カーテンの隙間から光が差し込んでいる。ベッドの上で手をまっすぐに伸ばす。手のひらを窓側に向けた。
太陽の光が温かかった。額に手のひらを上に乗せる。
今ここにいる自分は本物か。
翔太はふとんをばさっとよけた。
ベッドの下の方で、猫のようにくるまっている星矢を見た。
星矢に翔太の上下の長袖シャツを貸した。サイズがぶかぶかになっていた。
頭を洗うように手を動かしている。
「星矢! 何してるんだよ」
「……むにゃむにゃ」
本当に猫みたいだ。体がくるっとくるまってうつ伏せで寝ている。まだ目を覚ましていない。ため息を一つこぼして、太陽が差し込むカーテンを開いた。
その眩しさに耐えきれず、星矢が目を覚ました。
「うわ、眩しい!!」
「起きたか?」
「え?」
「……」
「ん?」
「忘れたとかありえないんだけど?」
「嘘。嘘。ここ、どこですか?!」
記憶喪失になったようだ。星矢は、まだ状況を把握していない。お酒を飲みすぎていたようだ。
翔太は昨日の出来事を事細かに説明が入る。まさか、夢のようだと、耳まで真っ赤に染めて、両手で顔を隠した。
「それで?」
「???」
「どこまで?」
「何が?」
「内緒」
ニヤニヤと笑ってごまかす翔太。ーーー遡ること6時間前。アルバムを眺めたあと、自然の流れで翔太の家のお風呂にそれぞれ入った。ソファでくつろいで、深夜に放送されるお笑い番組を一緒に見た。お互いに笑い合いながら、
缶ビールを飲んでいた。
「このコンビ、好きなんですよ」
と言いながら、突然に訪れる睡魔に星矢はソファにもたれかかり、眠りについた。翔太は、眠くなったのかと、クローゼットの中から予備の毛布を持ってこようとしたが、考え直して、自分のベッドに運ぼうと、お姫さま抱っこで星矢を静かに連れて行った。
ふわっと浮かんだが、心地よく、目を覚ますことはなかった。すやすやと寝息を立てて、ぐっすり眠っている。
星矢に体に毛布をかけて、しばらくの間、天使のような寝顔を見つめていた。
高校の時と比べて、メンズサロンにでも行ったのか、ひげが生えていない。肌艶も良かった。前よりも白い肌になっている。
翔太は星矢の女の子みたいな顔に頬を少し赤らめて、そっと頬に口付けた。
薄暗い寝室で本棚の上に飾られた写真立てをパタンと倒した。
翔太と誰かが映ったツーショットだった。
翔太は電気を消して、星矢の眠る隣のベッドにそっと近寄って静かに眠りについた。まさか一緒に眠ることになるとは夢にも思わず、隣にいるだけで幸せだった。月明かりが窓から部屋の中を照らしていた。