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港町ニリ

スップの街より出ている貸馬車を利用して、ギン、ルルー、ムルカの3人はスップより南に位置するニリの港町に住む、元海の傭兵で現在は荷船で運搬業を営むボガードの元へ協力の依頼へと向かっていた。


「わざわざ貸馬車を使うとは慎重ですね」

「うむ、ミッツ教団の馬車では目立ち、侵入しているやも知れぬ帝国軍が我らの邪魔に来るかもしれんからな」

「ムルカ様、次の街で馬車を乗り換えましょう」


 ルルーの提案を聞いてギンとムルカは黙って頷く。


 そして次の街に着くと馬車を降りて次の馬車を待つこととした。


「毎度ありがとうございました」

「御者さんもここまでありがとうございました」


 次の馬車の到着までは時間があるので改めて人気のない場所に移動して3人は話をする。


「急がなくてはいけないが、帝国の間者が馬車の御者に成りすましておらんとも限らんからな」

「ええ、だけどあらかじめ各街に常駐しているミッツ教徒や兵士にも連絡が行き渡っているので、我々にも帝国軍の情報は入ってきやすいですからね」

「もし、侵攻が予想より早ければ俺が戻ってエイム達と合流し、2人は交渉に向かう流れだからな」


 ミッツ教団とプレツ軍は緊密な連携をとっており、対帝国戦線は強化されていた。


 そしてギンが言葉を発する。


「今回の侵攻はほとんど間を置いていないからスールや他の国からの援軍は望みにくい」

「そうね、フィファーナ将軍もバンス将軍に劣らない戦術眼はあるし私達だけで戦い抜くのは厳しいかもしれないわ」

「うむ、我が国は前戦による疲弊と先日の魔物襲撃の事後処理にも追われ戦力が十分とはいえんからな」


 ギン達が話をしている間に馬車が到着し乗り込むこととした。


 何度か馬車の乗り降りを繰り返し、翌日にニリの街へとたどり着いた。


「ここがニリの街か、コッポのタグの街並みに盛んだな」

「タグがコッポの海の入り口なら、ニリがプレツの海の入り口ね」

「港町というのは人も物も集まるから賑わいやすいのだな」


 話し終えるとギン達はボガードの荷船をやっているドックを探すこととする。


 港には着いたが、どこにボガードがいるかは分からないギン達は港の係員に尋ねてみた。


「あの、私達ボガードさんに御用があってきたのですがどちらにおいででしょうか?」

「ボガードさんはあちらのドックで船の整備やチェックをしていますよ。なにしろこの街で一番多くの船を所有しているから大きいドックを使っているんですよ」

「ありがとうございます」


 ルルーが係員に礼をいうと指定されたドックに向かう。


 ドックに着くとルルーが見かけた男に声をかける。


「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」

「何ですかい?」

「私達、ボガードさんに御用があってきたのですが」

「ちょっと待って下せえ、お頭……じゃねえ、大将、お客さんがきてやすぜ」


 男に呼ばれた屈強そうな男が船の中より現れる。


「おいおい、いい加減お頭っていうのは……ん?何だ?あんたら」


 この男こそがボガードなのか?

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