子や孫が引っ越しで置いていった動物を、高齢の父母や祖父母が飼いきれず手放す「飼育放棄」。
2020年に保健所入りした小型犬も、そんな事情の不幸な犬だった。
7月、とある小学校の敷地内に現れた犬。
体重2キロほどの小さな犬で、校庭の片隅で吠えもせずチョコンと座っていたという。
学校へ子供を迎えに行った人が「おいで」と声をかけるとついてきて、そのまま家まで一緒に来た賢い犬。
犬を保護した人はフェイスブックの迷子ページに投稿したり、チラシを街のあちそこちに張ったりした結果、すぐに飼い主の家族が迎えに来てくれた。
早い解決で良かったね
解決報告を見た人々はそう思った筈。
チラシ作成を代行した僕もそう思った。
でもその数日後、保健所サイトを見て アレッ? となった。
見覚えのある黒白小型犬が載っていたから。
せっかく家に帰れたのにまた脱走かと思い、飼い主の家族の連絡先を知る人に報告。
その人が電話すると「あれ? また逃がしたかな。確認してみます」と言ったそうだけど、保健所に飼い主やその家族が迎えに来ることはなかった。
実は、犬を逃がしたのは飼い主ではなく、飼い主が引っ越しの際に置いていった犬を世話していた祖母。
高齢で犬なんて飼う余裕はなくて、ネグレクト状態だったようだ。
「もう面倒みきれないから誰かにやって!」
そう言われて、犬はそのまま返還されずに「譲渡可」になった。
飼い主が譲渡会に出すなりチラシを貼るなりして、引っ越し前に里親募集をすればよかったのに。
この犬の引き取りを希望したのは、東京のボランティア。
もう何匹か数えきれないほどの猫がお世話になっている、YKさん。
犬は「石垣島之介」という仮名をもらい、東京での里親募集を開始した。
高齢でおじぃ感が漂っていたので、呼び名は「島爺」になったとか。
島爺はトイレのしつけなどはされてなかったそうで、そこらの床にしてしまう困ったワンコ。
YKさんは根気よくトイレトレーニングを続けた。
長い期間を経てもなかなかトイレが認識できない島爺は、それを承知で家族に迎えてくれる里親さんに譲渡された。
人と暮らす生き物の幸せは飼い主次第。
就職や進学で引っ越す予定がある人は、ペット可物件に転居しないと家族を不幸にしてしまう。
今回の件は犬だけでなく、世話できないものを押し付けられたおばぁも不幸だと思う。