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募らせる思い

 多くの血を流し合い、互いの憎しみが募った結果の和平に意味があるのかと疑問を口にするカイスの言葉を聞いて、エイムがカイスに言葉を告げる。


「あの、少しいいですか?」

「私にか?」

「はい、確かに互いに思う事はあると思います。でも今休戦しないと事態はもっと悪くなると思います」

「事態の悪化……」


 カイスが事態の悪化という言葉を聞いて呟くと、補足説明をヨナがする。


「人の感情まであたしらはどうこうは言えないけどさ、ここで休戦して対魔族に戦力を注いでおくのは間違いじゃないよ」

「だが、前も話したと思うが、結局戦力のある我ら帝国や、プレツが討伐の主力にはなるだろう、その間他の国がよからぬ事を考えぬとも限らんと」

「でもさ、会談を受け入れたって事は、あんたんとこの皇帝さんも腹をくくったってことじゃないかな?」

「だとすれば、どの道私に決定権などない、にも関わらず何故お前達は私の考えを聞いたのだ?」


 カイスの疑問に対し、エイムが返答をする。


「私達はあなたという人を知りたかったんです、これから私達が休戦をして協力するならなおさらです」

「……先程まで命のやり取りをしていた私にそういった接し方ができるとは恐れ入る。だが皆がそう考えられるわけではない」


 カイスの発言を聞いてブライアンが自らの考えを述べる。


「別にそんな難しく考える必要はねえんじゃねえのか、会談の結果がどうなるかは別にしても、俺達はあんたと仲良くはしたいと思っている。それじゃあダメなのか?」

「変わった男だな、それで会談が決裂したらどうするのだ?」

「そん時は仕方ねえが、できればそうしたくはねえな」


 ブライアンの発言に続いてヨナもカイスに対し発言をする。


「そうだね、プラナがあんたに惚れているし、エイムの言うようにあんたもプラナが大事なんだろう?」

「だが、もうプラナは……」


 プラナはすでに帝国を離れ、自身とは遠い存在になったことを言わんとするが、カイスの発言を遮りミニルが言葉を発する。


「帝国を離れたって、会談次第ではまたプラナさんに会えるかもしれないし、もう1度プラナさんと向き合ってあげて。プラナさんの為にも、あなたの為ににも」

「私の為」

「ええ、帝国や皇帝さんが大事なのは分かるけど、プラナさんの事も大事なら、ちゃんと向き合って」


 プラナへの思いを募らしているであろうカイスに対し向き合うよう告げるミニル。


 そんな会話が行われている頃、いよいよ休戦へ向けての会談が行われようとしている。

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