兵士1人を殴り倒し、詰所を脱出したギン達は町の路地に身を潜め今後のことを相談する。
「ど、どういうことでしょう?私達のことをちゃんと調べてくれるんじゃなかったんでしょうか?」
エイムの疑問にギンが自分の考えを述べる。
「最初から奴らはブライアンごと俺達を始末するつもりだったんだ」
「私達のことは調べる気がなかったってことですか?」
エイムの疑問にしばらく考え、ギンはブライアンに話を振る。
「ブライアン、処分に猶予付きだったようだがお前に監視の1人もつかなかったのか?」
「そういえば、誰1人監視してなかったな。はっ!まさか……」
「そうだ、奴らはお前が脱走しやすいように仕組み、泳がせていたんだ」
ギンの思わぬ推測にブライアンが疑問を抱く。
「ちょっと待て、奴らは盗みの罪を俺にかぶせるだけじゃ足りなかったってことか?」
「おそらくは。そして俺達と会った時にお前が空腹だったのもまともに食事を与えられなかった。そうだな」
「おお、そうだ。外には出るな。メシはやらねえ。監視もいねえ。そりゃあ脱出するに決まってんだろう。それが奴らの狙いって、あんたそう言いたいのか?」
「お前の状態と奴らの会話からそう考えるのが自然だと思った」
「じゃあ、これからどうするんだ?俺だけじゃなくてあんたらまで罪人扱いだぜ、もうどうしようもねえ」
「いや、まだ方法はあるかもしれない」
ギンの言葉に疑問を感じたブライアンが尋ねる。
「どんな方法だ?」
「奴らに見つからないよう詰所に戻り、お前に罪をかぶせた証拠を見つけるんだ」
「そんなことできるんですか?」
「やるしかない、奴らは俺達をまだ町中で探している。奴らの動きに注意しながら詰所へ戻る。ブライアンそれでいいいな?」
「ああ、分かった」
「私も頑張って皆さんについて行きます」
こうして3人は町の路地を歩きながら兵士の動きに注意して詰所を目指す。
兵士は町中の各所に散在しており、ギン達を見つけやすい配置にはいるが、切り抜ければ詰所の兵士は少なく、隙を見て証拠が見つけやすいのではないかとギン達は思った。
そんな時に、ブライアンが詰所を発見してギン達に声を掛ける。
「おい、詰所が見えたぜ。急ごう」
「落ち着け、まず俺が様子を見る。兵士に見つかったら2人で中に突入してくれ」
「待てよ、それなら俺が行くぜ」
「何を言っているんだ。お前が自分自身で無実を証明しなければならないだろう。それは俺達の無実も証明できるんだ」
ギンの言うようにブライアン自身が盗難をしていないことが証明されれば、ギン達が脱走の手引きをした話は成立しない。カール達がブライアンに冤罪をかけたことが証明されれば3人とも無罪となるのだ。
「分かった。頼むぜ」
コクリと頷いてギンは詰所の中の様子を見に行く。
しばらくするとギンが兵士に追いかけられて逃げ回る様子をエイムとブライアンが発見する。
「見つかったのか」
「今のうちに入りましょう。ギンさんが兵士の人達を引き付けている間に」
「そうだな」
そう言ってエイムとブライアンは詰所に突入する。ギンが兵士を引き付けているおかげで中に兵士の姿が見られない。
そんな中エイムがブライアンに尋ねる。
「あのブライアンさん、とりあえずどこに行きましょうか?私はここのことを知らないので」
「おっ、そうだな。とりあえずカールの部屋だ。あいつの部屋なら何かあるかも知れねえ」
そう言ってブライアンはカールの部屋にエイムと共に向かい、他の兵士と遭遇することなくカールの部屋に辿り着く。
「さてとどこにあるんだ」
そう言って探しているがそれらしき物は見当たらない。そんな時にエイムが本に挟んでいる不自然な紙を見つける。
「ブライアンさん、これは何でしょう?」
エイムはブライアンにその紙を見せるが、ブライアンは戸惑う。
「これは何だ、読めない文字が書いてある。まさか奴ら自分たちにだけ分かる暗号みたいなものを使っているのか」
「ちょっと見せてください、これは…古代文字を使っていますね。ちょっと解読してみます」
「お嬢ちゃん、そんな字が読めるのか?」
「はい、魔術書には古い文字も多くありますから」
エイムは謎の紙に書いてある文字を解読して内容を理解したためブライアンに告げる。
「いいですか、読み上げますよ」
エイムはカール達が最初からブライアンに剣の盗難の冤罪を押し付け、更に脱走を誘発する方法がギンの推測であったことを告げる。読みえ終えたエイムの表情はどこか悲しげである。
「……なんか、ひどいです。ブライアンさんは良い方だと私は思います。それなのに……」
2人がその場に立ち尽くしていると足音が聞こえる。
「誰だ⁉」
次の瞬間、聞き覚えのある声が返ってくる。
「誰だ?とはご挨拶だなブライアン」
「お、お前は……、カール!」
突如、ブライアン達の目の前に現れたカール。証拠を掴まれた彼は一体どうするのか?