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第4話森の囁き

レオンは腰の短剣をしっかりと握り、エルシアの森に足を踏み入れた。朝霧が古木の間を流れ、日光を細かな金箔のように切り裂いていた。彼は胸に付けた神秘的なメダルをこすると、冷たい感触が、昨夜の老祭師の警告を思い起こさせた。「メダルが血のように光るとき、暗闇がやってくる。」​

腐った落ち葉が湿った音を立てながら砕ける。突然、レオンの瞳が縮んだ。何本もの百年の古木の幹に、メダルと同じとうげ模様が浮かび上がっていた。彼が近づいて観察しようとすると、後ろで枝葉が折れる音が響いた。​

「人間よ、禁断の森に侵入する代償は、お前に払えるだろうか?」 銀鈴のような声に冷たい殺気が纏わっていた。レオンは素早く振り返り剣を振り上げたが、緑色の光が彼の頬を擦り抜け、後ろの木に突き刺さった。それは青い水晶がついた矢で、羽根が空に青い軌跡を残した。​

月の光が雲間から差し込んだ瞬間、レオンは来た者の姿を見た。銀髪の少女が枝に裸足で立っており、ツタで編まれた鎧が細やかな身体にフィットしていた。腰に懸けた獣骨の角笛が不思議な光を放っていた。彼女の指先にまとわりついた緑色の魔法陣は、周りのツタを鋭利な刃に変えていた。​

「わざと犯すつもりはありません。」 レオンは両手を上げ、胸のメダルを見せた。「このマークの正体を探しているんです。」 少女の瞳が震え、ツタの刃が急に消えた。彼女が枝から降りたとき、レオンは彼女の足首にあるとうげの焼き印に気づいた。それはメダルの模様とまったく同じだった。​

「こっちに来なさい。」 少女は振り返って密林に消えた。レオンは一瞬ためらった後、従った。蛍光を放つキノコが生い茂る渓谷を抜けると、生きた木で建てられた木の家が現れた。部屋内には何百もの水晶が浮かんでおり、森の奥深くの様子を映し出していた。ある影が光る樹の核を噛み砕いており、それぞれの核を食べるたびに、暗闇が広がっていった。​

「私は森の守護者、エルザです。」 少女は銀色に輝く露を一杯入れたグラスを差し出した。「それらを『光喰らい』と呼ぶ怪物たちは、世界のバランスを維持する『世界樹の苗』を破壊しているのです。そしてあなたのメダルは......」 彼女の指先がレオンの胸をなぞり、とうげの模様が突然血のように光り出した。「封印を解く鍵なのです。」​

窓の外から、歯がガクガクするような音が響き渡り、無数の影が地面から現れた。エルザは獣骨の角笛を吹き、森全体のツタが狂ったように生い茂り始めた。レオンは短剣を強く握り、メダルから伝わる熱が血管を流れる。彼はようやく気づいた。この異世界での旅は、まだ始まったばかりなのだ。

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