今日は一年の始まりの元旦。友人と二人で初詣に行った。俺はくじを引いたら大吉だった。
「やったー!」
と喜んだ。嬉しい。
俺の名前は
一月四日、仕事が終わって俺は寮の玄関で煙草を吸っていた。そこに会社の同僚の
仕事が終わって、かずは俺に話しかけてきた。
「明日の夕食、キャンセルして何か美味しいもの食べに行きませんか?」
彼は笑みを浮かべながら言った。
「おお! たまにはいいかもな。何か食いに行くか。じゃあ、今、事務所に行って明日に夕食断ってくるわ。一緒に行くだろ?」
「ええ、行きますよ」
そうと決まったのでかずと一緒に事務所に行った。事務員がいたので俺とかずは伝えた。事務員は二十代後半のお姉さんでスタイルもよく、綺麗な顔立ちをしている。いい女だ、と思っていたが婚約者がいるらしい。寿退社するらしい。残念。事務員は、
「わかったよ、二人分キャンセルしておくね」
「よろしくね」
そう言って事務所を出た。
それにしても、今更になるが、短期大学を大学を卒業して肉体労働をするとは思わなかった。でも、先日、工場長から言われたことがある。それは何かと言うと、
「工場から、事務の仕事をしてくれ」
そう言われた。俺は思った。こんな汚い仕事から外れられる、と。しかも、給料もアップするらしい。でも、残念なのはかずと一緒に仕事ができなくなること。まあ、仕事が終われば話せるけれど。
俺は黙々と仕事をするのが嫌だ。息が詰まる。もしかしたら、事務所で働くようになったら私語は禁止なのだろうか?
一応、訊いておこう。
今は夕食時。寮のみんなと工場長で食べた。工場長はこの事務所から一時間半くらい離れたところから通勤しているらしい。帰って食べるとなると遅くなるから、寮でご飯を食べてから帰る、そういう事情らしい。ご飯を食べながら俺は質問した。
「工場長、事務所で働くようになったら私語は禁止ですか?」
彼は、そのことについて考えているようだ。そして、こう答えた。
「仕事の話し以外は基本的に禁止だ。それはどこの会社も同じだろう。でも、少しくらいの雑談はいいぞ。ずっと、黙って働くのも苦しいだろ」
「そうですね」
なるほど、少しくらいならいいのか。
翌日、俺はかずに寮で話しかけた。
「めし、食いにいくんだろ。何食う? 俺はラーメンがいいな。味噌ラーメン」
「おれは回転寿司に行きたい」
それを聞いて、なるほど、それもいいなぁ、と思った。
俺は、
「じゃあ、ラーメンは今度にして、回転寿司に行くか」
と言うと、かずは、
「うん、おれはこの前から寿司食いたくてね」
そうなのか、と思い、俺はこう言った。
「なんだ、そうなのか。ならもっと早く言えよ。我慢することないぞ」
彼は笑みを浮かべながら言った。
「そうだったのか。そう言ってくれるとは思わなかったから様子を窺っていたんだ」
何だ、そんなことか、と思ったので、
「遠慮しなくていいんだぞ。言いたいことがあったら言え」
俺がそう言うとかずは、
「ありがとう」
とお礼を言った。
仕事を午後五時で終え、すぐに入浴しに行った。あとからかずも来た。
「早いね」
「うん、腹減っているからな」
「だよね、おれも同じ」
とかずは言った。
風呂から上がって寒いので青いセーターとジーンズを履き、黒いロングコートを羽織った。因みに今は一月だ。俺は、かずの部屋に行ってノックした。
「はい、大坂さん?」
部屋の中から声が聴こえた。
「ああ、そうだ。開けるぞ?」
ガチャリと鍵を開ける音が聴こえた。
「用意出来たか?」
部屋の中を見ると、テレビがついていた。
「今、着替えるところ」
かずは、厚めのロングTシャツを着て、ベージュのチノパンを履いた。そして、青いダウンジャケットを羽織った。かずは、
「おれが誘ったから、おれの車で行こう」
と言った。
