カイと話してから、今までとはまた違った意識をしてしまって、たぶん変な態度を取っていたと思う。
一旦撮影が終わって、それぞれ休憩に入る。
「なんかあった?」
「いや?」
なんですぐ気づくんだよ。
他のみんなは誰も気にしてないじゃん。
「そう?」
気にしてなさそうな返事をしながら、きっと心配してくれている。
「ほんとに、なんでもないから心配しないで」
「ふふ、わかったよ」
あ、出た。笑ってるけど笑えてない。
ちょっと悲しそうな苦しそうな笑顔。
「……ふぅ」
俺のせいだ。
聖の気持ちに応える以外にこの笑顔が変わることはないんだろうな。
「かけるー、クリーム持ってる?」
「これならあるけど?」
「ちょっとだけ使わせて」
「いーよ。でも高いやつだから」
「んへへ、ありあと」
リヒトってカメラなくなるとめっちゃ滑舌緩くなるんだけど、なんなの? とかいいながら、自分もカメラないとキャラ変わるもんな。たぶんだけど。
変わらないのなんて、聖くらいだろ。
「ねーねー、セイ様ぁ〜? このクイズなんだけどさ、料理のがあってさ、」
「ん? あぁ、それはね」
と、何か説明を始めて全くわからなかったので、次の撮影に向けて肌の手入れを始めた。
「かけるん、リップ予備持ってない? それか指で塗るタイプのやつ〜」
「んー」
指で塗るタイプのがあったので差し出したけど、さっきのカイとの会話があって、燈二と目を合わせられなかった。
「んん? かけるんなんかあった?」
「なんで」
「なぁんか……いつもとちゃうような」
「とーじくーん?」
「呼ばれてんぞ」
「ん? あ、おん。これありがと!」
カイに助けられた。まぁ原因でもある。
いや、実際の原因は俺。結局俺なんだよなぁ。
「はあああ」
「ため息デカ。なに」
「あーもー。なんでもない」
ちょっと寝る! と言ってタオルを敷いて突っ伏した。するとみんなは少しだけ俺から距離を取ったけど、聖だけは気にせず隣にいた。
寝るとは言ったものの、考えすぎて頭がパンクしそう。ずっと回転してて眠れない。
聖は俺が寝てないこと、気づいてるんだろうな。
「あきら」
「やっぱ起きてた?」
俺も聖も体の位置も向きも変えずに小さな声で会話をする。
「俺の前でもちゃんと笑えよ」
「なに? 笑ってるよ」
「笑えてねーよ」
やべ、喋ってるのに眠くなってきた。
「やっぱり……さ、俺の……おれのせい、、、?」
「ちがうよ」
優しい声と共に暖かくなった。たぶん聖が毛布か上着かを掛けてくれたんだろう。
その心地よさで眠りに落ちてしまった。
◇
「翔くん〜? 起きて!」
「んぇっ? 何時」
「あと5分で休憩終わりだよ」
「おけ、さんきゅ」
それぞれ好きなことをして過ごしていたのか寝る前に見た光景と違う位置にメンバーが移動していた。起き上がると、バサっと布が落ちる音がした。
やっぱりさっき、聖の上着掛けてくれたんだ。おかげで安心して眠れた。
……ん? 安心?
「これ……」
落ち着く匂い。
「匂い嗅がないでよ、恥ずかしい」
「えっ⁉︎」
「匂ったらやじゃん」
「はぁ⁉︎ むしろ落ち着くんですけど」
はっ、やべ。寝起きでつい、思ったことそのまま言ったわ……
「なら……よかったけど?」
なんで照れんの、やめろよ。こっちはもっと恥ずかしくなる。
もーなに! この感じ! しんどいって! めっちゃ疲れる!