ブライアンとルルーはプレツ軍が守る砦を救援するために帝国軍を強行突破することを決意するが、ルルーがその作戦に別の方法も加えることとする。
「じゃあ最初に言ったように防御魔法をかけて敵兵を突破するけど少し付け加えたいことがあるんだけどいい?」
「何だ?」
「私も敵に攻撃魔法を放つわ。それで少しはあなたの負担も減るでしょう」
「俺としてはありがたいがお前の魔力はそれで持つのか?」
ブライアンの疑問に対しルルーがほくそ笑みながら答えた。
「フフフ、魔法を放つのは1回だけよ。敵に魔法を警戒させるのが目的よ」
「な、何だって?それでうまくいくのか?」
「でも、まともに戦えば例え砦に入れても治癒魔法を使うことはできないわ。敵に魔法があるって思わせることが大事だから」
「ま、あれこれ言ってもしゃーねえか。それじゃあ頼むぜ」
ブライアンの求めに応じ、ルルーは防御魔法の呪文の詠唱を始める。
「我を加護し神ミッツよ、わが力と信仰を糧に我の望みに応えよ。我と我の望みし者を守護し給へ
ルルー、そしてブライアンの周りに光の膜が纏われる。
ルルーとブライアンが砦を救援するべく帝国軍に接近をしていく。
砦を包囲している部隊の前線指揮をしているのはバンス将軍の副官であるブリードであり、そのブリードのもとに報告が入る。
「ブリード様!報告がございます」
「何だ⁉申してみよ」
「はっ!近隣に放った斥候の報告によると敵が接近しているようにございます」
「プレツ軍の本隊か?ならばバンス様にも報告せよ」
ブリードの言葉を受け、兵士は敵の詳細を説明する。
「それが、敵は2人のようにございます」
「2人⁉まさかあの時の奴らか?」
「はい、1人は大斧を持っている男で、もう1人はミッツ教団の聖職者の女のようにございます」
兵士の報告を受け、ブリードは少し安堵した表情で話す。
「どうやら、魔法剣を使う剣士と、あの時の魔術師はまだこちらに来ていないようだな」
「それならいかがなさいますか?」
「奴らが来る前に砦を落とす!近づけばその2人は返り討ちにしてくれる」
「はっ!」
ブリードが兵士の報告を受け、再度命令を出し終えると、ブライアンとルルーは包囲を突破し、砦への入城を目指していた。
ブライアンが斧を振り回し次から次へと敵兵を斬り、時には斧の持ち手の部分で敵を殴り倒し、敵兵を驚愕させていた。
「くそっ!何て奴だ!たった1人であれだけの兵士をものともしないなんて」
「だったら俺達に任せろ!」
そう言って現れたのは弓隊であり、ブライアンに対し弓を放とうとするが、突如多くの兵士が吹き飛んでいく。
「な、何だ⁉」
そう言って兵士が目にしたのはルルーが風魔法を放ち弓隊を吹き飛ばした様子であった。
敵の様子を見たブライアンがルルーに対し呼びかける。
「敵はどうやらお前の魔法を警戒しているようだ。俺も追いつくから砦へ入れ」
ブライアンの言葉を聞いて、わずかではあるが帝国軍にほころびが生じその隙を突いて砦への入城を決意しルルーは走り出す。
「分かったわ。気を付けてね」
ルルーは敵の隙を突いて走り出し、どうにか無傷で砦への入城に成功し、籠城している神官戦士に声をかけられる。
「ルルー殿?大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
「前回より激しい中でよくここまで来れましたな」
「ええ、私も驚いています。でも私を信じてくれる仲間が皆さん以外にもできたことがもしかしたら私に力を与えてくれたのかも知れません」
ルルーがブライアンやギン達のようにミッツ教団以外の仲間の存在の大きさを話したことに神官戦士が感心の言葉を寄せた。
「ルルー殿、旅があなたにとって良いものになったという事ですな」
「はい、旅を通して彼らと信じあえるようになったと思います」
「それは良かった。さ、兵士の方の治療を急ぎましょう」
「はい」
ルルーは実感をしていた。ミッツ教団の者以外にも自分にとって信じられる者ができたことを。そしてそれが自身に力を与えているという事を。
ルルーは心より感謝をしていた。その出会いを与えてくれたミッツ神、そして彼ら自身に。