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リーザの思い

 ミックサック団をラックの街まで護衛することとなったギン達は自分達の馬車でミックサック団の馬車を挟むように進んでいた。


 そんな中、ミックサック団の役者達が乗っている馬車でミニルがリーザに話しかけている。


「あのリーザさん、団長さんにもお話させていただいたんですけど、私としては是非プレツのニリで公演して欲しいと思っているんです」

「もちろん私としても他国でも公演はしたいけど、それを決めるのは団長だから」

「……そうですよね、やっぱり戦争中の国での公演は難しいですよね」

「確かにそうだけど、私はむしろそういう所でこそ公演をしたほうがいいと思うの」


 リーザの意外な反応に驚くがミニルは興味を持ち詳しく尋ねる。


「えっ⁉どうしてそう思われるんですか?」

「昔の話からになるけど聞いてくれる?」

「はい!お願いします」


 ミニルの求めに応じ、リーザは昔話を始める。


「私ね、両親が小さい頃に死んで孤児院で育てられたの」

「……そうなんですか……」

「ええ、今でこそこの国は平和だけど昔は侵攻を受けていたのルワール王国に」


 ルワール王国という言葉を聞いて、エイムが大きく驚いて声を出す。


「ルワール王国⁉」


 突然のエイムの大声に驚いたリーザが声をかける。


「どうしたの?あなた何かルワールに関係あるの?」

「いえ、私ではなくて、ギ……仲間の剣士の方がその国出身で……」

「あの前の馬車を御している人?」

「はい……」


 突然動揺して大きな声を出してしまったことにいたたまれなくなったエイムはリーザに対し謝罪の言葉を述べる。


「ごめんなさい、突然大声何で出してしまって」

「別に私は気にしてないし、知り合いの国が侵攻したって聞けば動揺するのも無理ないと思うし、でも今は関係ないのよね?」

「はい」

「それなら私は大丈夫だから、話の続きをするわね」


 再度リーザは話の続きを始める。


「あるとき孤児院で地域の人に演劇を披露することになって私が主役に抜擢されたの。それを団長が偶然観に来てそれがきっかけでスカウトされてミックサック団に入団したの」

「そうなんですね」

「それから、この国のウイヴ教団の依頼で私がいた孤児院と別の孤児院で公演をしたんだけどその時の私達の演技を見た子供達の嬉しそうな顔が印象に残っているわ」


 リーザの話を聞き、ミニルが感心していると自らの思いをミニルに伝える。


「だから、今の世でも私達が役立てることもあると思うの」

「リーザさん……」


 リーザの言葉にミニルが感激していると、ジエイが全員に対し馬車より身を乗り出して叫ぶ。


「皆さん!何者かがこちらに接近してくる気配を感じます!警戒を!」


 突如襲い来るのは一体何か?

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