金、青、そしてピンク……。カラフルな髪色が俺の目を楽しませてくれる。
現実離れしてんなぁ。だが、髪色以上に現実離れした光景が目の前に広がっていた。
「んっ……」
三人の裸の美少女が、ベッドで寝ている俺に絡みつくように身体を寄せているのだ。直に肌の感触を堪能し、心地の良い倦怠感を思い出す。
「ヤッちまったんだよなぁ……」
ついに白鳥と氷室の肉体を貪ってしまった。しかもエリカ含めて三人同時にいただいてしまったのだ。それを可能にした郷田晃生の竿の立派さに、今は尊敬の念に堪えない。
「晃生くん……後悔してる?」
俺の腕を抱きながら眠っていた白鳥が、呟きが聞こえたのか不安げに尋ねてくる。
「んなわけねえだろ。最高の女を抱いて後悔する男がいたらお目にかかりたいもんだ」
「ふふっ。そんなに良かったの?」
「最高だった。むしろ白鳥は初めてだったのに痛くなかったのか?」
白鳥は目をとろけさせながら、俺の腕を股でぎゅっと挟む。熱くて湿り気のあるそこに挟まれているだけで気持ち良かった。
「最初は少し痛かったけれど、不思議とすぐに気持ち良くなったわ。晃生くんが優しく気遣ってくれたおかげね。ここは……こんなにも凶悪なのにね♪」
白鳥の手の感触が俺の背筋をゾクゾクさせる。誘惑されているように思えて、少しだけ反応してしまった。
「自分の身体を労われよ。初めてだったんだ。今日はもうしねえぞ」
「それって、私の身体が慣れてきたらもっとたくさんしてくれるという意味?」
「……お前が望むならな」
「~~♪」
なんつーエロい顔しやがんだよ……。その表情だけで大抵の男が獣になっちまうぞ。終わったばかりだってのに、自分を抑えるのが大変になるだろうが。
「白鳥ちゃんも氷室ちゃんも、初めてだったのにすごく喜んでいたもんね。さすがは晃生くん、魔性の男だね」
俺の左側で眠っていたエリカが身体を起こす。彼女の表情はとても優しくて、少ししか歳が違わないはずなのに母性を感じさせた。
エリカの言葉に白鳥は恥ずかしがるどころか、幸せそうに小さく頷いた。
「はい。晃生くんが優しくしてくれたから……。おかげで私の胸の中にくすぶっていた感情が、彼への恋心だとはっきり証明されました」
「恋かぁ……。青春だね」
「エリカさんのおかげなんですよ? あなたが今日ここに来なければ、晃生くんは何かと理由をつけて私を抱いてくれなかったでしょうし、私も想いを伝える勇気が出ませんでした」
「そんなことないよ。白鳥ちゃんならきっとできたよ。だってこんなにも強い想いだったんだから」
「エリカさん……」
俺を間に挟んで先輩後輩のようなやり取りをするエリカと白鳥。なんだかくすぐったい気持ちになるのはなんなんだろうね?