彼の車は赤いスポーツカー。マフラーも改造してあってヤンキーが乗るような車。かずはヤンキーではないが。でも、何度か殴り合いの喧嘩をしたことがある。喧嘩両成敗と言って、お互いがその都度悪い。それをわかっているから今でも仲のよい関係が続いている。たまに、今回のように一緒に食事に行ったり、カラオケに行ったり、居酒屋で呑みながら語ったり。困ったことがあると助けあったり。親友と言っていいだろう。
市街地まで三十分くらいかっ飛ばした。さすが、スポーツカー。速い。だが、スピードを出し過ぎたからか、パトカーがサイレンを鳴らし、赤色灯が回り、凄い勢いで追いかけて来た。
「前の車停まって下さい」
かずは路肩に停車した。パトカーから警察官が二人出て来た。彼らは穏やかに話しかけてきた。かずは反発した。
「そんなに飛ばしてないよ!」
俺は黙っていた。俺の場合、以前反抗的な態度で接したら逆に怒られてしまい、今より若かった俺は暴れて逮捕されたことがある。その時、少年院に入れられてしまい大変な思いをしたことがある。だから、今回は何も言わなかった。同じことを繰り返したくないから。
結局、警察官に丸め込まれてしまい、点数を引かれたのと罰金を請求された。警察官から紙を受取り、警察署に出頭して罰金を払って欲しいと言われた。
「畜生!」
とかずは悔しがっている。でも、こんなに感情を露わにしたのは初めて見た。なので、怒りを少しでも静めるために俺は言った。「罰金は半分俺も出すよ」
すると、急に笑みを浮かべ、
「ほんとに!? でも悪いなぁ、おれの運転のせいで捕まったのに」
そう言うと俺は、
「いや、速度を下げるように言わなかったしな、俺も」
かずは、
「大坂さんは優しいな、ありがたいよ。じゃあ、お言葉に甘えて半分払ってもらうよ。ありがとう」
警察官は、
「気を付けて帰ってね」
と穏やかな言い方で声をかけてくれた。
俺はかずに言った。
「寿司食ってテンション上げようぜ! 暗いぞ」
彼は小声で、
「罰金がねえ……」
俺の言っていること聞いているのか? 折半だって言ってるのに。俺は黙っていると、かずは言った。
「あ。そうか。大坂さんは半分出してくれるんだもんね。なら元気ださなきゃ」
「そうだぞ」
俺は、
「よし、回転寿司に行くぞ!」
「うん!」
少し街中を走って国道沿いにある回転寿司に着いた。俺は言った。「よし! たくさん食うぞ!」 かずも、「おれもたくさん食う!」「その意気だ!」 俺の励ましは通用したようだ。よかった。これで、全額負担させてたら回転寿司は行けなかったかもしれない。
店内は混んでいた。でも、座る場所はある。俺は、
「旨そう!」
と叫んだ。
「俺はサーモン食べる!」
「ああ、いいね。サーモン! おれも食うかな」
かずは職人に言った。
「サーモンお願いします!」
職人は、「はい、ありがとうございます!」
他のお客さんも同じことを言った。かずは、
「おれの方が先に言ったんだから、おれが先に食う」
かずはお客さんに向かって言った。その人は黙って違う方に目線を向けていた。かずは続け様に、
「ちょっと、そこのおじさん。おれの話し聞いてる?」
おじさんは気まずそうにじっと反対側を向いている。かずは、「まあ、いいや。おじさん、おれが先だからね」
おじさんは、ふんっと鼻を鳴らした。俺は二人のやり取りを見て笑っている。すると、
「大坂さん、何笑っているの?」
俺は、
「いや、そんなちっちゃなことで揉めてると思って」
かずは、「そんな言い方ないでしょ。ちっちゃなことって。順番は守るべきだよ」
「まあ、確かにそうだな」
かずはおじさんの方を見て、
「おじさん、今の話し聞いてたでしょ。順番は大事だよ」
「わかったよ! うるさいな!」
おじさんはとうとうキレた。
この人がキレても屁でもない。順番は順番だ。守ってもらう。そして、サーモンが二皿並んで流れてきた。店主は言った。
「二皿流したから揉めないで下さいよ」
