目次
ブックマーク
応援する
23
コメント
シェア
通報
からっぽな俺の○○スキル…いや、マルマルってなんだ!?〜どん底人生、虚しさままに終わった俺が異世界で幸せをつかむまで〜
からっぽな俺の○○スキル…いや、マルマルってなんだ!?〜どん底人生、虚しさままに終わった俺が異世界で幸せをつかむまで〜
アサムラコウ
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年03月18日
公開日
14.1万字
連載中
「あなたのスキルは【○○】です」 「マルマルって何!?」 前世は何一つ報われる事なく、心からっぽのままに35歳で生涯を終えた後、この世界に転生したアルテナッシに、16歳の時に与えられたのは、自分の虚しかった人生と同じく、何も無いスキルだった。 役立たずと追放された彼、前世の母親からのトラウマ――産まれてこなければ良かったのに、という言葉が甦って、実際に死を選ぼうとした時、この世界の最強モンスターである"スライム"に襲われているメイドを見つける。 せめて、最期くらい誰かの役に立とうと、自分の命と引換に助けようとした。しかし、逆にメイドに助けられたアルテナッシは、自分は死んでもいいから、この人を助ける力が、スキルが欲しいと願う。 すると、ステータス欄が輝き出して―― 【○○】スキル -ランク [空白に言葉を入力してください] からっぽだと思ってたスキルが実は最強! 【○○】になんでも入れ放題――あれ、ちょっと待って? 【○○。】 なんかちっちゃい○増えてるぅ!? このスキル、どうなっちゃうの!? 前世に全てを奪われた男、メイドや幼馴染みや剣士や聖女、ワイルドイケメンな狼獣人、その他沢山の仲間達と供に、学園ライフに秘境の冒険や、つよつよモンスターとの戦いを、【○○】スキルを使いまくって、今度こそ幸せなハートフルデイズを目指す! 「メイド長から教わりました、からっぽの心を満たすのは――」 コメディたっぷりちょっぴりシリアス! 冒険日常バトルもラブも山盛りで! 幸せ掴む異世界転生王道冒険ファンタジー、開幕! ・更新情報 6月中は新規契約連載スタートダッシュキャンペーン! 6月7日まで毎日2話、7:00と18:00に更新! 6月8日から30日までAM7:00に更新致します! ブックマーク、いいね、コメント、応援の方お待ちしてます! 誤字脱字の修正などは、週末などにまとめて行いたいと思います!

第一話 からっぽな俺のハートフルデイズ!

1-1 何も無しのアルテナッシ

 ――あなたのスキルは○○です


「え?」


 施設にある礼拝堂、目の前の女神像――スキルの神様から、確かに俺の心へと響いた言葉神託

 え、いや、マルマルって何?


「な、なんだアルテナッシ! 女神は、聖女セイントセイラ様は、お前に何のスキルを授けた!」

「役立たずのアルテナッシ!」

「少しは使えるスキルなんだろうな!」


 ここは異世界――剣と魔法、そしてスキルとモンスターがどったんばったんファンタジーする世界。

 この施設、”スキル養成所”の施設長や、AやBランクスキル持ちの男女達の言葉に、俺は慌てて自分しか確認出来ないステータス画面を開く!

 ああ、今まで無かったスキルの項目がある、それが開くように念じる俺。


(マ、マルマルってなんだ? 何でも丸くするスキル?)


 それでもいい、Aランクなんか望まない、例えE最低ランクのスキルでも、きっと何か使い道があるはず、

 そう思って、スキルを確認した――


 【○○】スキル -ランク

 スキル解説[          ]


 う、嘘だろ?

 本当に、何も無い、

 ――からっぽだ


「おい、アルテナッシ、どうなんだ!」

「な、何も、ありません」

「はぁ!?」

「め、女神様に、俺のスキルは○○、空白からっぽって言われて、スキル欄を見たけど、何も無いです」

「う、嘘を言うな! 早ければ12歳、遅くとも16歳までに、全ての者に平等に、女神から授かるのがスキルだぞ!」


 施設長の怒りと困惑はもっともだ――天涯孤独の身に転生享年35歳した俺を、拾って育ててくれたのは、けして慈善事業じゃない。スキルに目覚めたら、その力で恩返しするというのが契約だ。

 俺も、それを願ってたから、役に立ちたかったからこの日を、

 ――前世有田梨央で死ぬ直前に確かに聞こえた

 16歳まで生きなさいっていう女神様の声を――

 よすが頼りにして生きてきたのに!


