「っ……た」
痛みに何とか耐えながら、隣に投げ飛ばされてる二人に声をかける。
(生きてるやんな? 呼吸は聞こえるし)
「さ、佐倉君! あの、彰太くんで合ってるんかな……二人とも大丈夫?」
「っ……いたたた、想……なんとか生きてる」
「……いってぇ……」
「そ、想は! 大丈夫?」
「なんとか……」
二人が俺の代わりに何度も殴られて庇ってくれてたし、そこら中痛いけど……大丈夫と伝えると佐倉君達は本当に安心した様子だった。
「よ、よかった……二人とも生きてて……それに、何とか動けそう?」
「……な、なんで、俺達庇った?」
「そ、そうだよ……俺達……想を騙して……ご、ごめんね」
「な、泣かんといてや~二人共……」
「だって……俺達守られる資格なんてない」
「……俺な、二人に生きて欲しかってん! やから、やから……あーよかったよぉ」
「うわぁぁん……ごめんね、想!」
「……すまない」
謝ってくれるボロボロの二人を思わず抱きしめ、俺達三人は泣き崩れた。
◇◇◇◇
もうしばらく泣いてたいけど、今がチャンスやし俺は涙を拭いて二人に話しかけた。
「あんな、あんな強気で叫んだけど……俺は連夜さんにとってそんな価値は無いと思うし、助けも来やんと思うねん! ……ちょっとは時間稼ぎ出来たけど、ここから逃げな!」
「ん、だいじょうぶ……きっと九条連夜も……夏目さんも来る」
「……どうだろうな」
期待はしていないけれど、とにかく痛む身体を起こして立ち上がる……幸い三人共、骨は逝ってないみたいやった。
(よかった……でも、ドアには鍵かかってるしどうしたらええんや? ……ピンチな状況は何も変わってない)
「どうして逃げようか……」
「あ、あのさ、次にドアが開いたとき俺が
「……それは嫌や!」
「無いな」
同時に返事をした俺らの言葉に佐倉君は驚いていた。
「いや、お前ら二人だけなら逃げれるから……」
「佐倉くん何言うてるん? そんなん嫌や! 三人で逃げるに決まってるやろ?」
「っ当たり前だ!」
自分を犠牲にしようとする佐倉くんに彰太くんも俺も怒る。
「っ……なんで、こんな俺に……優しくするんだよ?」
信じられないような顔をした佐倉くんは次の瞬間泣きそうな表情に変わる。
「なんでっ……て、佐倉君が大切やからに決まってるからやろ! 最近知り合ったとか関係ない、騙したんもきっと佐倉君なら理由があったんやろ? 俺の店で楽しそうにしてた佐倉君は、本心で楽しんでた佐倉君ちゃうん? 俺も皆も佐倉くんが大好きなんやで? やから、こんな俺とか……そんな風に言わんといてや」
「……ふえ~ん! 想……ごめんね……」
ワーワー泣き出した佐倉君を抱きしめて頭を撫でるけどなかなか泣きやんでくれへん。
何があったんかは分からへんけど、きっと一人で色々抱えてたんやろな……もっと早く気付けばこんな苦しい想いを佐倉君にさせへんかった。
置かれてる状況はめちゃくちゃ良くないけど、佐倉が泣いてるのを見て、いつも頑張ってたんだなって思うと……自然と俺の頬にも涙が伝う。
「ゴホンッ!……あのさ……」
「あ、ごめん……彰太忘れてた」
「あっ……」
「お前らさぁ~」
呆れている塩顔イケメンさんも、その目元は優しかった。
「あ……そういえば、夏目さんが何も言ってないて、さっき言ったけど、ちょっと思い出した事ある。何時やったか忘れたけど、佐倉君の匂いが大切な人に似てるってこぼしてた……」
さっきまで泣いてた佐倉君も少し笑顔になって、横にいてくれる。
「……あ、もしかして夏目さんと最初に会った日かな? 何とも言えない顔してた時だよね~たしかあの日……彰太に黙ってカーディガン借りてたんだよね」
「っ、おまえ、また勝手に!」
「ごめん、ごめん!」
「……もしかして……りょう」
「ふふふ、よかったね彰太」
「っ、別に!」
何処となくさっきより嬉しそうな顔をしていたので伝えてよかったと嬉しくなる。
「あの、彰太さんとの関係って……その苗字も同じみたいだし……」
「しょうでいいよ、連夜からもそう呼ばれてるし……えっと想? でよかったっけ?」
最初出会った雰囲気とは全く違って、笑うその顔はとても優しい好青年だった。
「じゃあしょう君って呼ぶ。おれは想で大丈夫。えっと、しょう君は連夜さんらと知り合いなん? 夏目さんとも……」
「あ、それ俺も聞きたかった~」
佐倉君も同じような疑問を感じてたらしい。
「ああ、連夜も亮もよく知ってるよ。もう隠しても仕方ないからな……」
そう言うと、しょう君は俺達に昔の話をし始めた。