なんだか翔からの視線がすごい気がする。
でも俺は翔から想いをちゃんと向けてもらうまで待つことにしたから。
あぁ、なにもしないってわけじゃないよ? 好きだよってアピールは欠かさないけど、お泊まりとかはね、ちょっと避けるかな。
満更でもないような顔しながら見つめられたら、止められる自信ないもん。
「俺の前でもちゃんと笑えよ」
え? 笑ってるよ。俺笑えてないの?
「おれのせい?」
「ちがうよ」
ちゃんと聞きたいのによくわかんないタイミングで寝てしまって、一人モヤモヤしている。
はっ! 「俺の前でも」⁉︎ 「でも」⁉︎
ちょっと待ってください。俺が深読みしすぎていなければこれは嫉妬なのでは……?
心当たりがある。燈二だ。
懐いてくれているのもあるけど、俺が話を聞いてもらって、開放的になれたというか。
「あれ? かけるん寝ちゃった?」
「うん、どうかした?」
「さっきリップ借りて」
「ああ、ここに置いておけば?」
リップを机の上に置いて、翔とは反対側の俺の隣に座った。
「なんか変やった……。いつも優しいのに、目も合わせんと」
「向こう行こう?」
隣で話してても起きないだろうけど、起きた時に燈二に翔の話をしているところを見られるのも聞かれるのも嫌だからな。
楽屋を出て、二人で飲み物を買った後ベンチに座った。
「なんかね、さっきお前笑えてないよって言われてさ」
「ん?セイが笑えてないって?」
「うん、俺笑ってるよね?」
「おん、いつも笑ってくれて嬉しいよ?」
ほら、俺ちゃんと笑ってるじゃん。でも気になることは一つある。「俺の前でも」という翔の発言。
「かけるんに言われたん?」
「うん、俺の前でも笑えよって」
「確かになぁ、かけるんの前やと素の笑顔やないかも」
「え?」
「ときどきな?つらそうに笑うんよ」
え、燈二が見てもそうなの?
「それ見て俺も、胸がきゅーってなる」
胸の前で両手を握って、きゅーっと丸くなる燈二。
可愛らしい。全身で感情を出してくれる感じが愛らしいよね。
「おっ? セイ今めっちゃ素敵な笑顔やった!」
そう言いながら両手の親指と人差し指で四角を作って、片目で覗き、写真を撮るような仕草をする。
「あははっ、燈二は元気にするの得意だね」
「せやろ? 特技やねん」
今度は腿の下に手を入れて、足をぷらぷらさせる。全ての動きが年齢に合ってなくて、幼く見える。
「あ、翔の様子が変って?」
「俺なんかしちゃったんかな?」
「あ、いた燈二。……と、セイ様」
あからさまに嫌そうな顔をしたカイが現れて、嫌そうに名前を呼ばれた。
ちなみに嫌そうな顔されても俺は嫌じゃない。だってこんなイケメンでいいやつが、恋人を取られるかもって嫉妬してるんでしょ?
俺を敵だと思っているわけじゃん? 俺が魅力的だってことだよね? 魅力ないなら取られる心配しないからね。
「ふふ、カイは何か知ってそうだね?」
さっき翔と話してたし、聞き出しちゃおっかな。
二人は何の話? とぽかんとしているけど、これはチャンスだよね。