ブロッス帝国魔導騎士団に所属していたプラナは、幼い頃より離れ離れになっていた兄ギンと、戦いを経ながらもようやく互いの思いを理解し合い兄妹として歩みなおそうとしている。
互いに涙しながら抱擁しあう光景を見てブライアンがルルーに話しかける。
「なんか、声かけづれえな」
「そうね、でもやっと会えた2人なんだし、しばらくはそっとしてあげましょう」
「まあ、前から会っていたけどな」
「あのね、ブライアン……、まあいいわ」
ルルーは飽きれながらもブライアンが自分達まで感傷的にならないよう心掛けていることを察し、それ以上は言葉を続けないでいた。その近くでウィルにとんでもないことが起きていた。
「おいおい、俺こういうの弱いんだよーー!泣かすようなことしないでくれよーーー」
ウィルは号泣しており、妹のミニルが飽きれながら声をかける。
「止めてよ兄さん、色々台無しじゃない」
「だってよーーー!それに俺、お前にあんなに優しい言葉をかけられたことないぞ」
「そもそも私、兄さんを殺そうとしなかったじゃない。ギンさん達と私達を一緒に考えないでよ」
それぞれがギン達兄妹を見守っている中、ようやくエイムがギン達に声をかける。
「ギンさん、プラナさん、本当に良かったです。お2人が兄妹として過ごせるようになって」
エイムに声をかけられるとギン達は互いに手を離し、ギンがエイムに返答をする。
「エイム、お前やみんなが力を貸してくれた。だから俺達は兄妹として過ごせるんだ。感謝してもしきれない」
「私からもお礼を言わせてください。あなたがいなければ私達兄妹はただ殺し合って終わっていました」
ギンとプラナの礼の言葉にエイムが言葉を返す。
「いいえ、ギンさん達が本当はお互いを思っていたからです。お2人がずっとそのペンダントを持っていたのがその証です。私はお手伝いをしたに過ぎません」
エイムはそう言うとギンから預けられたペンダントをギンに返し、プラナも服からペンダントを取り出す。
「これが……でも私は恨みを忘れない為に……」
「ですが、あなたは恨んでいたはずの実家が滅んでもそのペンダントを持ち続けていました。本当に恨みを忘れない為だけなら処分しても良かったはずです」
「正直、その後は何度も捨てようと思いました。でも捨てられなかった」
「恨みながらも心のどこかで家族を、ギンさんを求めていたんだと私は思います」
エイムの言葉を聞き、プラナは本音を打ち明ける。
「エイム殿のおっしゃるように家族を、兄を求めていたかも知れません。だけど望むと帝国の騎士である自分がなくなるような気がして」
「でもプラナさんは帝国の騎士である事よりもギンさんといることを望んだんです。あなたにとって本当に大事なことを」
「……はい」
エイムとプラナがやり取りをしている中ギンがプラナに声をかける。
「プラナ、本当はお前とゆっくり過ごしたいとこだが、俺達は帝国に行かなければならない。お前には辛いだろうが皇帝であるギガス、そしてお前の上官だったカイスとの戦いは避けられない」
「兄さん、今更止めるつもりはないわ。でも行く前に私の話を聞いて欲しいの」
「話?」
「私が知る範囲だけど、ギガス陛下とカイス様が本当に望んでいることを」
プラナが知るギガスとカイスが望むこととは?