ミッツ教団司祭の使いよりブロッス帝国の再度の侵攻の情報を得たギン達は、早朝より出発の準備を始めており、慌ただしくしている。
「じゃあ、もう1度整理するぞ。俺がループの馬車を御してエイムとルルーはその中で休んでもらおう。ムルカ殿、後方よりの襲撃への備えはお願いします」
「うむ、2人とも魔力が完全に補充されたわけではないからな」
「申し訳ありませんがお願いします」
「ギンさん、ムルカ様、お願いします」
続けてヨナが自身の役割を話す。
「じゃあ、あたしはゲンジの馬車を御してこいつらが中だね。他の馬車に何かあったらしっかりフォローしなよ」
「任せてくだせえ!」
最後にジエイが言葉を発する。
「私が支援物資の馬車を御すわけですね。中でブライアン殿が薬草で治療をし、教徒殿には休んでもらい、念の為、傭兵団の方に護衛をしてもらうわけですね」
「申し訳ありません。私も魔力が戻っていないので」
「頼むぜジエイ、お前らもな」
「任せろ!」
それぞれの役割の確認を終え、出発しようとした時に村長がギン達の前に姿を現す。
「村長さん⁉どうされたんですか?」
「お見送りくらいさしてくだされ。あなた方はこの村を脅威より救ってくださったんじゃから、村長のわしだけでもお見送りをしなければ申し訳がありません」
「そんな、我々はミッツ教徒として当然のことをしたまでです。ですがお見送り感謝します」
ルルーが村長に礼を述べていると、アルもギン達の前に姿を現す。
「にいちゃん!黙って行くなんて水くせえじゃねえかよ」
「アル⁉お前まで」
「にいちゃん、帝国軍もやっつけてくれよ。あいつらがプレツを攻めて兵隊の数が散らなければ父ちゃんだって死なずに済んだかもしれねえんだ。だから絶対やっつけてくれ」
「アル……とりあえずこれ以上帝国の好きにはさせない。だからお前は俺との約束通り強くなれ」
ギンの言葉を受けアルが強く返す。
「ああ、そのつもりだよ」
ギンとアルがやり取りをしているなかエイムがアルに声をかける。
「アル君、お母さんを大事にしてくださいね」
「そんなの当たり前だろ、何言ってんだよ」
「そうですね、それじゃあ、またいつか会えるといいですね」
エイムはそう言って馬車に乗り込み他の者達もそれぞれ馬車に乗り込む。
馬車に一同が乗ったのを確認するとギンが馬車を御し、他の者も続いて御す。
ギン達の馬車を追いかけアルがギンに対して叫ぶ。
「じゃあなーーー!にいちゃーーーん!今度来たら剣のけいこを俺につけてくれよーーーー!」
少年の純粋な思いはギンにとっては眩しく、また守り通さねばならないものなっていた。その思いを胸にスップへと戻っていく。