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信頼の強さ

 かつてヨナに傭兵としての技術を習得させ、魔法の弓を与えた師ジーナはギンの育ての親代わりであったブレイクの娘である事がダリルよりヨナに告げられた。


 その話を聞いたヨナも今はギンと共に戦っている事を話すと、ダリルは国王であるマルスにヨナが魔族討伐をギンや他の仲間達と共に戦う許可を願い出る。


 ダリルに懇願されてマルスはヨナに尋ねる。


「ヨナよ、本来ならお前の師であるジーナが父親と共に守るべきはずだった者はどういった者か聞かせてもらえるか?」

「はい、名前はギンといって、あたしと同じように傭兵をやっています。とても強い人間です」


 ヨナはそれから、自身がこれまでに見てきたギンの事について話した。魔法剣を使う事、妹が帝国の騎士ではあったが、共に過ごせるようになった事等を余すことなく話してきた。


「すごい男だな、以前このグラッスが帝国に侵攻された際も彼が中心となり守ってくれたのだな」

「はい、いつも驚かされます」

「邪龍伝承、魔法剣、そしてヨナの師が彼を育てた者の娘か……」

「王様?」


 全ての話からマルスは決意をし、ヨナに対し告げる。


「ヨナよ、グラッス国王として命ずる。プレツの特使ならびに魔法剣を使う剣士らと共に魔族の討伐の任を貴殿に与える!」

「それって、つまり……」

「今まで共に戦ってきた者達に最後まで協力してやってくれ、話を聞くと、お前とその者達の信頼関係はとても強そうだ」

「王様……」


 更にマルスはヨナに対し命じた。


「必ず生還せよ、ダリル達も私もお前の帰りを待っておる」

「はい、必ず帰ります」


 ヨナの言葉を聞いたマルスは、ウィル達にも言葉を告げる。


「そなた達もヨナを頼むぞ」

「任せてくださいよ、ヨナには俺達がついているんですから」

「兄さん、様づけ忘れてる」

「あっ……」


 ウィルがヨナの私兵という立場の偽装を忘れ呼び捨てにしたことを受け、ヨナは本当の事をマルスに打ち明ける。


「ごめんなさい、王様、こいつらはあたしの私兵なんかじゃなく、そういう事にしてあたしに協力してくれたんです」

「そうであったか、まあただの私兵にしては少し距離が近いとは思っておったが、良い仲間ではないか」

「そう……ですね……」


 ヨナとマルスのやり取りを見てフィファーナはジエイに声をかける。


「それではわらわも帝国に戻るとしよう」

「今の帝国の混乱を鎮めるのは骨が折れるでしょうが、気をつけて」

「ふっ、かつては敵であったそちにそう言われるとはな」


 グラッスを救ったヨナは仲間と共に再び歩みだそうとしていた。

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