そうか、最初から二皿流してと店主に頼めばよかったんだ。俺はそう思った。俺はいろんな寿司を取って食べている。タコ、イカ、いくら、卵、かずのこと様々なものを腹いっぱい食べた。一つのネタに固執するより、量をたくさん食べて腹いっぱいにした方がいいと、俺は考える。
回転寿司に一時間はいるだろうか。俺は、
「ふー、食った食った」
満足している。かずはこだわって選びながらゆっくり食べているようで、まだ食べ続けている。かずは俺に、
「もう食べ終わったの」
と訊いた。
「たらふく食ったよ」
そう言うと、
「いいなぁ、おれは選んで食ってるせいかまだ、腹膨れない」
かずは俺のことを羨ましがっている。なので、
「まあ、ゆっくり食えよ」
「うん、ありがとう」
それから更に三十分くらい経ち、
「おれもようやく腹いっぱいになった。待たせて悪いね」
「いや、いいぞ」
そう言うと、
「大坂さんはやさしいよね、女性にも優しいんでしょ?」
俺は笑ってしまった。
「優しいか? 普通だろ」
かずは、
「いや、結構待たせてしまったけど、怒らないじゃん」
俺はまた笑った。
「それくらいで怒らんて」
「そうなのか、大人だね」
かずに褒められてばかりだ。悪い気はしないけれど。
「かずは女性といてもゆっくり食べているのか?」
「あ、うん。そうだね。ゆっくりだわ」
女性を待たせてしまうことはあるのだろうか? 訊いてみると、「まあ、そういう時もあるわ。それでもペースは崩さず食べるけどね」
マイペースだな、と思った。さすが、かず。物怖じしない性格だ。
かずは食べ終えて店を出ることにした。お互い会計を終えてから。 今度は何を食べに行くかな。ラーメンにするかな。それをかずに伝えた。すると、
「ラーメン! いいねえ!」
かずは若干興奮しているように見える。彼も俺と同様にラーメンが好きなようだ。俺は飲食が好き。かずも同じだろうか? 訊いてみると、好きだという。好きなことが同じでよかった。あと、好きなことと言えば、俺は読書が好き。それも訊いてみた。読書は好きっちゃ好きだけど、好きなジャンルがライトノベルらしい。俺は小説も読むし、ライトノベルも読む。また、共通な部分を発見した。今までこういうお互いの好きなことについて話したことがなかったから新鮮に感じる。飲食と読書が好き。二つも共通して好きなことがあるなんて凄いことかもしれない。これが相手が女の子だったらいいのに。かずには言えないが。
じゃあ、ライトノベルということは、恋愛などが好きなジャンルかな? 俺は恋愛小説は大好物。俺も小説書いてみようかな。もちろん、恋愛小説を。でも、小説ってどう書いたらいいんだろう? 明日は日曜日で仕事は休みだから恋愛小説の書き方入門みたいな本買ってみるか。できあがったらかずに読んでもらおう。でも、かずは読書するのかな? あとで訊いてみよう。
翌日、俺は午前九時頃目覚めた。本屋に行くから用意するか。俺はたまに言われることがある。それは何かと言うと、
「大坂さんは行動に移すのが早いよね」と。
確かにそうかもしれない。思い立ったら吉日ってやつ。俺としては、やることがある時は、早く済ませてしまいたい。だから、そう言われるのだろう。でも、それは誉め言葉、と捉えている。行動に移すまでにだらだらするよりいいと思うし。とにかく俺は、とろくさいのが嫌い。
ラーメンの件でLINEを送った。
<来週の日曜日の昼にラーメン食べに行かないか?>
暫くLINEは来なかった。いったい何をしているのだろう。忙しいのかな。
約一時間後にLINEがきた。確認してみるとやはりかずからだった。
<来週? 来週かぁ、行きたいけど用事があるのさ>
そうなのか残念、と思ったので、
<わかった、また誘うわ>
かずは、
<ごめんね>
と言ってくれた。相変わらず物腰の柔らかい口調だな。感じがいい。ちょっと女っぽく感じる時もあるけれど。
