――あなたのスキルは○○です
「え?」
施設にある礼拝堂、目の前の女神像――スキルの神様から、確かに俺の心へと響いた
え、いや、マルマルって何?
「な、なんだアルテナッシ! 女神は、聖女セイントセイラ様は、お前に何のスキルを授けた!」
「役立たずのアルテナッシ!」
「少しは使えるスキルなんだろうな!」
ここは異世界――剣と魔法、そしてスキルとモンスターがどったんばったんファンタジーする世界。
この施設、”スキル養成所”の施設長や、AやBランクスキル持ちの男女達の言葉に、俺は慌てて自分しか確認出来ないステータス画面を開く!
ああ、今まで無かったスキルの項目がある、それが開くように念じる俺。
(マ、マルマルってなんだ? 何でも丸くするスキル?)
それでもいい、
そう思って、スキルを確認した――
【○○】スキル -ランク
スキル解説[ ]
う、嘘だろ?
本当に、何も無い、
――からっぽだ
「おい、アルテナッシ、どうなんだ!」
「な、何も、ありません」
「はぁ!?」
「め、女神様に、俺のスキルは○○、
「う、嘘を言うな! 早ければ12歳、遅くとも16歳までに、全ての者に平等に、女神から授かるのがスキルだぞ!」
施設長の怒りと困惑はもっともだ――天涯孤独の身に
俺も、それを願ってたから、役に立ちたかったからこの日を、
――
16歳まで生きなさいっていう女神様の声を――
「まさか貴様、高ランクスキルだから、それを隠してここから逃げようとしてるんじゃないだろうな!」
施設長の、
(う、嘘だ、こんなの、嘘だ)
スキルがあれば、誰かの役に立てるって、
――前世からの願いを叶えられるって思ってたのに
だけどこの現実に、愕然としてる俺に、
「あーはっはっはっは!」
聞き覚えのある女の子の声が聞こえて、振り返ったらそこには、
「おお、久しいなフィアルダ、戻ったのか!」
「ええ、施設長!」
引き締まった小柄な体、
「おお、フィアルダ!」
「溢れる才気から、Aランクのスキル覚醒待った無しと言われた天才!」
「帝国の由緒正しき教会まで、スキルの神託をしにもらいに行ったんだっけ!」
役立たずと言われる俺と違って、才能豊かな彼女は、施設長だけじゃなくここに居る者達の羨望の的。
「ああ、居たのね、〔お人好しのアルテナッシ〕」
小さな体を堂々と、大きなハンマーを武威的に揺らしながら、フィアルダ――フィアは俺の”二つ名”を呼びながら近づいてくる。
「ちょうどいいから見せて上げるわ、私のスキル」
俺の前に立ち止まったフィアは、
「【炎聖】を!」
そう叫んだ途端、彼女の体から、炎が巻き上がる!
「あ、熱っ!?」
な、なんだこの炎、熱くて激しくて、それだけじゃなく、眩しい!
「ええ、【炎聖】スキル!? セイって、聖人の聖!?」
「ちょっとまって、スキルに聖の文字が入るって事は」
「Sランクじゃん!?」
え、Sランク、フィアのスキルが?
戦闘訓練も、魔法の習練も、飛び抜けた成績を出してたけど、最高ランクのスキルを授かるなんて。
呆然とする俺の前で、まだまだ炎を轟かせながら、
「この炎は
――二つ名
誰にも見せられないステータスの中で、唯一開示できる物。それが、今までの功績や現在の能力で、自動的に付与される”二つ名”だ、そして、フィアが燃えあがる炎と供に頭上に掲げたそれは、
「〔猛る聖火のフィアルダ〕よ!」
フィアが嘘を言っていない事の証明だ――途端、歓声をあげる施設長と他の皆。
「え、Sランクキター!」
「うちの施設で史上初じゃないですか!」
「フィア、いや、フィア様すごーい!」
もう、皆は俺の事なんか忘れたように盛り上がる。
「フィ、フィアルダよ、聖を含むスキル持ちという事は」
「ええ、施設長、私、円卓帝国の聖騎士団に所属する事になりました、そして帝国学園の入学も」
「おお! と、という事は、貴族様にも覚えをいただいたか!」
「――ええ勿論、ある方に目をかけられましたわ」
「素晴らしいぃ!」
聖騎士団、帝国学園、一部の限られた人間しか選ばれない場所。Sランクのスキルを手にして、貴族の信頼も得た。
何も無い俺、何もかもを得たフィア、そんな彼女は顔つきを厳しくして、
「それで、あんたのスキルが、
「い、いやそれは」
「二つ名」
「え?」
「スキルは開示できなくても、二つ名は変化してるはずよ、ねぇ、〔お人好しのアルテナッシ〕」
フィアの言葉に、俺は慌てて二つ名を確認して、そして俺は、
硬直する。
「フィ、フィアの言うとおりだ、見せよ!」
「ほら、早く掲げなさいよ」
施設長とフィアの言葉に、俺はかたかたと震えながら、自分の頭上にそれを開示した。
――〔何も無しのアルテナッシ〕
「え、嘘でしょ?」
フィアは、炎を納めるくらい、素で驚いた表情をみせた、周りの人達もざわつきはじめた。
「いやいや、何も無しって本当に何も無いって事?」
「こんな
礼拝堂に
「ゆ、許せん……」
施設長は目眩を起こしたかのように体を揺らして、
「わ、わしは、め、女神様にすら見放されるような愚か者を、ここまで育てたのか……先人達に申し訳が……」
「し、施設長」
アルテナッシ!」
施設長は、俺を指差して、
「お前は、ここから、追放だぁっ!」
そう言った後、仰向けにぶっ倒れた。
こうして俺は、〔何も無しのアルテナッシ〕は、
この施設から追い出される事になった。