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第34話 太陽の光と月明かり

カーテンの隙間から光が差し込んでいる。ベッドの上で手をまっすぐに伸ばす。手のひらを窓側に向けた。


太陽の光が温かかった。額に手のひらを上に乗せる。

今ここにいる自分は本物か。

翔太はふとんをばさっとよけた。


ベッドの下の方で、猫のようにくるまっている星矢を見た。

星矢に翔太の上下の長袖シャツを貸した。サイズがぶかぶかになっていた。

頭を洗うように手を動かしている。



「星矢! 何してるんだよ」


「……むにゃむにゃ」



 本当に猫みたいだ。体がくるっとくるまってうつ伏せで寝ている。まだ目を覚ましていない。ため息を一つこぼして、太陽が差し込むカーテンを開いた。

 その眩しさに耐えきれず、星矢が目を覚ました。


「うわ、眩しい!!」


「起きたか?」


「え?」


「……」


「ん?」


「忘れたとかありえないんだけど?」


「嘘。嘘。ここ、どこですか?!」


記憶喪失になったようだ。星矢は、まだ状況を把握していない。お酒を飲みすぎていたようだ。

翔太は昨日の出来事を事細かに説明が入る。まさか、夢のようだと、耳まで真っ赤に染めて、両手で顔を隠した。


「それで?」


「???」


「どこまで?」


「何が?」


「内緒」


ニヤニヤと笑ってごまかす翔太。ーーー遡ること6時間前。アルバムを眺めたあと、自然の流れで翔太の家のお風呂にそれぞれ入った。ソファでくつろいで、深夜に放送されるお笑い番組を一緒に見た。お互いに笑い合いながら、

缶ビールを飲んでいた。


「このコンビ、好きなんですよ」


と言いながら、突然に訪れる睡魔に星矢はソファにもたれかかり、眠りについた。翔太は、眠くなったのかと、クローゼットの中から予備の毛布を持ってこようとしたが、考え直して、自分のベッドに運ぼうと、お姫さま抱っこで星矢を静かに連れて行った。


ふわっと浮かんだが、心地よく、目を覚ますことはなかった。すやすやと寝息を立てて、ぐっすり眠っている。


星矢に体に毛布をかけて、しばらくの間、天使のような寝顔を見つめていた。

高校の時と比べて、メンズサロンにでも行ったのか、ひげが生えていない。肌艶も良かった。前よりも白い肌になっている。



翔太は星矢の女の子みたいな顔に頬を少し赤らめて、そっと頬に口付けた。

薄暗い寝室で本棚の上に飾られた写真立てをパタンと倒した。

翔太と誰かが映ったツーショットだった。



翔太は電気を消して、星矢の眠る隣のベッドにそっと近寄って静かに眠りについた。まさか一緒に眠ることになるとは夢にも思わず、隣にいるだけで幸せだった。月明かりが窓から部屋の中を照らしていた。


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