夜までの時間を潰すために、ショッピングモールにやってきた
「ほら見なさい。かまぼこよ」
涼香が赤いかまぼこを指さす。
「立派ですねえ」
涼音は感心したような声で返す。
「私はなにを見せられてるの?」
菜々美は律儀にツッコミを入れる。
「かまぼこだよ?」
ここねはそんな菜々美に、これはかまぼこだと教えていた。
「ここね……⁉」
菜々美は恐ろしいものを見たような表情を浮かべる。ここねはこっち側だと思っていたのに、なんなら涼音もこっち側だと思っていたのに。自分がおかしくなってしまったような気がする。
「カニカマよ⁉」
「これが……カニカマですか⁉」
なにやら訳の分からないやり取りをしている涼香と涼音にツッコむべきか、そんなことを考える。
「菜々美ちゃん?」
そんな菜々美の顔を上目づかいで見つめるここねが声をかける。
そんなここねがとても可愛く、今すぐにでも抱きしめたかったのだが、菜々美はここで抱きしめることができなかった。
「ど、どうしたの?」
「涼香ちゃんと涼音ちゃんが行っちゃうよ」
ここねが指さした方には、涼香と涼音が歩きながら魚を見ていたのだった。
先に進んでいる涼香と涼音はというと。
「ねえ涼音。後でパン屋さんに行きましょう」
「わあ、先輩が魚売り場で魚以外の話をしてる……」
適当な会話をしながら歩いているのだった。