ギン達がプレツの港町であるニリより出港している頃、ブロッス帝国の本城にある皇帝の間で皇帝であるギガスと魔術師団長エンビデスが何やら話をしているようだ。
「陛下、報告がございます」
「エンビデスか」
「フィファーナ将軍の部隊もプレツの制圧に失敗、さらには補給拠点も失ったようにございます」
「エンビデスよ、まさかそれは……」
ギガスが言わんとすることを察したエンビデスは先んじて告げる。
「例の魔法剣を使うギンという剣士と共に戦う者達でございます」
「やはり奴らか」
「奴らのもとに更なる力が集っているようにございます。風水使いの兄妹のようにございますな」
エンビデスの報告を聞いたギガスがあることを命じる。
「以前、主が申していたエイムという魔術師の少女があの者達の娘やも知れぬという話だが……」
「はっ!」
「確かめてみる必要があるやも知れぬな、ただし条件がある」
「条件?」
ギガスはエンビデスに対し、エイムの調査を認める旨を伝えるがそれには条件が必要だという事なのだ。
「主には国内外の動きに目をやってもらわねばならぬ。他に主の申していたことが分かる者はおるのか?」
「はっ!アビィという私の部下がおります。その者にこの件は任せましょう」
「うむ。して、奴らは次にどこへ向かおうとしている?」
「ピトリ国のようですな、あの国は我らと魔族との情報交換をしているので、その話を持ち掛ければ入国はしやすいですな」
ピトリ国を聞いてギガスが思い出したかのようにエンビデスに告げる。
「待て、確かピトリ国には魔物の出没の話を聞いて現在魔導騎士団が調査中のはずだ」
「それならばアビィにも魔導騎士団と協力するよう命じておきます、では陛下私はこれより執務室に戻り、必要な準備をしておきます」
「うむ」
ギガスの言葉を聞いて、エンビデスは執務室に戻り、アビィという自身の部下を動かす準備を始めようとしていた。
エンビデスが執務室に戻ると魔術師が声をかける。
「お帰りなさいませ、エンビデス様」
「うむ、ところでアビィはどうしておるか分かるか」
「アビィ様はミナリス領を荒らす蛮族の討伐を終え、現在はこちらに戻っている途中のようにございます」
「ならば、アビィが戻りしだい、私より命じたいことがあると伝えよ」
「はっ!」
エンビデスはかねてより気がかりであったエイムの存在。そのエイムが自らの知る者の娘かも知れないという事、その真実はエンビデスに、そしてエイムに何をもたらすというのか?運命の歯車は刻一刻と動き始めていた。