◇ ◇ ◇
デカい。
デカすぎる。
何様式だか何建築だかわからないがとにかくデカい、家と
そのモンスター級のサイズを
モッツァ
「しかしまさかCEOのご
ニッケルがこの文言を
「何回言ってんのそれ。いやまあびっくりなんだけどね……しかもカリオは負けちゃうし。世の中には
リンコは好奇の
「それなんだけどよ」
カリオが口を開いた。
「あの人全力出してないと思う。多分」
「は!? マジで!?」
ニッケルとリンコは思わず大きな声を出してしまう。レイラとバジル、艦長のカソックが振り向いたが笑って
「あくまで
「
「ひぇー……」
三人は揃って好奇の眼差しをレイラの背中に向ける。
「ふふふ、やはり見られてますねお
バジルは小さく笑う。
「そこまでおかしいのかしら、
小さな声で答えながらレイラは
「おかしいのではなく
「それなのですが」
レイラは小さな声のまま続けた。
「あの方、全力は出してなくてよ。恐らく」
「なんと」
バジルは驚いて目を丸くした。
「お嬢様に勝ちを
「いえ、そういう感じではなかったのですよね……なんというか、ああ見えてお人好しなところがある方なのだと思いますわ」
「お人好し……」
「依頼人であり、敵ではなく、悪人でもなく、女性である私相手に
「模擬戦であっても、お嬢様を傷つけたくなかったと」
「あくまで勘ですが。斬り結んでみた感触というか……そういうこともあったから、あの方達にお仕事をお願いしたいと思いましたの」
しばらく廊下を進み、シンプルなデザインだが立派な両開き扉の前で止まる。バジルが扉を開けるとレイラがまず入り、レトリバーの面々はその後に続いた。
地球での歴史・地理で言うところの、近世ヨーロッパのものに近い雰囲気の室内。ただ、複雑で華美な柄が占める面積はそう多くはなく、その点が
その部屋の中央、巨大な丸テーブルの周囲に全員が立つと、テーブルの中央から立体ホログラム映像が浮かび上がってきた。このデザインの部屋にはあまりにも似合わない機能である。
「これか今回のモンスタンクってのは」
傭兵三人組は立体映像をまじまじと見る。
「モンスタンク『ボルキュバイン』。全長・全高およそ二百メートル、主兵装は小型ミサイルと大口径実体弾砲。
バジルは説明しながら、手元のタブレットを操作し、テーブルの上にさらにホログラム映像を追加していく。
「このボルキュバインと傭兵メロ・ユーバリを撃破し、ヨグトル家当主、ホエイ・ヨグトルを
傭兵三人組は追加された立体映像をまじまじと見る。
それなりに財力を持っていそうな身なりの男性の映像、ビッグスーツと別の男性の映像、アオキシティや他の街の
「目標の一人、ホエイ・ヨグトルはサカモトシティ
(うへぇ、ホントにトチ狂ってるな……)
傭兵達は文字として映し出されたホエイの不祥事の数々を読んでいく。かなりの数の
「まさか自分が地位を取られたからって、武力で無理やりにでも奪い返すつもりか? いたずらに死人だけ大量に出て自滅するだけだろ」
「正直頭がいい人間とは思えませぬが、悲しいかなそのスキャンダル男の保有する戦力に連合が手こずっている状態でして」
「ケーワコグ共和国が内戦で倒れ、解放された都市などの集団が各々のやり方で
バジルの話に続いて、レイラが口を開いた。
「この男のおかげで連合内の平和は乱され、多くの人が命を
(
カリオ達は、氷のように冷たい声で言い放つレイラから放たれる殺気に、少し
「で、ボルキュバインと並んで問題になってくるのはメロ・ユーバリか」
ニッケルはビッグスーツの立体映像に目を移す。カリオとリンコもそれに続いた。
「名前知ってるなこいつ。どんな奴だっけ」
「ビッグスーツが持ってる武器、気になるな~。ドラムマガジンみたいなの付いてるけど、マシンガン? こっちはハンマー?」
腰を落としてしゃがみ、テーブルの上に顔を出して立体映像を観察する三人。バジルはまた説明を始める。
「メロ・ユーバリ。今回ホエイに雇われるまでは、スズカ連合より北の地域で活動していた傭兵です。依頼達成率が高い一方、とにかく報酬第一で仕事を選ぶ傾向があり、それが混乱の元になったこともあるようですね。平和な街を盗賊から守っていると思えば次の日にはその盗賊に交じって
「
ニッケルはビッグスーツの映像の
それから他のスズカ連合側の部隊の内容確認、
「ではまた明日の朝」
「アオキシティの
レイラとカソックはお互いに頭を下げた。
「ぐえ……」
傭兵の三人組はまだ豪邸に圧倒されている様子で、胃に来たのか腹を抑えながらカソックと共に艦に帰っていった。
「……メロ・ユーバリとあの方達は同じ傭兵なのですよね」
「どうかされましたか」
レイラは帰っていくレトリバーのクルー達の背中を見つめていた。
「……いえ、大したことではありません。さて、今は明日の戦いに備えなくては」
振り返り、屋敷の中へ戻っていくレイラにバジルも続いた。
(ダンス・オブ・バトルオジョウサマ④へ続く)