美味しいものを食べるのもいいけれど、彼女も欲しいな。欲張りだろうか。かずはどう思っているのかな。彼女が欲しいと思わないのだろうか。
でも、どうやったら出逢いがあるのだろうか。最近人気のマッチングアプリで見付けるか。それとも友達に紹介してもらおうか。 まずは、高校時代に知り合った同級生に紹介してもらおうか。そいつの名前は
「暇だから話し相手になってくれ」と。
その時、俺も暇だったら電話する。この前、LINEを交換したばかり。なのでLINEを送った。本文は、
<オッス! 突然だけど誰かいい子いないか? 彼女欲しくて> LINEは暫くこなかった。何をしているんだ。四十、五十分くらい待ってようやく元太からLINEがきた。
<彼女か~。僕の彼女に訊いてみるわ。僕も女友達はいるけど、さすがに彼女がいるから一緒にいれなくて>
何だか面倒だな。ていうか、元太に彼女がいたとは知らなかった。この前通話した時、何も言っていなかったのに。
元太からのLINEは翌日の夕方きた。ずいぶんのんびりしているな。ムカつく!
<彼女に訊いたら、何人か彼氏がいない女の子がいるらしいんだ。どんな子がタイプ?>
好きな子か、うーん、よし。
<優しい子がタイプかな>
<内面か、外見は?>
<ぽっちゃりした子が好きかな>
<わかった>
翌日の夕方になり、また元太からLINEがきた。例の話しだろう。開いてみるとこう書かれてあった。
<順二のタイプはぽっちゃりしていて優しい人、彼女に訊いてみたらいるわ。紹介してもいいらしい。その子も会ってみたいと言ってるみたいだし>
そうなんだ! これは脈アリだ! チャンスだ! なので、
<紹介して欲しい>
と送った。元太は、
<順二はいつなら都合がいいの?>
俺はシフト表を見てみた。
<次の休みは今週の木曜日だわ、だから、水曜日の夜か木曜日ならいいぞ>
返事はすぐにきた。
<わかった、訊いてみるよ>
<今日中にLINEくれるのか?>
<うーん、それはわからないなぁ。相手の子の都合もあるし>
俺はだんだん待たされるのが嫌になってきた。このことを伝えた。すると、
<なんだ、それくらい待ってやれよ。時間はあるんだし>
俺は黙って、LINEを送るのをストップした。
暫くして、また元太からLINEがきた。
<あれ? LINE止まったな。どうした?>
俺は思った。こっちの身にもなれよ、と。仕方なく、
<わかったよ、待ってやるよ>
<なんだ、紹介してもらうのにずいぶんと上から目線だな>
そう言われて俺は頭にきた。なので、こう言った。
<そう言うけどな、俺だって待ってるんだぞ? そういうことも頭に入れておいてもらわないと相手の都合ばかりじゃないか!>
語尾はあえて強くなるように’!’このマークをつけてLINEを送った。
暫く時間をおいた後、LINEがきた。
<じゃあ、出来れば今日中に返事が欲しいと言っておくよ>
<悪いな>
一旦、LINEがストップした後の一時間後くらいに元太からLINEがきた。
<今、彼女からLINEがきた。はっきり言うぞ? そんなに急ぐなら他を当たって欲しい、だってよ、どうする?>
俺はだんだん苛々してきた。
<だから、待つって言ってるだろ! それは言ってくれたか?> すぐにLINEはきた。
<いや、言ってない>
俺はすぐに送り返した。
<何で言ってくれないんだよ! 言ってくれよ! そりゃ、その子も誤解するだろ!>
<わかったよ! 今、言うよ! ちょっと待ってろ!>
畜生! 元太の野郎、大切なこと言わねえんだから! 仕方のない奴だ! 更に約一時間後。元太からLINEがきた。彼の行動力のなさに俺は呆れていた。LINEを開いてみた。
<待ってくれるなら会うってよ。それと木曜日なら空いてるって。よかったな! 会う前にフラれなくて。あはは!>
元太の奴、馬鹿にしやがって! 畜生めが!
