「眠れたっていうのがいいんですかね。なんか、ダルさもあんまり感じない気がするというか」

 原因が完全に解明されていないこの病の治療法は、基本的には免疫療法と薬物療法だ。漢方を飲んだり、他にも和温療法という、サウナのような部屋で体を温める治療法もある。晃宏には、どれもまだ効果が表れていない。慢性疲労症候群は長いときには完治に数年かかることもある。なんなら、治らないこともありえる。担当医からにも気長にやりましょうと伝えられたばかりだ。

「眠れないのが1番、辛いって言ってたもんな」

 末広は、社内で数少ない晃宏の理解者だ。この病気のせいで、晃宏の周りからは、潮が引くように人がいなくなった。

「今なら、もっと仕事できると思いますよ」

 なるべく明るく笑って見せると、末広が眼鏡の奥の瞳を細めた。

「いや、今でも充分助かってるさ。急激に無理すると、また体にくるかもしれないからな。まずは、そのいい感じを体に覚えさせよう」

 晃宏の仕事はプロジェクト補佐だ。建造を一手に担う会社で、末広や晃宏は工事の記録や地形データの分析を担当している。その分析基盤の企画をする上で、他社のサービスを調べたり、協力会社を探したり、アポの調整をしたりする。本来は企画書の作成を手伝ったりもするのだが、末広の一存で晃宏は秘書のような立ち位置の仕事を担当している。

 ただでさえ、晃宏の病気に理解のある同僚、ましてや上司は本当に少ない。一度転んでしまったら立ち上がれないだろう、この状況でなんとかしがみつきながら仕事ができているのは末広のおかげだ。その恩に早く報いたい。

「ちょっとその方に、お願いしようかなと思ってて」

 思わずそんな言葉が口をついて出た。

「お願いって……。ナンパでもするつもりか?」

「そういう関係ってわけじゃなくて……。バイトとかでいいんですけど、彼女の隣で眠る時間が増えたら、なんだか治る気がするんです」

「枕代行業ってとこか」

 言い得て妙だが、それはあの人に失礼な気がする。それよりも、なんというか。

「セラピーって感じですかね。僕はその対価を払う。彼女にはセラピーとして隣に座っていてもらう」

 体に合う薬を探すだけでも苦労している身だ。眠れる要素がこの先いくつ出てくるのかわからない。

「これを逃したら、次はないと思うんです」

「気持ちはわかるが……」

 末広が晃宏の顔を見る。思い直したかのように、首を振った。

「まあ、やるだけやってみるか。まずは、その女性に認識されるところからだな。知らない奴から話しかけられるよりも、見知っている人物から声をかけられた方がよっぽど安心感がある。あくまで、それとなくだぞ。ストーカーみたいに後を追うのはだめだ」

 営業戦略が得意な末広のアドバイスに頷く。

「まずは、毎回同じ席に座ってみようかと思います。幸い、隣に座っても不自然じゃないくらいには混んでいるんです」

「そうだな、企画会議と一緒だ。相手の心をつかめ」

 末広のアドバイスを一つひとつを心に留める。昼ご飯はいつの間にか作戦会議の場となったが、晃宏は大きな案件を前に気が昂るような、高揚する気分を久々に感じていた。


 注意して観察してみると、女性は同じ車両の同じ席にいつも座っていた。重い頭を首の上に乗せながら、やっとの思いで電車に乗っている晃宏は気づかなかったが、みな、お決まりの席があるようだ。

 その「お決まり」を彼女の隣にするまでに、そんなにはかからなかった。たまに、席を変えてもみたが、特に女性が気にするわけでもない。彼女の隣は晃宏が座らなければ、空席であることが多かった。

 3日に1回、2日に1回と頻度を増やして、ほぼ毎日女性の隣に座る権利を晃宏は手に入れた。

 その権利を束の間の時間堪能しつつ、時を経るにつれ、晃宏の思いは強くなっていた。

 彼女の隣で、もっと眠りたい。

「やっぱり、仕事として依頼するしかないだろうな」

 末広がうどんをすすりながら晃宏を見る。調子が良ければ、末広との昼の時間は作戦会議の時間になっていた。

 調子が悪い時には、そもそもご飯を食べるどころではない。胃や頭のムカつきを押さえながら、ずっと目を瞑って横になっているしかない。

「ただ、隣で寝るって仕事がなあ。恋人でもないのに、普通に言われたらひくよな」

「ひきますよね」

 彼氏や、ましては夫がいるかもしれないその人の隣で眠るには、彼女に「仕事」として行ってもらうしかない。そこまでは、末広とも合意が取れている。ただ、その先。どうやって仕事を依頼するかで、いつも煮え切らない。

