俺は最近気になることがあって。
「翔くん」
まぁ、燈二の距離感なんだけど。
「あれ、近くない?」
「だよな……うぇっ⁉︎」
聖にべったりな燈二を見ていると、カイが俺の真横で同じ方向を見て険しい顔をしていた。
「前に睨んでたみたいで、俺。リヒトくんに怒られて」
「は? 睨むってセイ様を?」
「睨んでるつもりなくて、近いなぁって見てただけなんだよ?」
俺も睨まれたことあるな。燈二が引っ付いてきた時。
「なんで燈二じゃなく相手に怒るわけ?」
「怒ってはない……けど、嫉妬する」
「燈二に言えよ。相手悪くないだろ」
「取られるかもって不安になるんだよね」
てっきり、俺の燈二にベタベタ触るな! っていう睨みだと思ってた。
「みんなと仲良くするのは嫌じゃなくて、束縛とかもしたくないんだけど。頭の中俺でいっぱいにしたくて、もっと俺を好きになって欲しい」
「え、なんで俺にそれを言う?」
「いや、翔くんときどき、セイ様のことで俺と同じ感じがすることあって」
は? 俺が愛重めな感じってこと? ないだろ、バカかよ。
「わかってもらえる気がして」
不安そうな、自信なさげな顔をしてそんなことを言うから、俺は何も言えなくなった。
「でもやっぱりちょっと違うかも」
「は?」
「翔くんは、セイ様は俺のだぞっていう威嚇だもんね」
「何言ってんの?」
「二人はさ、何があっても離れない感じがあるって言うか……お互いがお互いの居場所みたいな」
「だから何言ってんの?」
「違った?」
正直違ってはいないと思う。
一番聖のことをわかってるのは俺だと思ってるし、俺以外が聖の隣にいるのは違和感があって。
聖がいることで安心すると言うか、いないとバランスが取れないんだよ。俺の半分がないみたいな感じがして。
「お前と燈二の感情とは違うぞ」
「幼なじみだもんね」
このカイの言葉に違和感を覚えた。
幼なじみだもんね? 俺たちは幼なじみ?
実は燈二はデビュー前に追加されたメンバーだった。別のグループがデビューする時、色が合わないという理由で燈二以外のメンバーでデビューしてしまった。その時支えていたのが聖でもあった。
「燈二が入ってきてから、セイ様なんか変わったんだよ」
「あー、前よりもちょっと、なんだろ? 柔らかくなった?」
なんでわかった感じ出してんの?
「あはっ、ほら。それだよ翔くん。俺の方がわかってるんですけど? みたいな顔するじゃん」
「は? してねーし」
とか言いながら、たぶんしたんだろうなと自分でもわかる。睨んじゃった気がする。
「殻を破ったと言うか、さ? よく笑うようになったなと思って、なんか……なんかさ」
「モヤモヤしてるの?」
俺モヤモヤしてんの?
俺以外の影響でよく笑うようになったからって?
「確かにそうかも」
「え? 素直」
「やべ、口に出てた」
「あはっ、黙っておくね」
今だってほら、なんか笑ってるし。
撮影の時だって声出して笑って、身体も動かして笑って、今までは静かに微笑んでることの方が多かったのに。
俺の前だと苦しそうに笑うから、それもあって余計にモヤモヤする。
俺の前でももっと楽しそうに幸せそうに笑って欲しい。でも、聖を笑えなくさせてるのは俺か。