そして、木曜日になり元太からLINEがきた。
<何時頃にする?>
そういえば会う時間を決めていなかった。
<そうだな、昼飯を一緒に食うか。十二時頃元太の部屋にいくから。元太の部屋でいいんだろ?>
<ああ。三人で部屋で待ってる。何食う?>
<ステーキが食いたいな>
<じゃあ、たまに行くレストランにするか>
<そうだな、車は俺が出すから><ああ、わかった>
まあ、俺が車を出すのは当たり前か。
今の時刻は十時半過ぎ。俺は二度寝をしてこんな時間になってしまった。さて、出かける準備をするか。そう思って立ち上がり下着を持って浴室にシャワーを浴びに行った。
二十分くらいでシャワー浴を終え、今は一月なので凄く寒い。だから暖かい格好で行こう。洋服箪笥の前に立ち、何を着るか考えた。青いセーターと茶色のチノパンにしよう。香水を三回くらい吹き掛けたその上からダウンジャケットを羽織った。細マッチョで背が高いのでサイズはLLのを買っている。
支度を終えたのは午前十一時半頃。ちょっと早めに準備が終わった。まあ、いいか、と思い俺は部屋を出た。十分くらい愛車を走らせ、元太のアパートに着いた。だが、彼の車がない。青い普通車なんだけど。おかしいな、どこに行ったんだ? 電話をした。でも、出ない。うん? どういうことだ? すぐに折り返し電話がかかってきた。
「もしもし」
元太からだ。
『もしもし、順二? 今、彼女の友達の達っちゃんを迎えに行って、今戻るとことだ。もう、僕のアパートに着いたのか?』
「ああ、着いて待ってるぞ」
『そうか、すまん。すぐ戻るから』
「わかった」
そう言って電話を切った。
少し待っていると、元太の車が戻って来た。彼はこちらを見ながら申し訳なさそうな表情を浮かべながら手を挙げた。彼は身体障がい者。左足が不自由で、松葉杖をつきながら歩いている。先天性のものらしい。それでも元太の性格は明るく頑張って仕事もしている。職業は障がい者雇用枠で事務作業をしている。仕事内容は名刺のデザインを考えてパソコンで作ったり、食堂のメニュー表などを作ったりしているらしい。彼女は同じ会社で元太と同じように事務作業をしている。彼女は身体に障がいがありながらでも頑張って生きている姿に惚れたと言っていた。俺が訊いたからそういう惚気話になったんだけれど。彼女は元太にはもったいないくらい可愛い。少しぽっちゃりしているが。たまに彼の歩行を手伝ったりしていて彼氏思いの優しい女性だ。
元太はいつも駐車している所定の場所に車を停めた。彼は笑みを浮かべて俺をみながらこちらに向かって歩いている。相変わらず眩しいくらい明るい。彼女も元太を見ながら笑顔を浮かべている。彼女の友達も車から降り、少し緊張気味な表情で引きつっているように見える。
俺も手を挙げて、元太のために助手席のドアを開けた。
「オスッ!」と元太は言った。
「おう!」
俺も挨拶した。
「こんにちは~」
と元太の彼女も挨拶してくれたので俺も、
「こんちは!」と挨拶した。彼女の友達は引きつった笑顔で、
「こんにちは!
