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果たす願い

 カイス率いる魔導騎士団はブロッス帝国帝都へと帰還しており、カイスが部下達に指示を出していた。


「さすがに婚姻の儀は終わっていたか、トーラス、お前は安置所までバンス将軍の遺体を運び、化粧師に死化粧をするよう伝えよ」

「はっ!」

「私は陛下にバンス将軍の戦死を報告してくる。プラナは……」


 プラナはバンスの死をバンスの娘であるピリカに伝えるようバンス本人より懇願されていたのだが、カイスはプラナの心情を思うと命令を下せずにいた。


「プラナ、私がピリカ殿に伝えよう。お前は陛下に……」

「いえ、ピリカ様には私がお伝えします。バンス将軍の最後のお願いを果たさせてください」

「……分かった。お前がそこまで言うなら任せよう。では、行くぞ!」

「はっ!」


 カイスの号令でそれぞれが役割を果たしに向かった。カイスは城内の皇帝ギガスの元へ、トーラスは安置所へと向かっていった。


 その場に残ったプラナは部下にあることを尋ねる。


「そういえば、ピリカ様は今どちらだ?屋敷か?それとももうルホール地方まで行かれたのか?」

「申し訳ありません、まだそこまでは分かりませぬ」

「仕方あるまい、とりあえず屋敷まで向かうぞ」

「はっ!」


 とりあえず、プラナはピリカがまだいる可能性を考え屋敷へと向かう。


 馬を走らせ、屋敷にたどり着くと留守を預かっている兵と侍女達が馬車へと荷物を詰め込んでいた。


 その様子を見たプラナは1人の侍女に声をかける。


「すまぬ、少しいいか?」

「何でございましょうか?」

「私は魔導騎士団のプラナだ。忙しい所申し訳ないがピリカ様とお話しすることは可能か?」

「はい、大丈夫でございます。ご案内いたします」


 そうして侍女はプラナを屋敷内に案内し、ピリカの部屋まで同行する。


 ピリカの部屋までたどり着くと、侍女が扉越しに声をかける。


「ピリカ様、魔導騎士団のプラナ様がお越しになっております。お会いになりますか?」

「ええ、お通しして」

「かしこまりました」


 そう言って侍女は扉を開け、プラナはピリカの部屋に入室する。


「プラナ、どうしたの突然?」

「申し訳ありません、実はピリカ様にお伝えしたいことがありまして」

「私に?」


 だが次の瞬間、プラナは言葉に出すのを躊躇してしまい、その様子を見たピリカは何かを察する。


「ねえ、もしかしてお父様になにかあった?」

「……」

「黙ってないで教えて!私だって帝国軍人の娘よ!常に万が一のことは覚悟しているわ!」


 ついにプラナはピリカに対し事実を打ち明けることとした。

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