ブロッス帝国の魔導士であるエンビデスは部下であるアビィのピトリ国への派遣に先んじて、魔導騎士団に対して使者を送っていた。
その使者が魔導騎士団とようやく接触でき、使者からカイスに対しピトリ国の草原で話しかけていた。
「魔導騎士団のカイス団長でございますね」
突如使者が話しかけるが、カイスは魔導師団のものと察し、用件を尋ねる。
「貴殿は魔導師団の者か、我々に何用か?」
「はっ!エンビデス様より文を預かってまいりました。お読みくださいませ」
そう言って使者は文をカイスに差し出し、カイスは受け取り文を読む。
読み終えると、部下であるトーラスとプラナを呼ぶ。
「トーラス、プラナ」
「はっ」
「いかがなさいましたか?」
トーラスとプラナが近づくと文の内容を話す。
「エンビデスは自分の部下であるアビィという魔術師をこちらに派遣したようだ」
「どのような目的ででしょうか?」
「プレツの特使の一団の1人であるエイムという魔術師を帝都に連れて行くのが目的のようだ」
「まさか、それに我々も協力しろという要請ですか?」
プラナの問いにカイスは返答をする。
「そのようだ、そしてこの作戦は皇帝陛下もご承認されたと記してある」
皇帝であるギガスがこの作戦を認めている以上、この要請も実質的には皇帝の命令であることをその場にいる全員が察した。
しかしカイスは現在自分達が行っている作戦も気になっていた。
「だが、現在我々はこの国における魔族の調査もしている。特に前戦で逃がした魔族の行方は掴んでおきたいところだ」
言葉を発した後にカイスはプラナに対し考えついたことを伝える。
「プラナ、お前に多めに兵を預ける。魔導師団と合流し作戦にあたってくれ。私とトーラスは最低限の兵で引き続き魔族の調査を行う」
「よろしいのですか?私にそんな多くの兵を預けて……」
「今回の作戦は魔導師団が主導で行うなら、アビィという者にとっては私がいればやりずらいかも知れぬ」
アビィにとって所属部隊は違っても、カイスは明確に自身より上位の存在であり、その者を差し置いて作戦の指揮はやりずらいとのカイスの見立てであり、比較的立場の近いプラナならばアビィも指揮をしやすいと踏んだのである。
カイスの意を汲み、プラナは返答をした。
「承知いたしました、このプラナ、決してカイス様の顔に泥を塗らぬよう励みます」
「うむ、頼んだぞ、ではいくぞトーラス!」
「はっ!」
そう言ってカイスとトーラスは兵を引き連れその場を離れる。
カイス達が離れたのを見て使者がプラナに声をかける。
「では、合流予定場所にご案内します」
「頼む」
プラナもまた、アビィとの合流場所に向かっていく。