赤土の荒野を抜けた先、象牙色の荒野を進んでいく地上艦「レトリバー」。
その食堂の四人席で、カリオ・ボーズ、ニッケル・ムデンカイ、リンコ・リンゴの三人の
「……まあ無理もないかぁ」
テーブルのそばにやってきたレトリバーのメカニッククルーの一人、ミントン・バットが紙パックジュースを飲みながら、三人を
充実した戦力に高額の
突然現れたユデン・イオールの一味。
突然現れたなんか赤いヤバいのに乗ったヤバい女。
一応当初の目的であったフロガー・タマジャクの
――したものの、億単位の賞金首のチームであるユデン一味と、イルタと名乗る素性不明の女性との交戦があったおかげで、レトリバーの三人の傭兵達は方々《ほうぼう》から質問攻めにあっていた。何せ、どちらも都市・企業・その他
レトリバーに帰還するや否や、まずは三人とも医務室へ直行して
といった感じで、あの激戦以降、戦闘はしていないにも関わらず、この一週間で彼らの心身が休まる事は無かった。
カリオは、突っ伏したまま頭の後ろの傷をさする。死なずには済んだものの、船医のヤム・トロロが必死で手当てして、目が覚めたのは戦いが終わってから二日後。それからさらに五日経っているが、まだ少し痛む。
「私の新しいピストルも買えたねえ」
「俺の新しいチョークも買えたなあ」
突っ伏したまま力の抜けた声を発するリンコとニッケル。クロキシティからの報酬で破壊された装備は補充していた。それだけの買い物をしてもまだ余裕があるほどの報酬額だったが、こんな戦いが今後も続いて、体と財布にどんどんダメージを与えられたらたまったもんじゃない。
「敵さんについていけなかったねえ。なんとかできないのかな、
「言い出すと機体丸ごと買い替えることになりそうというか、アレについていける部品も機体も存在するのかっていうのがなあ」
二人はブツブツと微妙な空気で会話を続けている。
「暇です。暇」
頭に光る触覚のおもちゃを付けたマヨ・ポテトがニッケルのTシャツの
「あー、ダメだマヨ……悪い、そこのミントンと遊んでくれ……」
「おいコラ」
ミントンがニッケルに文句を言おうとしたその隣に、カソックがやってきた。
「やっと落ち着いたな。付き合わせちまって悪かった」
「いやーオヤジは悪くねえしなぁ」
カリオが力の抜けた声で返事をする。
「まだ
その言葉を聞くと、ぐったりしていたリンコがガバッと跳ね起き、目を丸くしてカソックの顔を見る。
「……いいの!?」
「大変な仕事が続いた中、皆頑張ってくれたしな。正直俺もゆっくりしたいし」
「やったぁ!」
リンコが両手を上げて喜ぶのを見て、おぉ、とカリオとニッケルは小さく声に出す。その様子を不思議そうな顔でミントンは見ている。
「ん? 休暇
「あぁ、ミントンは知らないっけか」
ニッケルは体をゆっくり起こして伸びをしながら、ジュースを口に含むミントンに答えた。
「コイツの彼氏いるんだよ。シノハラシティに」
ミントンは口からジュースを思いっきり
「ちょっ、このっ、何すんのよミントン!」
「うっさいわクソ赤モヒカン! 彼氏ってどういうことだよテメエ!」
聞いてないわよどういことなのとか、なんでコイツにいて私には彼氏ができないのよとか、私だって毎日整備の仕事頑張って苦労してるのにとか、そもそもこんな仕事しながらどうやって作ったのとか、ミントンが次々と恨み節をリンコに浴びせる様子を、ジュースまみれのカリオとニッケルは無の表情で眺めている。
「半年ぶりかぁ、ナシタ、元気にしてるかな」
「カリオはシノハラシティ三回目だったか、四回目?」
「リンコの旦那さんです?」
いやぁ、結婚はまだなんだけど照れるなぁ、と恥ずかしがるジュースまみれのリンコと、体を起こして話を弾ませ始めたクルー達を見て、カソックは言った。
「シノハラシティ、決定だな。あ、テーブルは
(君と歩くいつか一つになる旅路で② へ続く)