目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第20話 小野寺side

 俺は最近気になることがあって。

「翔くん」

 まぁ、燈二の距離感なんだけど。

「あれ、近くない?」

「だよな……うぇっ⁉︎」

 聖にべったりな燈二を見ていると、カイが俺の真横で同じ方向を見て険しい顔をしていた。

「前に睨んでたみたいで、俺。リヒトくんに怒られて」

「は? 睨むってセイ様を?」

「睨んでるつもりなくて、近いなぁって見てただけなんだよ?」

 俺も睨まれたことあるな。燈二が引っ付いてきた時。

「なんで燈二じゃなく相手に怒るわけ?」

「怒ってはない……けど、嫉妬する」

「燈二に言えよ。相手悪くないだろ」

「取られるかもって不安になるんだよね」

 てっきり、俺の燈二にベタベタ触るな! っていう睨みだと思ってた。

「みんなと仲良くするのは嫌じゃなくて、束縛とかもしたくないんだけど。頭の中俺でいっぱいにしたくて、もっと俺を好きになって欲しい」

「え、なんで俺にそれを言う?」

「いや、翔くんときどき、セイ様のことで俺と同じ感じがすることあって」

 は? 俺が愛重めな感じってこと? ないだろ、バカかよ。

「わかってもらえる気がして」

 不安そうな、自信なさげな顔をしてそんなことを言うから、俺は何も言えなくなった。

「でもやっぱりちょっと違うかも」

「は?」

「翔くんは、セイ様は俺のだぞっていう威嚇だもんね」

「何言ってんの?」

「二人はさ、何があっても離れない感じがあるって言うか……お互いがお互いの居場所みたいな」

「だから何言ってんの?」

「違った?」

 正直違ってはいないと思う。

 一番聖のことをわかってるのは俺だと思ってるし、俺以外が聖の隣にいるのは違和感があって。

 聖がいることで安心すると言うか、いないとバランスが取れないんだよ。俺の半分がないみたいな感じがして。

「お前と燈二の感情とは違うぞ」

「幼なじみだもんね」

 このカイの言葉に違和感を覚えた。

 幼なじみだもんね? 俺たちは幼なじみ?

 実は燈二はデビュー前に追加されたメンバーだった。別のグループがデビューする時、色が合わないという理由で燈二以外のメンバーでデビューしてしまった。その時支えていたのが聖でもあった。

「燈二が入ってきてから、セイ様なんか変わったんだよ」

「あー、前よりもちょっと、なんだろ? 柔らかくなった?」

 なんでわかった感じ出してんの?

「あはっ、ほら。それだよ翔くん。俺の方がわかってるんですけど? みたいな顔するじゃん」

「は? してねーし」

 とか言いながら、たぶんしたんだろうなと自分でもわかる。睨んじゃった気がする。

「殻を破ったと言うか、さ? よく笑うようになったなと思って、なんか……なんかさ」

「モヤモヤしてるの?」

 俺モヤモヤしてんの?

 俺以外の影響でよく笑うようになったからって?

「確かにそうかも」

「え? 素直」

「やべ、口に出てた」

「あはっ、黙っておくね」

 今だってほら、なんか笑ってるし。

 撮影の時だって声出して笑って、身体も動かして笑って、今までは静かに微笑んでることの方が多かったのに。

 俺の前だと苦しそうに笑うから、それもあって余計にモヤモヤする。

 俺の前でももっと楽しそうに幸せそうに笑って欲しい。でも、聖を笑えなくさせてるのは俺か。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?