俺は、
「あ、どうも。俺は大坂順二といいます。よろしくね!」
と自己紹介した。
元太は、
「達っちゃんはいくつだっけ? あ、この子のことね」
訊くと、
「私は十九よ」
そう答えた。
「あ、じゃあ、俺の一つ下だ。俺は元太と同じ二十だから」
俺は元太の彼女の友達の呼び方について考えていた。
「俺も達っちゃんて呼んでいい?」
「あ、いいですよ」
達っちゃんはいい子そうだ。
「昼飯、ステーキを食べに行こうと思ってるんだけど二人はいい?」
俺は元太の彼女の
「わたしはいいけど、達っちゃんは?」
達子も答えた。
「私もいいよ」
俺は、
「よし! 決まり! ステーキを食べに行こう!」
こうして俺達はたまに行くステーキ屋に行くことにした。
俺は運転席に乗り、助手席には元太が乗り、後部座席には芳江と達っちゃんが乗った。車をゆっくりと発車させた。俺だけならスピードを上げて走るが、他にも乗ってる奴らがいるのでゆっくり慎重に走った。元太は言った。
「ずいぶん、ゆっくり走ってるな」
俺は思っていることを話した。すると、
「なるほどな、なかなか優しい。考えてるじゃねーか」
「まあ、一応な。怪我させてもやばいし」
「確かに」 芳江は、「おお! 順二さん、優しい!」
達っちゃんは、
「私たちのことを考えてくれてるね」
そう言われて俺は、
「そりゃあ、大切な仲間だから大切にしないと」
「ありがとうございます」
達っちゃんはいい子だ。礼儀正しいから好印象だ。俺はもしかしたら、こういう真面目な子を探していたのかもしれない。今までは、好きになった子がタイプと言ってきたけれど、それじゃあ、あまりにも抽象的すぎる。事実そうなのだけれど。
ステーキ屋に着き、俺は一番グラム数の多い四百グラムにした。元太も負けじと四百グラムにした。芳江と達っちゃんは二百グラムにした。ライスは俺と元太は大盛りにし、芳江と達っちゃんは普通盛りで注文した。
暫くしてステーキが運ばれてきた。旨そうな焼き加減に肉汁。店員はそれぞれの前に置いていった。一口食べた。旨い! ご飯と一緒に食べ始めた。 元太や芳江、達っちゃんも満足しているようだから来てよかった。食べている間はみんな無言だった。夢中になって食べていたから。
俺は、ゆっくりとよく噛んで食べたから食べ終わるのに結構時間がかかった。でも、元太は違った。食べ終わるのが早かった。そんなに噛まずに食べたのだろうか。芳江と達っちゃんもゆっくりなペースで食べていた。
食べ終わって会計をそれぞれ済まし、外に出た。俺は、
「汗かきながら食べたわ」
「ぼくもだわ」と元太は言った。
「わたしはそうでもないな」
と芳江は言った。
「私も」
達っちゃんも言った。
俺は言った。
「二人はどうして汗かかないんだ?」
芳江は、
「うーん、がっつかないからかな」
達っちゃんも、
「それはあるかも」
俺は改まって言った。
「ところで今回、達っちゃんを紹介してもらったけど、いい子だなと思う。達っちゃんは俺のことどう思ってるかな?」
達っちゃんは、
「順二さんは優しい人だと思う」
俺は、
「そうか。俺としては交際したいと思うけど、今日会ってお互いのことをまだよく知らない、でも、いずれは交際したいと思ってる。達っちゃんはどう思ってる?」
「私も同じことを思ってるよ。だから、いずれは」
「そっか。じゃあ、その時を楽しみにしてるわ」
「私もね」
こうして俺達はいい感じで過ごすことが出来た。交際にまで発展できるといいなあ。心底そう思った。
了