夕凪
BL現代BL
2025年03月12日
公開日
5万字
連載中
歌を歌うこと大好きな『ノウ』は毎日歌って過ごしていた。
そんな『ノウ』を誰もが馬鹿にしていたが、ある日工場の日雇いの帰りにいつのもように河原で歌っていると、琉斗と名乗る青年に声をかけられる。
琉斗はなぜか、『ノウ』にとても親切で、『ノウ』が好きなように歌える環境を作ると言って、『ノウ』を保護してくれる。
琉斗と一緒に暮らし始めた『ノウ』は、琉斗に勧められるがままにライブハウスで歌うようになるが、同時に「琉斗はミリオンシンガーを自分の手で排出する、その過程を楽しんでいるだけ」だとスタジオで耳にすることになる。
やがて『ノウ』はとある事件に巻き込まれ、それが原因で琉斗と喧嘩別れした足で河原へと向かい、そこで歌おうとしたが、足を滑らせて川で溺れてしまう。
そして目を開けると、目の前には金髪碧眼の琉斗が居て、なぜか場所が河原から森の中の火事の現場に移っていた。
金髪の琉斗は『ノウ』を『雑音』と呼び、『ノウ』は歌うことはおろか、声を出すことすら禁じられてしまう。
不可思議な世界で『ノウ』は魔女狩りの裁判にかけられ、断首刑となっていのちを落とすが、次に目を開けたときには、最初に金髪の琉斗を見たあの火事の森の場面に時間が巻き戻っていた。
幾度も幾度も自分の死を味わい、その度に火事の夜に戻る経験を繰り返すうちに、『ノウ』は自身と琉斗の前世のつながりを知ることとなる。
異世界転移?転生?×タイムリープ
明るい話ではないですが、ハピエン目指して書いていきます。
良かったらお付き合いください。
(こちらの作品は他サイト様にも掲載していたものを加筆修正して続きを書き足していく形となります)
1-1
あ、と声帯を震わせて声を出す。
あ、あ、あ。
ときに高く、ときに低く、ときに伸びやかに、ときにひそやかに。
声は次第にリズムを刻みだす。
でたらめなメロディを口ずさむうちに、言葉が降ってくる。
思いつくままに、歌う、唄う、謡う。
声は空気に溶け、光に溶け、大地に溶けてゆく。
途方もない解放感。
この瞬間が一番、好きだった。