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第53話 カフェのひととき

「ごめんな、この間、風邪引いてさ。助けてくれたのに、全然お礼してなかったよな。今日はおごらせて」


生クリームたっぷりのカフェに並んでいた。

自由の女神が目印の有名な大手チェーン店だ。

昼時もあって、行列ができていた。


今はメロンフラペチーノが季節のメニューとして出ていた。


「そんな、具合悪くなったら助けるのがでしょう」


「あ、うん。……そうだな。友達だもんな。俺ら。高校からの付き合いだし、長いもんな。いや、でもおごりたいから遠慮なく、注文して」


「え、んじゃ、このスノーブロッサム頼んで良いかな」


「ん? いきなり、軌道修正するんだな。びっくりだけど、まぁいいや」


「だって、颯人がそういうからお言葉に甘えちゃおかなって」


「ああ、わかったよ。これな、スノーブロッサム? さくら アリュールとカカオジュース、

碁石茶が入ってるらしいよ。甘酒平気なの?」


「お酒はたしなむ程度なら平気だよ」


「つまりは期間限定に弱いんだろ、星矢は」


「あ、バレた。そういうことだよ。颯人はメロンフラペチーノでしょう」


「当たり前。季節のフラペチーノは飲みまくってるから。桜の味のも美味しかったな」


 まるでデートしてるみたいに横にならんで、やっとこそ、レジの前に着いた。髪の長いカフェ店員さんが、緑のエプロンをつけて、笑顔で対応した。まつげが長くて、猫のように目が大きい人だった。


(この子……颯人のタイプの人かな)


 星矢は変な妄想する。可愛い子は大抵颯人が好きだったりするのかなとジロジロと颯人の目を見るが、全然そんな素ぶりを見せない。眼中に無いようだ。



「星矢、注文終わったぞ。あそこのオレンジのランプで待っててくださいってさ。クッキーも頼んでたぞ」


「あ、本当? 気が利くね。お嫁さんみたい」


「よ、嫁? 俺男だし」


「いやいや、女子力高いって言わない? 男子でも。僕なんて、高校の時の先輩に裁縫セットや絆創膏持っているだけで女子力高いって

先輩女子に言われたんだよ」


「へぇー、そうなんだ。確かに星矢はごっつい男子って感じしないもんな。華奢だし、肌白いしな」


颯人は少し頬を赤らめて、星矢を見る。


「え? 颯人、熱でもある? 大丈夫?」


 星矢は颯人の額を手のひらで測った。

 平熱だった。颯人は星矢の手を振り払った。


「大丈夫だって。そんな風邪引いたばかりですぐ引くかよ」


「あ、確かにそうだね。でも、頬赤かったから」


「勘違いだよ」


 颯人は自分の気持ちを悟られないようにとごまかした。


「お待たせしました。メロンフラペチーノとスノーブロッサムの方!」


「はい!」


 颯人は慌てて、商品を取りに行く。こんなにメロンが入った飲み物があう人はいないだろう。星矢は、クスッと颯人を笑った。


「何、笑っているんだよ」


「ううん。何でもないよ。これ、どんな味するんだろう。あー、春な感じだ。季節を感じるね」


「へー。俺は、メロンでメロンメロンだ」


「え? 颯人からそういうの出てくるとは

思わなかった」


「え、いうよ? たまにはね」


 星矢はまたクスッと笑う。今度はどこかバカにしたような笑いに颯人はイラッとした。


 そんな他愛もない話で星矢は楽しかった。しばらく、同僚以外の友人には会っていたため、新鮮な気持ちだった。



 ざわざわとカフェではお客さんが混んできた。星矢と颯人はカフェの端っこで近況報告しながら、まったりと過ごすことにした。


 なんでもない会話がとても充実した時間だった。


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