「さっき翔と何話してた?」
「え、嫉妬?」
ちょっと聞き方間違えたか。首の動きだけで否定しながら立ち上がってカイの肩に手をかけた。
「カイ……」
不思議そうに俺の顔を見ている。
「燈二はお前しか見えてないから安心しろ」
「はぇっ⁉︎」
突然の言葉に困惑する燈二。
「わかってます。可愛すぎて心配なだけです」
「んぇえぇっ⁉︎」
ラブラブでいいね。と肩を叩くと元気よく、ありがと! と言われた。
「でもカイ?」
「はい?」
「なんですぐに引っ付く燈二じゃなくて、相手に怒るの?」
「あははっ、さっき翔くんにも同じこと言われた」
「え? カイくん怒ってるん?」
「ちがうちがう。不安すぎて相手の観察しちゃうの。それが睨んでるみたいになるっぽい」
なるほどね。ベタベタすんなって怒ってるんだと思ってた。意外と繊細なんだな、カイ。
「で、翔くんもそうだねー、いやちがうかー、みたいな話を」
「え? 結局どっちなの」
「翔くんは、セイ様は俺のだ! っていう威嚇で嫉妬じゃないって」
「それわかる! わかるわぁ!」
「でも俺は、嫉妬だと思うよ?」
ほう。気になるね。
「俺の方がセイ様のことわかってんだけどって顔されて、めっちゃムスッとしてたもん」
「……」
「ふふ、うれしい?」
「まぁ、うれしいよね」
カイは燈二の肩に手を回して自分の方に寄せながら話を続けた。
「燈二くんのおかげでよく笑ってるのが、気になるみたい。嫌なわけじゃないけど、モヤモヤするっぽい」
「えぇ⁉︎ それでさっき変やったんか?」
なるほど。それはそうかもしれない。
ごめん、燈二。とばっちりだね。
「自分ができないことだから、ムッとしてるんじゃない? 翔くんは」
「だから、セイに笑ってほしいんやな!」
さっき言われた、「笑えてない」「俺の前でも笑えよ」という言葉。
「なんでそんなつらそうに笑うん?」
「ふふ、なんでだろ?」
「その顔や! その顔が辛そうなんよ!」
「え?」
「余計なお世話かもしれないけど、両想いならもっと幸せそうな顔してあげてほしいな」
そんなに俺、不自然な笑顔なの?
両想い……かどうかはまだわからないし。
「んー、両想いじゃないかもだし?」
「気持ち伝えてるんやろ? かけるんだって満更でもない感じやない?」
そうなんだよね。満更でもない感じではある。
あー、なんだ、結局俺のせいか。
「俺が……怖いだけだ」
「ん?」
「俺のこと好きでも好きじゃなくても、普通に接してくれなくなるのが怖いだけ。何も言わなきゃよかったって、ときどき思っちゃうんだよね」
話しててやっとわかった。自分の気持ち。そっか。俺が弱虫だったんだ。アピールするとか言ったくせに、いざ気持ちが動きそうになると引っ込めて。逃げて。せっかくのチャンスも、俺が壊した。きっと翔は勇気を出して心を開いてくれていたのに。
「もー、いろいろうまくいかないなぁ……」
「落ち込んでるの珍しい」
ヨシヨシしてくれるカイもだいぶ珍しいよ。