「まあ、お前の病気については、正直に言うとしてだ」

「隣で寝てくださいって、警察に通報されても仕方ない案件ですよね」

 正直、セクハラ以外の何ものでもない。知らない奴が横で寝るなんて、同性でも嫌だろう。

「しかも、彼女にメリットがないんですよね」

 無論、対価となる賃金は払う予定だけれど、平日は働いているであろう彼女に、休日まで働く意義がなければ、それまでだ。

「むしろマイナス面のが大きいよな。拘束されるし、付き合ってるとか夫なら、相手に話せるけど、好きな奴がいるとかだったら、どうするよ? 協力してくれるとは思えない」

 思わずため息が出る。これがストレスになったら本末転倒だ。慢性疲労症候群は、ストレスからくる免疫力低下により、ウイルスが入り込んで脳の機能障害が起こるせいではないかと言われている。

「相手の心をつかむどころか、嫌われるな。一発退場だわ」

 末広がスプーン片手に天を仰ぐ。

 良い案が出ないまま、その時がやってきたのは、束の間の梅雨の休暇か、よく晴れた6月末のことだった。


 半個室の居酒屋。電車以外で初めて彼女を見かけたのは、他社との打ち合わせの後、たまには夕飯でも、と呼び出された店だった。

 最近は彼女の隣に座れているからか、朝のその時間は眠れるという安心感で、概ね体調が良い。たまに、激しい目眩や頭に背筋にのぼる悪寒と鳥肌が襲ってきはするものの、いくらか休めばなんとか動けるまでには回復する。

 頭にかかるモヤが綺麗さっぱりなくなるほどではないが、半年ぶりに落ち着いた時間を過ごしていた。

「末広さん!」

「あ、麦茶頼んどいたぞ」

 末広が焼き鳥を頬張りながら、晃宏の空のグラスを指差す。

「あ、ありがとうございます。って、そうじゃなくて、彼女がいたんですよ!」

「ファのじょ?」

 おそらく「かのじょ?」と発音したのだろう。末広の焼き鳥を頬張る手を止めて、体で指を隠しながら後ろを指さす。

「あっち、あっちに、枕の君がいたんですよ! あの、ショートの女性が座っている席です」

 枕の君は、晃宏と末広の間でつけた彼女の呼び名だ。

「は?」

「いえ、だから、枕の君が──」

「違う、いや、それもだけど、あのショートの人は、今やってるプロジェクトの協力会社の人だぞ?」

「は!?」

 思わず出た声を押し戻すように口に手を当てる。灯台下暗しとはこのことだろうか。

 そうか、確かに沿線上か、と末広がひとりごちる。

 末広もこの偶然に興奮しているのか、少し浮き足立っているような気がする。

「ちょっくら、声かけてみるか」

「え!? 今ですか!?」

「顔見知りになっておけば敷居が下がるだろ? チャンスはいつも目の前にぶらさがってないからな」

 それは、そうですけどと渋る晃宏を無視して、末広が彼女の席へと向かっていく。

「ちょ、末広さん!」

「ビールでーす」

 間が悪いことに、末広の頼んだビールが到着する。店員から受け取っていたら、すっかり出遅れてしまった。その間も晃宏は気が気でない。

 末広が話しかけ、枕の君が立ってお辞儀をしている。挨拶のようだが、ショートの人が何やらしかめ面をしているので、壁になっているようにも見える。

「本当ですか! 詳しく教えてください」

 たどり着いた時には、ショートの女性がビール片手に立ち上がっているところだった。爛々としている眼が活発さと勝気さを表している。

「はい。次の打ち合わせの日程についてもご相談させていただきたいです」

「もちろんです。あ、お席にビールありますか? 乾杯しましょう!」

 ショートの女性を晃宏たちのいた席にエスコートしながら、末広がアイコンタクトを送ってくる。

 あとはがんばれ。

 そう言っているだろうことはわかるが、どうすればいいと言うのだ。

 末広たちを見送る形になったので、晃宏は枕の君に背を向けている状態だ。

 初めてプレゼンをするときのような、緊張感が晃宏の中で広がる。

 このまま、この状態を続けていたら、倒れかねない。

 なるようになれ!

