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幕間 迷子と掃除屋

 怒り、怒り、怒り、怒り。

 それ以外の言葉が見当たらない。


 自身の勝利は目に見えていた。

 目に見えていたからこそ、二度の太刀がレイルの矜持を傷つける。レイルの傷つけられた矜持を今この瞬間治すことは出来ず、怒りのみが自身の思考に蓄積された。


掃除屋クリーナー、あなたが獲物を仕留めきれなかったの珍しいね」


 迷宮ダンジョンの第三階層にて、少女を抱える機械がレイルの目の前に現れると彼女が放つ言葉を彼は無視し、上へと上がって行った。


「無視されちゃったね、ラビット」


「アリス、あなたの言葉はあまり場に則していません」


「あら、そうなの? なら、気をつけなきゃ。サムライはどうしたの?」


 アリスが幾ら話しかけようとレイルは耳を傾けず、スタスタと歩き続ける。


(殺す、次会えば、馘無侍くびなし諸共必ず殺す。カツラギ・バサラ、覚えた覚えたぞ。お前の名前、お前の顔、お前の声、お前の素振り、お前の強さ)


 考えれば考えるほど怒りに満ち続けた。

 そして、迷宮ダンジョンの出口に立つとアリスとラビットが彼の横を通り、彼女は手を出した。


「ねえ、掃除屋クリーナー? 帰りましょ、私達、家族の家へ。ラビットが乗せてくれるって」


 無視をしようとするもののレイルが受けた傷は深く、今でも血が止まらずにいた。少し足がふらつくと自身の身を考え、レイルはため息を吐きながらその手を取る。


「あら、珍しい。掃除屋クリーナーが素直に乗るなんて」


 アリスはレイルが手を取ってくれたのが嬉しいのか微笑みながら口を開くとそれに対してレイルは悪態を着く様に応えた。


「随分お喋りだな、迷子ノーウェイ


「ふふ、そうかしら?」


 彼らは短い会話を閉じ、拠点へと向かう。四つ足の機械が走る音が平原に鳴り響いた。

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