「晃生~。好きぃ~……むにゃむにゃ」
「こいつはなんつーベタな寝言言ってんだか」
仰向けで寝ている俺に覆いかぶさっているのは氷室だった。肉布団……、布団代わりになっている彼女の体温が感じられて温かい。
俺の胸を枕にして眠る氷室はあどけない寝顔を見せていた。よほど寝心地が良いのか、白鳥とエリカが会話をしていても起きる気配がない。
「晃生くんはモテモテだね。氷室ちゃんも初めてだったのにあんなにもとろけていたんだもん。愛だねぇ」
エリカがくすくすと笑う。慈しむように氷室の頬を触っていた。妹みたいに思っているのかもしれない。
「白鳥ちゃんと氷室ちゃんにこんなにも好かれて。晃生くんって実は学校でモテモテだったりするのかな?」
「そんな物好きがいるわけ──」
「いませんよ」
俺が言い切るよりも早く、白鳥がきっぱりと否定した。
「晃生くん、学校じゃ恐れられていますから。誰も彼の良さに気づかないんです。だから、私たちくらい晃生くんの味方でいてあげないといけないんです」
ぎゅっと腕を抱きしめられる。それが言葉とは裏腹に、絶対に譲りたくないという意思に感じられた。
「そっかー。なら、協力して晃生くんを守ってあげないとね♪」
「はい。そのつもりです♪」
何か通じ合ったみたいに、エリカと白鳥は似たような笑顔になった。微笑ましいはずなのに、不安にも感じてしまうのはなぜだろうな。
「バカ。守るのは俺の役目だ。俺の女を、他の奴なんかに二度と傷つけさせるかよ」
行くところまで行ってしまったのだ。ここまで深い関係になった以上、守るくらいの責任は果たすつもりだ。
たとえ幼馴染が相手だとしても関係ねえ。俺の女を傷つけるのなら、容赦してやる義理はない。
「あ、晃生くん……っ」
白鳥は俺の肩に顔を押しつけた。何かを耐えるかのように、しばらく身震いしていた。
「こんなたくましい男に《守る》って言われて、何も感じない女はいないよね」
エリカも横になって俺の腕を抱きしめた。思った以上に強い力で、彼女の方を見つめてしまう。
「エリカも。何かあったら言えよ。お前も俺の女なんだからな」
「~~っ。……うん。あはっ、本当にたくましいんだから」
エリカも白鳥と同じように俺の肩に顔を押しつけて身震いした。俺はただ黙って彼女たちの感触を堪能する。
「ん~。晃生大好きぃ~。むにゃむにゃ……」
「氷室……。ったく、締まらねえなぁ」
気持ち良さそうに眠っている氷室を眺めていると力が抜けてくる。そのおかげで、この関係を案外あっさりと受け入れられているのかもしれない。
「ねえ晃生くん」
「なんだよ白鳥?」
「……白鳥じゃなくて、日葵って呼んで?」
甘えるような声音。思わず胸が震えるような感覚がした。
「というか、繋がっている時はそう呼んでくれたじゃない。羽彩ちゃんだって……。俺の女っていうなら、ちゃんとそう扱ってよ」
行為中のことを持ち出されて、気恥ずかしさが湧いてくる。頭をかきたかったが、今は両手とも塞がれていた。
「あはっ。晃生くんの負けだね」
「うるせー。勝ち負けじゃねえだろ」
エリカにからかわれて顔が熱くなる。照れている強面の男って誰得だよ。
別に行為が終わって冷静になったら、名前で呼ぶのが急に恥ずかしくなったわけではない。今までの癖が抜けていなかっただけだ。断じて照れて名前を呼べなかったわけではない。
「……日葵」
「~~っ」
小さく名前を呼んだだけで、日葵はなんとも緩み切った表情になってしまった。
日葵はしばらくニヤニヤした顔を抑えられなかったようだが、突然すっと表情を引き締めた。
「晃生くん」
「ん、今度はなんだよ日葵?」
「……晃生くん」
「日葵? だからどうしたって──」
「晃生くん」
ずっと俺の名前を呼び続ける日葵。そこで彼女が何を求めているのか勘づいた。
「……日葵」
「晃生くん♪」
「日葵ー♪」
「晃生くぅーん♪」
「あはは。バカップルご馳走様です」
互いの名前を呼び合うだけで楽しくなっていた。エリカに笑われても、俺と日葵は頭の悪いじゃれ合いを続けた。
とりとめのない、意味のないおしゃべり。そうやって幸せなじゃれ合いをしていた。
それに気づいたのか、俺の上で眠っていた氷室……、羽彩がむくりと身体を起こした。
薄暗い室内でも、彼女の美しい裸体が淡く光っているように見える。羽彩のことを愛おしいと思う日がくるだなんて、転生した時は思いもしなかったな。
「晃生……」
「羽彩、起こしちまったか?」
羽彩はあどけない顔で笑った。
「晃生の……おっきくなったぁ♪」
「あ、ちょっ……おまっ」
寝惚けた羽彩が覆い被さってくる。さらに連携しているかのように日葵とエリカに両側を抑えられたため、俺はろくな抵抗ができなかった。
まったく、仕方のない女どもだ……。俺たちの甘い夜は、もう少しだけ続くのであった。