「星矢くん、ごめんね。付き合わせて……」
星矢は翔子と翔子の子どもたちとともに多摩南大沢アウトレットモールに買い物に来ていた。
大きなワゴンの車を運転する翔子の助手席に星矢が乗り、後ろの座席にチャイルドシートに1歳半の
「いえ、大丈夫ですよ。たまには外出しなきゃと思っていたんで……」
「そお? こちらとしては男手があるとすごく助かるわけよ。本当にありがとう。買い物すごくあるからよろしくね。私の服と子どもたちの服を見つけに行くから」
「はい。お任せください」
行く前は思いっきり元気にガッツポーズしていたが、数時間後の後半になるとあまりにも多い荷物に休憩できるソファの上でぐったりだった。
両手にお店の紙袋がびっしりあった。1歳半の望彩も、ベビーカー越しにいろんなところ見せられて、良い刺激になったのかいびきをかいて爆睡していた。奏多はスマホをいじって、カラフルなパズルを揃えるゲームにハマっていた。
「星矢さん。大変ですよね」
「へ?」
星矢は急に大人びた会話をする奏多にびっくりした。
「買い物、お母さん。長いんですよ。僕たちは慣れているんで、こうやって
ゲームで気分紛らわしてますけど、お父さんは耐えられなかったですね」
「え、あ、そうなの? まぁ、女性は買い物にこだわりあるもんね」
「いや、お父さんもファッションにはうるさいので、僕ら迷子になるんですよ。あっち行って、こっち行って……」
「あーー、学校の先生だもんね」
「え?知ってるんですか? 僕たちのお父さん」
「高校の時に部活動でお世話になったからね。君たちのお父さんに」
「あー、はい。そうなんです。先生してるので、変な格好で歩けないだろって……。喧嘩が頻発してました」
奏多はスマホをいじりながら、ため息をつく。
「お母さんも折れないから……困りますよ」
「大変だね。お疲れ様だよ」
「星矢さんって、まさか、お母さんの彼氏じゃないですよね? お父さん候補?」
「いやいやいや、違う違う。大丈夫、お父さんにはならないから」
「えーーー、僕は歓迎しますよ。こんな買い物に付き合えるなんて……長すぎますよね」
「確かに……」
ぐったりとうなだれる星矢によしよしと肩を撫でる奏多。小学生に撫でられるとはと思ってもみない状態に信じられなかった。どうして、ここにいるのだろう。
「お待たせーーー。やっと終わったよ。お腹すいたよね。そろそろ、お昼にする? あ、望彩のご飯も。寝てるからいいか?」
結構、適当の翔子だった。星矢は、それでいいのかと疑問符を浮かべながら、言う通りに行動する。
「お母さん、マックのハッピーセットがいい。今、カービィのグッズもらえるんだよ」
「あ、そうなんだ。星矢くん、マック好き?」
「あ、はい。僕はもっぱら、テリヤキバーガーです」
「私はエビフィレオバーガーなんだ。んじゃ、行こうか」
翔子は、ぐっすり寝ている望彩が乗ったベビーカーをそっと動かした。
星矢は両手を合わせて、6つの紙袋を持って歩き始めた。
「車のトランクに入れてきます?」
「あ、んじゃ、お願いしようかな」
翔子は荷物持ちに星矢を抜擢した理由は後輩だという関係性だ。車の鍵を渡して、フードコートに向かっていた。ほぼ、これは家族になったみたいに行動している。
(これ、誰かに見られたら、絶対夫婦って勘違いされるんじゃないか?)
星矢は大丈夫かと想像しながら、駐車場に荷物を運んだ。その星矢の一部始終を遠くから見ていたのは、背の高い男性だった。
星矢は車のトランクをしめて、移動をしようとしたら、聞き覚えのある声がした。