ギンはカイスに対し、一時休戦の案を出すが、それに対し反対の言葉を述べ、ギンが更に深い理由を聞く。
「カイス、今休戦しても魔族討伐後に結局戦争再開がされることを危惧するお前の考えは分かる。だが俺達が戦い続けて一番喜ぶのは他でもない魔族だ」
「ギン、例え今休戦を結んだところでどこが対魔族の中心国家になると思う?」
「それは軍事力の高いプレツやお前達ブロッス帝国だろう」
「その通りだ、例え魔族の討伐を果たしたところで、他の国がよからぬことを考えぬとも限らん、その時消耗している我々や貴様らで抑えられると思うか?」
カイスは結局は魔族を討伐できる国もプレツやブロッスしかないと考えている。しかし戦力を温存した他の国の侵略行為を止めることが難しくなることを危惧し、休戦はできないと話す。
そんなカイスに対し、ブライアンが意見を述べる。
「横から言わせてもらうぜ、要するにお前らは魔族を放置しとくってのか、そんで俺達や他の国に戦わせておいしいとこだけかっさらうってか」
「我らは我らで魔族に対する対応はしている。本来作戦内容は他言無用だが、共に戦った仲として話しておこう。この国に魔族がいるという情報を得、調査と討伐の為に訪れたのだ」
カイスの言葉を聞いて、ルルーに疑問が生まれ尋ねる。
「じゃあ、あなた達はこの国の侵略に来たわけじゃないのね?」
「無論だ」
ルルーに返答をするとカイスはギンに対して自らの考えを話す。
「このやりとりだけでも我々と貴様らでは考えが違うという事が分かった。これ以上話してももはや結論は出まい」
「なら、どうする気だ?」
「お前達は今護衛をしている者達がいるのならその者達を危険にさらすわけにはいかん。だからこの場は退こう」
「俺達と戦わないのか?」
ギンの問いにカイスが返答をする。
「この国であれ、他の国であれ、今度会う時は敵だ。その事を忘れるな」
「そうか、残念だ。お前となら分かりあえると思ったんだがな」
「……、その感情、戦場では命取りになるぞ……」
「忠告感謝する」
ギンとカイスの間で静かだが心理のせめぎ合いがそこにはあった。
もはや戦うことでしかお互いの主張を通せないことを両者が悟った瞬間であった。
「皆の者、退くぞ」
「はっ!」
カイスの号令に応じ、魔導騎士団はその場を離脱していく。段々と影は小さくなっていき、やがてギン達の目から消えていく。
魔導騎士団が見えなくなるとミックサック団の団長がギン達に声をかける。
「じゃあ、そろそろ出発してくれ。公演に間に合わなくなってしまう」
団長の呼びかけにルルーが応じる。
「はい、分かりました」
それぞれが馬車に戻り再出発をする。