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学校終わりにて 2

 ある日の放課後。


 一人教室を後にした涼香りょうかは昇降口へと向かう。


 いつもならすぐ隣に涼音すずねがいるのだが、今日も用事があると言われてしまい、一人で帰るのだった。


「今日も一人?」


 上履きを靴箱に入れた涼香は声のした方を向く。


「用事ですって」


 隣のクラスの菜々美ななみの質問に答えた涼香は大きなため息をつく。


「大丈夫?」

「親ってこんな気持ちなのかしらね……」


 神妙な雰囲気を醸し出した涼香を無視して、菜々美は靴を履き替えると足早にその場を去る。


「ちょっと待ちなさいよ」


 涼香は慌てて靴を履いて菜々美を追いかける。


「今日は菜々美も一人でしょう? 一緒に帰ろうではないの」


 涼香がいつも涼音と一緒に帰っているのと同じで、菜々美もいつもここねと帰っているのだが、ここねは今日部活があるため、帰宅部の菜々美は一人だったのだ。


「アルバイトよ。……分かったわよ」


 立ち止まった菜々美は肩をすくめると渋々頷く。


 涼香がやって来たのを確認すると菜々美は涼香に合わせて歩を進める。


「それで、涼音ちゃんに聞いたの?」

「聞いたわ、あれは反抗期ね」

「彼氏とかじゃなくて?」

「ええ、アルバイトでもなかったわ」

「それでなんで反抗期なの?」

「そのどれでもないからよ」


 フッと笑う涼香に、なに言ってんだこいつ、という目を向けた菜々美。涼香はそんな視線を受け流す。


「秘密らしいのよ」

「あー、そう……だから反抗期」


 納得したようなしてないような顔の菜々美は首を捻る。


「さっぱりわからない」


 納得できなかった。


「まだまだね」


 謎にドヤる涼香にイラっと来た菜々美はチクっと刺してみる。


「愛想突かされたんじゃないの?」

「そんな訳ないではないの」


 どうやら効かなかったようだ。


 その後、他愛ない話をしながら歩いていると、やがて駅が見えてきた。


 菜々美の後に続いて涼香が改札を通ろうとする――が。


「あら、ちょっ……待って」


 すんなりとポケットから交通系カードを取り出した菜々美に対して、涼香はポケットでカードがつっかえてしまい、なかなか通れない。幸いにも利用者はそれほど多くなく、他の利用者の迷惑にはならなかった。


 なんとか改札を通ることができた涼香はなに事もなかったかのように髪の毛を払う。


 菜々美は涼香を連れてホームに続く階段を上る。下りの電車も来るまでもう少し、菜々美は隣を歩く涼香に一応言ってみる。


「涼香、今日は間違えないでね」

「安心しなさい。間違えないわよ」

「ならよかった」


 菜々美の乗る予定の上りの電車はまだ来ない、涼香は間違えないと言っていたが念には念を。菜々美は下り方面で涼香と一緒に電車を待つことにしたのだった。

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