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侍女への誓い

トッポックス領主の屋敷にかつてヨナの侍女を務めていたニーという女性が訪れ、成長したヨナとの再会を喜んでいた。


 そのニーにヨナは現在の事が気になり尋ねていた。


「そういえばニーは今はどうしてんの?あたしが出て行ってからもこの屋敷にいたはずだけど」

「はい、ダリル様とフランツ様がグラッスの王宮に連行された際にニーや他の侍女は一時的に屋敷に軟禁状態でした」

「やっぱり、父さんだけじゃなくフランツまで……、2人が無事かどうかって分かる?」

「申し訳ございません、そこまでは……」


 ヨナの父と弟が王宮に連れ去られたのを目撃していたもののその後を知らず申し訳なさそうに話すニーにヨナは気遣いの言葉をかける。


「ううん、仕方ないよ。ニー達も自分の事で精一杯だっただろうから」

「お気遣いありがとうございます。その後トッポックスがグラッスの直轄地と決まり、ニーを含む一部の侍女はお役目を解かれました」

「それってクビってこと?どうして?」

「ニーもそうですがトッポックス領主に代々仕えている家系の者をそのようにお役目から解いたのです」


 ニーの家系はトッポックス領主に代々仕えている家系であり、その者達は新代官にとってはやりにくい相手だと判断され、屋敷より追いやられたのだ。


「その後は料理屋で雇ってもらったのですが、ここ最近の増税で生活も厳しくなっておりました」

「そうだったの、でもさニー、あたし達が王様をだましている奴をやっつけて父さんとフランツがここに戻ってくればまたニーもここに戻れるかもしれないからさ」

「ヨナ様……」

「あたしには心強い傭兵達がいるし、トッポックスの兵だって戻って来てくれたんだ任せてよ」


 ヨナの強い言葉にニーも返事をする。


「ヨナ様、もったいないお言葉です。ニーは戦う事はできませんが、皆さんに食事を振るいます。少々お待ちください」

「あ、それじゃあ私も手伝いますよ。お1人では大変でしょうから」

「ありがとうございます」


 ミニルがニーの料理の手伝いをすると願い出ると、ヨナが傭兵数名に指示を出す。


「料理の得意奴は手伝ってやんな、ニーとミニルだけじゃ大変だからさ」

「ヘイ!姉御」


 傭兵達数名とミニル、ニーはキッチンに向かっていき、ニー達の姿が見えなくなるとウィルがミニルに声をかける。


「お前の事をあんなに思ってくれる人もいたんだな」

「昔のあたしはそんな事にすら気付けなかった。だからってわけじゃないけどニーの為にもトッポックスを父さん達に返せるようにしないと」


 ニーとの再会を喜ぶヨナ。もうすぐ作戦決行の時が迫る。

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