◇ ◇ ◇
「クロキシティの依頼かぁ、そんなことが……」
「まあ私は
夜、レストラン「マンガニク」の店舗上階にあるナシタの部屋。カリオ達とのディナーを終えたリンコとナシタはソファに座り、肩を寄せ合いながら話をしていた。半年間、携帯通信機でのやり取りのみで、顔を合わせるのは久しぶりだ。聞きたいこと話したいことは沢山ある。
「……」
「もしかして、心配してくれてる?」
「うん、だって死ぬとこだったじゃないか」
ナシタは即答した。リンコは苦笑いしながら少し伏し目がちになる。
「ゴメンね、
「謝らないで」
ナシタはリンコの頭を
「ともかく無事でよかった。リンコは強いね、ホントに」
「周りの人に恵まれてるだけだよ。もちろんナシタがナンバーワンだけどね。あ、そうだ。周りと言えばさっきの子、マヨなんだけどさ――」
二人は時々、小さく笑いながら語り合う。
「ナシタはどう? 炊き出しとかの調子は?」
「うん、いい意味で
ランプの
「リンコ」
「んー?」
「僕さ――」
◇ ◇ ◇
「そんなに上手くいくかねえ」
街から離れた位置に、数軒のくたびれた建物が集まる場所があった。
その薄暗い室内。大柄な、ノースリーブにダブルモヒカン、瞳が白いサイバネ義眼の男が葉巻を吹かす。
「ビッグスーツと地上艦が山ほどあるお宝の山から目を背けるか? 一発大打撃を与えてやれば、後は
ポニーテールの細身の男が、テーブルを挟んだ向かい側で手の爪をやすりで
「こだわるねえ」
「今の大陸の
「……出立は明日の朝か。なあ、それまで俺はこの兄ちゃん達に銃口向けられっぱなしなのか?」
白眼のダブルモヒカン男――ネコゼ・セボは自分が座るソファの後ろに立つ、ライフル銃を構えた男達を指さす。
「……部屋を用意しておいた。そこに居てくれれば、兵士は部屋の外で待機させておく」
「へいへい、
ネコゼが立ち上がり、指示された部屋へ向かう。ポニーテール男――ガニマ・ターは削った爪を眺めていた。
◇ ◇ ◇
「ん~っ」
リンコはベッドで体を起こし、
ベッドから出たリンコは、服を着て、すっぴんのまま階段を下りていく。
「んあ、リンコおはおぐえす」
レストラン内のカウンター席で、マヨが朝食のフレンチトーストを
「ちゃんと飲み込んでから
リンコは笑いながらマヨの
「朝食までご
「ぜひぜひ、毎日来てください」
ナシタがカウンターのニッケル、カリオと談笑しているのを見て、リンコは壁の時計を見た。午前の九時を過ぎたあたり。ひどい
「朝ごはん、手伝えなくてゴメンね」
「そんなの全然いいって。リンコの分もあるから食べて」
リンコも席について雑談に交じる。いつものメンバーにナシタが加わって、一段と楽しい時間に感じる。
しばらくしてリンコ達はふと気づく。店の外が少し騒がしい。
外に出てみると、様々な機器を入れたポケットが沢山ついた制服を着て、手に銃を携えた治安部隊が辺りを見回っている。
「アレー? なんかあったのかな」
「んーむ、久々かなぁ。治安部隊の人あれだけ沢山見るの」
リンコとナシタがそう話す後ろから、ニッケルが声をかける。
「後で俺らが聞いておくからおまえらはゆっくりしておけよー、今日は出かけるんだろ?」
リンコとナシタはそれを聞くと、お互いに目を合わせる。
「まあ確かに久々だけど、珍しいってワケでもないし大丈夫っしょ」
「そうだね」
二人はまた店内へと戻っていった。
外の治安部隊員の一人が、仲間と無線で通信を取る。
「B4区画、ガニマ・ターらしき人物は見当たらない。『グリーン・ユートピア』の他のメンバーの情報があったら教えてくれ」
(君と歩くいつか一つになる旅路で④へ続く)