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第16話

全て終わったと思い踵を返して雨芽あめを見る。電柱の影から白い手が雨芽を掴むと、傍にいた猫がそれに飛び掛った。雨芽の体の上に乗り、体中の毛を逆立てて威嚇し伸びてくる白い手に噛み付く。白い手は猫を振り回し何度も振り払う。そのたびに猫は噛み付いて威嚇を続けている。

雨芽は傍に落ちていたコンクリートの塊を持つと白い手に投げつけた。

『やめろよ、猫ちゃんがかわいそうだろ!』

喜治はそれを聞いて笑うと頷いた。

『そうだ、もっと言ってやれ。』

雨芽は威嚇する猫を上からかばうと白い手をにらみつけた。電柱の裏から白いのっぺりした顔がのぞきこむ。

『怖くなんかないぞ!なんだよ!』

手当たり次第に投げつけていたものがなくなって雨芽は視線を落とす。猫は威嚇をやめずに雨芽の膝の上でシャアシャア鳴いている。

喜治よしはるは傍に落ちていた壊れたビニール傘を掴むと、ブツブツ何か言い文字を書く。

それを雨芽の傍に転がすとにっこり笑っていった。

『雨芽ちゃん!そいつでぶったたけ!』

雨芽はすぐ傍に転がってきたビニール傘をひっつかみ、膝を立てて立ち上がると両手で傘を持ってフルスイングした。丁度白い何かの顔が電柱から出ており、傘の柄とクリティカルヒットする。ゴッ!という音と共に白い何かは電柱の前から傘が流れていく方向へ飛んでいった。

『ナイスショット!』

喜治の掛け声とともに白い何かは道路にべしゃっと落ちるとふにゃふにゃとしぼんで消えた。

ほっとしてゴホッと咳き込んで傘を落とし、その場に座り込む。雨芽の顔を心配そうに猫が見つめている。雨芽が撫でてやるとホッとしたのかゴロゴロと喉を鳴らした。

『もう、大丈夫でしょ。多分ね、あとは雨芽ちゃんの家かな?』

喜治の声に雨芽は顔を上げたが、電池が切れたようにその場に倒れこんだ。

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