「まさか貴様、高ランクスキルだから、それを隠してここから逃げようとしてるんじゃないだろうな!」


 施設長の、中年腹が揺れて、頂点つるぴかヘッドが真っ赤になる。でもその怒りに弁解するより、俺は混乱する。


(う、嘘だ、こんなの、嘘だ)


 スキルがあれば、誰かの役に立てるって、

 ――前世からの願いを叶えられるって思ってたのに

 だけどこの現実に、愕然としてる俺に、


「あーはっはっはっは!」


 聞き覚えのある女の子の声が聞こえて、振り返ったらそこには、


「おお、久しいなフィアルダ、戻ったのか!」

「ええ、施設長!」


 引き締まった小柄な体、快活クソガキそうな顔に真っ赤なツインテール、黒いタンクトップとスパッツに、自分の身の丈を越えるハンマーを持った少女15歳


「おお、フィアルダ!」

「溢れる才気から、Aランクのスキル覚醒待った無しと言われた天才!」

「帝国の由緒正しき教会まで、スキルの神託をしにもらいに行ったんだっけ!」


 役立たずと言われる俺と違って、才能豊かな彼女は、施設長だけじゃなくここに居る者達の羨望の的。


「ああ、居たのね、〔お人好しのアルテナッシ〕」


 小さな体を堂々と、大きなハンマーを武威的に揺らしながら、フィアルダ――フィアは俺の”二つ名”を呼びながら近づいてくる。


「ちょうどいいから見せて上げるわ、私のスキル」


 俺の前に立ち止まったフィアは、


「【炎聖】を!」


 そう叫んだ途端、彼女の体から、炎が巻き上がる!


「あ、熱っ!?」


 な、なんだこの炎、熱くて激しくて、それだけじゃなく、眩しい!


「ええ、【炎聖】スキル!? セイって、聖人の聖!?」

「ちょっとまって、スキルに聖の文字が入るって事は」

「Sランクじゃん!?」


 え、Sランク、フィアのスキルが?

 戦闘訓練も、魔法の習練も、飛び抜けた成績を出してたけど、最高ランクのスキルを授かるなんて。

 呆然とする俺の前で、まだまだ炎を轟かせながら、


「この炎はマジックアイテムちゃちな手品じゃないわ! ほら、見なさい! 私の二つ名を!」


 ――二つ名

 誰にも見せられないステータスの中で、唯一開示できる物。それが、今までの功績や現在の能力で、自動的に付与される”二つ名”だ、そして、フィアが燃えあがる炎と供に頭上に掲げたそれは、


「〔猛る聖火のフィアルダ〕よ!」


 フィアが嘘を言っていない事の証明だ――途端、歓声をあげる施設長と他の皆。


「え、Sランクキター!」

「うちの施設で史上初じゃないですか!」

「フィア、いや、フィア様すごーい!」


 もう、皆は俺の事なんか忘れたように盛り上がる。


「フィ、フィアルダよ、聖を含むスキル持ちという事は」

「ええ、施設長、私、円卓帝国の聖騎士団に所属する事になりました、そして帝国学園の入学も」

「おお! と、という事は、貴族様にも覚えをいただいたか!」

「――ええ勿論、ある方に目をかけられましたわ」

「素晴らしいぃ!」


 聖騎士団、帝国学園、一部の限られた人間しか選ばれない場所。Sランクのスキルを手にして、貴族の信頼も得た。

 何も無い俺、何もかもを得たフィア、そんな彼女は顔つきを厳しくして、


「それで、あんたのスキルが、何も無い【○○】ってどういう事?」

「い、いやそれは」

「二つ名」

「え?」

「スキルは開示できなくても、二つ名は変化してるはずよ、ねぇ、〔お人好しのアルテナッシ〕」


 フィアの言葉に、俺は慌てて二つ名を確認して、そして俺は、

 硬直する。


「フィ、フィアの言うとおりだ、見せよ!」

「ほら、早く掲げなさいよ」


 施設長とフィアの言葉に、俺はかたかたと震えながら、自分の頭上にそれを開示した。

 ――〔何も無しのアルテナッシ〕


「え、嘘でしょ?」


 フィアは、炎を納めるくらい、素で驚いた表情をみせた、周りの人達もざわつきはじめた。


「いやいや、何も無しって本当に何も無いって事?」

「こんなスキル、聞いた事無いぞ?」


 礼拝堂に混乱ざわ…ざわざわ…が満ちていく、そんな中で、


「ゆ、許せん……」


 施設長は目眩を起こしたかのように体を揺らして、


「わ、わしは、め、女神様にすら見放されるような愚か者を、ここまで育てたのか……先人達に申し訳が……」

「し、施設長」

アルテナッシ!」


 施設長は、俺を指差して、


「お前は、ここから、追放だぁっ!」


 そう言った後、仰向けにぶっ倒れた。

 こうして俺は、〔何も無しのアルテナッシ〕は、

 この施設から追い出される事になった。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?