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帝国内の動揺

 ギン達がピトリ国の王都に到着した頃、ブロッス帝国の帝都にある城内の執務室で魔導士エンビデスが書類仕事をしていると、部下が部屋に入室し報告をする。


「失礼いたします!エンビデス様ご報告がございます」

「何用か?」

「はっ!アビィ様が戦死なさい、例の魔術師の娘も奴らに奪還され作戦は失敗に終わった模様!」

「そうか……、アビィの遺体は回収できたのか?」


 エンビデスの問いに部下が返答をする。


「はっ!残存兵が移送し、こちらへ向かっております」

「ならば、手厚く葬ってやれ。私はこの件を陛下に報告しなければならん」

「はっ!」


 部下にアビィを手厚く葬るよう言い残すとエンビデスはギガスのいる玉座の間に向かう。


 玉座の間にある扉の前に立ち、中にいるであろう皇帝のギガスに一言扉越しに声をかける。


「失礼いたします、陛下。エンビデスにございます。お時間よろしいでしょうか?」

「うむ、入れ」

「はっ!」


 ギガスに促されエンビデスは玉座の間に入室し、膝をつき、声を発する。


「ご報告があります」

「申してみよ」

「はっ、我が部下であるアビィが戦死し、例のエイムという娘はプレツの者どもに奪還され作戦は失敗に終わりました」

「そうか、その者は手厚く葬ってやらねばな」


 ギガスもエンビデス同様アビィを手厚く葬ることがなによりの供養となると考えているようだ。


 次の瞬間にエンビデスより言葉が発せられる。


「申し訳ありません、作戦の優先事項を誤った私の責にございます」

「いや、どうやら余の目も曇っていたやも知れぬ」

「……、陛下、もう1つお耳にいれたきことがございます。バンス隊、フィファーナ隊が連続してプレツの侵攻に失敗したことが帝国内に動揺をよんでおります」

「あやつらがぬかる程の強敵ではあるが、これ以上の動揺は避けねばならん」


 ギガスの言葉を受け、エンビデスよりある案が持ちかけられる。


「ルホール地方領主ルドルフの子息であるルードとバンス将軍の息女であるピリカとの婚姻の儀を少々予定より早くはありますが、執り行い帝国内の結束を高めましょう」

「あの2人の婚姻の儀か、我らの結びつきは強くなり2人にとっては喜ばしいことであるな。ではこの件はぬしに任せよう」

「はっ!それでは失礼いたします」


 そう言って、エンビデスは玉座の間をあとにし、執務室へと戻っていく。


 執務室へと戻ると書類仕事をしていた部下に指示を出す。


「突然ではあるが、ルホール地方領主ルドルフの子息ルードとバンス将軍の息女であるピリカの婚姻の儀を予定より早く執り行うこととなった。早速ではあるがそれぞれの屋敷に使者を送りこのことを伝えよ」

「はっ!では早速手配します」


 動揺の走る帝国内。婚姻の儀がどのような影響をもたらすのか。

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