 晃宏は腹を決めて、振り返った。

 思い切って振り返ると、こちらを向いているとばかり思っていた彼女は、予想に反して机の方を向いたまま俯いていた。楽しい飲みの席をジャマされたのだ。確かに面白くはないだろう。しかも、友人は彼女を置いていってしまっている。

 晃宏は慌てて声をかけた。

「僕も、少しよろしいですか?」

 そうまずは、自己紹介だ。末広と同じ会社なのだから、不自然でないはず。

 セミロングの柔らかそうな髪がふわりと広がり、彼女が振り向いた。

 隣に座っているとはいえど、真正面からこの近さで顔を見たのは初めてだ。

 驚きに目が見開かれているが、どこかしら笑い出しそうな表情だ。

「末広と同じヤツハシ製造に勤めています、東野と言います」

「え?」

 驚きの声に、よろしくお願いしますと続けようとした言葉を飲み込んだ。

 なにか変なことを言っただろうか。

「ああ、すみません。私は、三笠情報の西野と申します。よろしくお願いします」

 訝しげな顔をしていたのだろう。彼女はすぐに両手を目の前で振って、晃宏の考えを否定した。

「西野、さん?」

「ええ。なんだか、すごく親近感が湧きますよね」

 ニコニコと笑うその表情は営業的なものかもしれないが、好感触だ。

 すでに、緊張でめまいがしそうだが、ここでしくじってはならない。

 晃宏は、親指をギュッと握った。半年前まではやっていた企画プレゼンの時のジンクスだ。何が起きても、最善を尽くす。

「本当ですね! 僕、初めてこの苗字で良かったって思いました。いつもは、東野のマネしてとかムチャぶりされるばかりで」

 お笑いの有名人の名前をあげて、大袈裟に頭を抱えてみせる。人は、人の弱みに弱い。

「わあ。それは大変ですね。私も、トリセツ歌ってって言われますよ」

 苗字が西野の有名な歌手の曲だ。彼女と苦笑を交わし、思わず笑い声が上がる。

 あ、おれ、声をあげて、笑ってる。

 知らない人の前で、笑い声を挙げられるとは思っていなかった。

「座りませんか?」

 末広たちは大いに盛り上がっているようで、こちらからでも酒を酌み交わしているのが見える。

 座席を指さすと、彼女は照れたように笑った。

「茶色いものばっかりで恥ずかしいですけど」

 確かに焼き鳥や牛すじなどのいわゆる酒のアテが並んでいる。

「ここの焼き鳥って美味しいですよね。僕はつくねが好きです」

「わかります。蓮根が入っててシャキシャキするんですよね」

 あれが蓮根だったとは知らなかった。席に座りながら、お料理が上手なんですねと言うと、彼女はまた照れたように笑った。

 宿題を褒めてもらった子供のような照れ顔だ。

 とても純朴そうで、すぐに人を信じてついていってしまうような、つけこめてしまいそうな、そんな照れ顔。

「東野さんは何か飲まれます?」

「あ、僕は大丈夫です。あまり飲み慣れてなくて」

 彼女が呼び止めてくれた店員さんに麦茶だけを頼み、自分の席に付けてもらう。

 彼女と話しながらも晃宏の頭の中では、今、切り出すべきか。いや、やっぱり今しかない。いやいや、早い早い。そんな禅問答が繰り返されていた。

「私もあんまり強くないんですが、お酒の香りが好きなんですよね」

「香り」

 晃宏にはよくわからないが、鼻を通るお酒の香りが喉とお腹を満たすのが好きらしい。

 あまり強くないと言いながら、彼女のお酒のピッチは案外に早い。柚酒だというそのロックグラスをもう空にしてしまった。

 もう一杯と頼んだ彼女の頬は色味を帯びてきている。ニコニコとしているのは笑い上戸なのだろうか。気の利いたことを言えずに麦茶に口を付けている間も、彼女は楽しそうに微笑んでいた。

