——乾いた破裂音が、三度響いた。
鮮血が、散る。
天狼の、翼の付け根。
そこから、赤い花が三輪、咲いていた。
* * *
【——
イヤコムから抑揚に欠けた
およそ狙撃銃には見えないシルバーのステッキをさっと振り、先端から滴る水滴をハンカチで拭った。
そうして豪奢な緋色の絨毯で微かに水面を揺らすグラスの水で口を潤してから、アライアス・ラヴリィは指示を続けた。
「搭載医療キットを用意。狙撃ログは量子暗号化のうえ、直ちに本国へ送信しておいてください」
【
視界にAIが提案する治療が示され、指示を仰ぐ沈黙が続いた。
遠視用の
静音性に優れた機体のエンジン音を聞くともなしに聞き、
「ようやく見つけました……
知らず、笑みがこぼれていた。
が、仕事はここからだという冷静な自分が、気を引き締めてくる。まずは王国へ戻らなければならない。
すべてはそれからだ。
* * *
——天狼が、西京国際空港に出現した。
一報を受けたとき、都内で新薬の共同開発セレモニーに出席していたアライアスは、だが慌てなかった。
よく訊かれることだが、天狼の対応は〈LCファーマ〉の
――が、慌てない代わりに心の舌打ちは堪えられなかった。
今日は、〈LCファーマ〉の受験生たちがラクリキアへ向かう日である。
時差の関係で全便が等しく飛び立つわけではないが、この三十六時間以内に各国から王家の紋章をまとった直行便が一斉に本国を目指す。
経費削減を金言よろしく唱える企業が跋扈する現代、求める人材かもわからない受験生たちのため、わざわざ無料の直行便を手配する〈LCファーマ〉の入社試験は良くも悪くも知名度が高い。
――が、アライアスの考えはシンプルだった。
つまり、合格倍率が極端に低いこの狭き門へ挑む受験生には、必ず社を背負って立つ人材がいる、といういわば確信だった。
「常に、新しい風を」
それが、アライアスの口癖だった。
だから余裕を持って組んであるフライトスケジュールを頭の中に呼び出すまでもなく、じき受験生たちを乗せた直行便が飛び立つ頃合いだと知るアライアスは、心で舌打ちをした。搭乗客リストを瞬時に脳内に列挙し、将来、会社を背負って立つ才能に迫る危機を実感する。
そうして気づけばセレモニーを中座し、一度も触れたことのない
数刻もしないうちにセレモニー会場の屋上から返答があり、着いてみれば優美な曲線を夏日にさらした、王家専用小型機の姿がヘリポートにあった。
そして結果的には、思わぬ収穫を得た。
それは、会社の将来は無論、