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シノハラシティはテエリク大陸中西部に位置する都市である。
マヨを拾った大陸西部と比べると、大陸の中部から東部にかけては、ケーワコグ共和国解体戦争での戦闘の舞台となった場所も多く、シノハラシティにも銃砲の弾が何発も
その
「最初は用心棒染みた仕事してたんだけどねー、成り行きで反乱軍に手を貸すことになって、この街の防壁の上で狙撃銃構えてさ。そっから反乱軍に参加していたレトリバーのオヤジに誘われて、共和国軍と戦いながら――」
「ってことはここ出身?」
「そ、ナシタとは
レトリバーのチーフメカニック、タック・キューに自分の経歴を話すリンコ。シノハラシティに着くとレトリバーのクルー達は各々、街へと出かけて行った。カリオやニッケル、マヨとミントンもリンコと一緒に街を歩いていく。
街の至る所でビッグスーツが
「結構戦いで生計立ててる奴等も多くてさ、私も小さいころから周りの大人達を手伝っていたら、あれよあれよという間にこんなんになっちゃって――」
「アンタの話はそこまでよ、赤モヒカン。彼氏のナシタって人の店、そこじゃない?」
オリーブ色のエプロンを付け、栗色の短髪のすらりとした男性がテラス席を
「ナシター!」
エプロンの男性――ナシタ・ナッシュはリンコの呼ぶ声に気づくと、そちらへ顔を上げて、笑顔で手を振り返した。
リンコはナシタに駆け寄ると思いっきり抱き着く。
「お帰り、リンコ。久しぶり!」
ナシタはリンコを抱き返す。
(クソッ、思ったよりイケメンだな……)
「クソッ、思ったよりイケメンだな……とか思っただろミントン」
タックに心の中の声を一字一句
「久しぶりだなナシタ、調子はどうだ」
リンコの後に続いて歩み寄るニッケルがナシタに声をかける。
「お久しぶりです。街では何回か危ない事件とかありましたけど、僕はこの通り無事に過ごせています……ってカリオさん子供いたんですか!?」
「違わい。コイツは……なんて言うんだ? ワケあって
カリオに肩車された状態のマヨは、いたずらっぽくカリオの頭をわしゃわしゃする。
「久々にこちらにいらっしゃるって聞いて
「いやいやいや! そんな気
カリオとニッケルは驚きつつ、ツッコミを入れる。
「一週間かもうちょいぐらい滞在するから、リンコとゆっくりしててくれよ」
「ありがとうございます。でもやっぱり今夜の夕食には来てください。腕によりをかけてディナー作りますよ。それに貸し切りにしちゃおうかと――」
「いやいやいやいや!」
とりあえず貸し切りは
「今日は昼過ぎから開店するから、それまで部屋でゆっくりするかい?」
「うん!」
リンコは嬉しそうに返事するとナシタの
◇ ◇ ◇
「いやーしかし……」
「相変わらず出来た人間だよなナシタ……」
街を歩きながら真顔でそう話すカリオとニッケル。ナシタと初めて会ったミントンはまだ興味津々《きょうみしんしん》だ。
「なんかすごい真面目そうな人だったけどやっぱそうなの?」
「そりゃなあ」
「自分より他人を絵に描いたような男だ」
カリオはゆっさゆっさと体を揺らして、肩の上のマヨをあやす。
「今日にしたってアイツの店、高級店ってなワケでも
「それにまだやってるんだろ? 貧困層の支援活動とか。この街以外でもやってるとか言ってたぞ」
ひぇーと声に出したミントンだったが、ある疑問が頭に浮かんで
「リンコさ、いいのかな。あ、いやこれはホントに
「それなあ」
カリオの肩の上で、マヨはぼーっと道の横に並ぶいろいろな店を眺めている。
「俺らもいいのか? とか聞いたことあるけど大丈夫だって。あんまり踏み込むのもデリカシーなさそうだし、それ以上は聞いてねえんだけどよ」
「そうなんだ」
ニッケルがマヨのほっぺをつつきながら、カリオとミントンの話に続く。
「ナシタにもレトリバー乗ってみねえか? って誘ったことはあるんだけどよ、『今はまだ街でやることあるので』って」
「えーそうなの!? 私だったらあのイケメンでも我慢できる自信ないなぁ」
ミントン達が話していると、マヨがはしゃぎながら一軒の店を指さす。カリオ達は
(君と歩くいつか一つになる旅路で③へ続く)