「嬉しいなあ」

「え?」

 お酒の香りの隙間から漏れた彼女の言葉に、思わず聞き返した。

「あ、違うんです。あの」

 ハッとした彼女が手を横に振る。先ほど、末広に頭を下げていた凛とした姿は形を潜めているところを見ると、やはり、少し酔っているのだろう。

「ちょっと、変なこと聞くんですが」

 彼女がもう氷だけになっている柚酒のグラスに口をつける。

「通勤電車って有楽町線ですか?」

「え、ええ」

 晃宏ももう緩くなりそうな麦茶のコップをグッとつかんだ。

 彼女も、知っている──。

 晃宏が横に座っていることを、彼女も知っている。表情を気取られたくなくて、何気なくコップに口を付けて顔を隠した。

「朝7時半の」

「和光市ゆき」

 彼女の声に晃宏も応える。

「前から4両目」

「1番ドア」

「ドア横右側の座席の」

「一番端の席」

 彼女がほおっと息を吐いた。

 私たち、隣にすわってますね。

 彼女の表情は柚酒のグラスで見えなかったが、その声は囁くようだった。いたずらが見つかったかのような顔で彼女が微笑む。

 その微笑みが晃宏の最後の背中を押した。

 晃宏は麦茶を置くと、ゆっくりと頭を下げる。

「お願いがあります」

「へ?」

 彼女が気の抜けた声とともに、顔をあげる。

「あなたの隣で眠らせてください」

 彼女の目に一瞬でも嫌悪が浮かぶのを見たら終わりだと思った。

「僕は、慢性疲労症候群という、動けなくなるほどに体が怠くなる病気です」

 頭を下げたまま、彼女の顔を見ずに一気に畳みかける。

 倦怠感よりもひどい怠さが頻繁に怒ること。

 症状の一つに、熟睡感がなく、眠れないことがあること。

 彼女の隣では、なぜか眠れること。

 電車の中の時間のおかげで、最近は調子がいいこと。

「だから、もう少し、あなたの隣で僕を眠らせる時間を作ってくれませんか? 電車の中でいいんです。もちろん、お金はお支払いいたします。嫌でなければ、本当に、初めてお話ししたあなたにこんなことをお願いするのは、大変失礼なことと承知はしています。ただ、もし、少しでも、考えてくださるなら」

 ヤバイ、めまいが酷くなってきた。耳鳴りが奥でガンガンと鳴る。

 倒れちゃダメだと思う暇もなく、プツリと糸が切れるように、体が力を出すのを止めようとする。

 そのまま、頭を机につっぷしそうになったところを──。

「俺からもお願いします」

 助けてくれたのは、末広だった。末広に腕をつかまれて、すんでのところで額がぶつからずにすんだ。

 彼女の隣には、いつのまにかショートの女性──天宮も寄り添うように立っていた。

「あの……、ちょっと、突拍子もなさすぎて……」

 彼女が、どこか戸惑うように困った顔をしながらも、予備に置いてあったおしぼりを末広に手渡した。礼を言いながら、末広が受け取る。

「わかります。電車で隣で眠らせてくれ、真っ当な男が正気で頼むことではないですよね。その通りです」

 朦朧とする中で、末広の声が遠くに聞こえる。ぐわんぐわんと耳鳴りがして、水の中に放り込まれたみたいに酸素が足りていない気がする。

「こいつは、もう、正気でいられるほどの生活を送れていないんです。慢性疲労症候群は、すごくわかりやすくいうと、いつも熱を出している状態に近くてですね、常に体が怠いんだそうです。その怠さの波のピークがくると、それこそ起き上がれなくなる。東野はそこまでひどい症状ではありませんが、不眠症も併発していて、ずっとぐっすり眠れていませんでした」

 それが、あなたと会って、変わったんです。

 末広が力を込めて、プレゼンしている。その声が晃宏も励ます。

「少しの間、電車で隣に座る間。その間だけ、彼は眠れたと言っていました。彼にとっては革命なんです。あなたが、医者が出すどんな薬よりも、彼の助けになったんです。断ってもいい。あなたにも生活があります。いくらお金を払うとは言え、知らない人にこんなことを頼まれたら怖くもなります。ただ、少しだけ、ほんの少しだけ、考えてみていただけませんか?」

 末広が肝煎りの企画を通す時と同じ口調だ。

「末広さんが、とても東野さんを大事に思ってらっしゃることはわかりました」

 凛とした声が晃宏の耳の奥に届く。やっと、末広の腕に寄りかかってなくとも姿勢を保てるくらいにはなった。

「東野さんが辛い状況だということも、少しはわかったと思います。ですが、やはり即答はできません」

 堅く響いた言葉に晃宏の心臓もドクンと跳ねる。そうか。焦りすぎたか。

 せめて、日々の隣の席は。そう思って顔をむりやりあげると。

「だから、一度だけ試させてください」

「へ?」

 顔をあげた反動で、キンと鳴った耳鳴りに、思わず額を手で覆う。

「東野さんが変な意味で隣で眠りたいと仰ってないのは理解しました。ただ、そうでなくとも私の気持ちが追いつくかが、自分のことながらわからないので」

 一度試してみてから、判断させてください。

 彼女はもう一度、落ち着いた声と表情で、柚子のグラスを手に握りしめたまま、そう言った。

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